【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

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番外編

かわいい子には旅をさせよう 30

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ところでシェラさんの他の騎士さん達に対する態度を諌めたりしながら、加護を付けた苗木は魔法使いの杖を取り込んだ以外に異変はないかも聞いてみた。

結果、異変と言えるほどのことはなかったけどどの苗木も思っていたより育ってしまったことが分かった。

やっぱりイリューディアさんの力の加減は難しい。まだまだ練習あるのみだなあ。

なんて反省していたらそんな私を励ますように騎士さん達が口々に声をかけてくれた。

「まあ成長が早まった分、紙の原料が手に入るのも早まるって言えますし!」

「そうですよ!それにあれだけしっかり土中に根が張り巡らされればそう簡単に土砂崩れは起きなくなるはずです‼︎」

「そういえばユリウス様に見てもらうために成長した枝の一部を切り落としましたけど、あっという間にそこに新芽が出てきてました!ユーリ様のお力はすごいっす!」

「木枠で区切った場所だけでなく、その外側の木々も若干成長してたんでさすがですよ‼︎」

その言葉にシェラさんが興味を持った。

「切り落とした部分にすぐに新芽が?ではそれはどの程度の速度でまた成長するのでしょう?苗木以外の周囲の木々も育ったのであれば、少し間引いてユリウス副団長が請け負っている源泉整備の建造物の一部に充てられそうですか?」

その問いに騎士さん達は何かに気付いたようにハッとして息を呑み、今までこちらにむけていた顔を逸らした。

この感じ、野営でシェラさんにパン籠を作るツタ探しを命令された時に似ている。

今からシェラさんに無理難題を言われると気付いた時の雰囲気だ。

とはいえ私には今からシェラさんが何を言い出すのか全く見当が付かないので、みんながシェラさんから目を逸らしたのとは逆にシェラさんを見つめた。

そして騎士さん達には悪いけど、聞かなければ良かったのに好奇心に負けてついシェラさんに聞いてしまったのだ。

「今度は一体何を言い出すつもりですか?」

「ユーリ様の御力で山の木々が想定外に成長したのは素晴らしいことです。ですがあまりにも木々が密集してしまうと日光が入り込みにくくなり、内側の木々が細く弱ることもあるので多少の間伐が必要ではと思いまして。」

「あ、なるほど」

普通の野山でも木を生えるままに放置しておくよりも、多少人の手を入れて間伐する方が太くて丈夫な木が育つって聞いたことがあるような?

そう納得したらシェラさんはそんな私ににっこりと微笑んだ。

「ですので、間伐した木々を町の者達の手も借りて簡易的に板にでも加工してユリウス副団長の元へ運ばせれば、ユーリ様が滞在中に急ごしらえで簡素ながらも温泉を楽しめる場所をお作り出来るのではないかと。」

その言葉に騎士さん達があぁ~とため息をついたり天を仰いだりした。

ツル籠編みの次は大工仕事かよ、なんて声も聞こえてくる。

だけどシェラさんはそんな声を無視して更に続けた。

「それにユリウス副団長からはユーリ様の御力で成長した苗木の測定と観測も頼まれております。本来ならばそれも彼の仕事のうちですが、今は勇者様の発見した源泉の整備で手が離せませんからね。ですので明日からは苗木を観測する者、間引いた木々をユリウス副団長の元へ運び加工する者、ユーリ様に同行して護衛する者の三班に騎士達を分けようと思います。」

まあユーリ様の護衛はオレだけでも充分なのですがね、なんて付け足して言ってるあたりどう考えても私の護衛に回す人数は最小限にしそうだよね・・・。

そう思ったのは私だけではないらしく、シェラさんの提案というかほぼ決定事項みたいな発言に他の騎士さん達からは横暴だ!という声が上がった。

上がったけど、シェラさんの有無を言わせない圧のある笑顔と

「滞在が延びた分、それに見合うだけの働きをしなければあなた方が次からユーリ様の護衛に付くことはないでしょうねぇ。それにこれはユーリ様の初めての辺境任務の重要な功績の一つとして記録に残るものです。その栄誉の一端を担うのが嫌だとでも?」

というへ理屈みたいな言葉にぐぬぬと反論を封じられてしまった。

物は言いようだなあ・・・とその口のうまさに私がちょっと感心してしまっている間にも、シェラさんは次々と騎士さん達の名前を呼んであっという間に班分けを済ませてしまう。

そして

「というわけでユーリ様、明日は子ども達の言っていた川沿いを訪れる護衛の数は減りますが心配なさらないでくださいね。最終日までには勇者様の見つけた温泉に入れるよう手筈も整えておきますので。」

と更に輝くような笑顔を見せられてしまったのだった。

そうして翌日、確かに私に護衛で同行してくれる騎士さんの数は減っていた。シェラさんの他に三人しかいない。

「・・・随分と減らしましたね?」

護衛の騎士さんの数よりも、私を川沿いへ案内しようとまとわり付いている町の子ども達の数の方が多いくらいだ。

「元より、魔物も出ず災害被害のせいで他の地域から訪れてくる者もいない状況ですからね。それに護衛はいずれも中央騎士団の精鋭です、この人数でも安心して行動なさってください。」

そう言いながらちらりと騎士さん達を見やり、

「川への移動中や御力を使われている間は同行する町の者や子ども達に無駄な威圧感を与えないため、オレ以外の騎士はユーリ様の視界に入らない離れた位置で護衛をさせますので。」

なんて話したものだから

「え?それって私を近くで守る人が実質シェラさんしかいなくないですか?」

と思わず突っ込めば

「安心して御身お任せくださいね。」

と否定しない。もはや二人きりで行動しようとする事を隠そうともしないのにびっくりだ。

そりゃあシェラさんの実力はダーヴィゼルドでもよく分かってるから心配はしていないけどさあ。

「御力を使われた後はお腹が空くと思いますので、土手で小休憩をして軽食もつまみましょう。その準備もぬかりなく整えてありますよ。」

なんてシェラさんが目配せをすれば、子ども達の数人が何やら軽食や飲み物の入っていそうな籠やブランケットの包みらしいものを掲げる。いつの間に手懐けたんだろう。

「シェラさん、ピクニックをしに行くんじゃないんですよ?」

「存じております。ですがユーリ様との散策は例え任務のうちだとしても心弾むものですからね。」

「だから散策じゃないんですってば・・・」

子ども達とそれに同行する数人の大人の人達の先導でサクサクと砂利道を踏みしめながら言うものの、青空の広がる天気は良く小鳥もさえずっていてある意味お散歩日和だ。

そんな好天の道すがら、これから行く場所について昨日子ども達やその親御さん達に聞いた話を思い出す。

春から初夏にかけて一斉に咲く薄紅色の花が見事な川沿いの並木は、かつてここを訪れた勇者様も故郷を思い出すと言って気に入っていたという話が町に伝わっているそうだ。

だから町の人達も大切にしていたらしいけど、今回の水害で増幅した川の水でかなりの被害を受けたらしい。

枝が折れたり根が露出したり泥水を被ったりと散々で、伐採するしかないという話になっていたみたいだから今回私がここを訪問出来てちょうど良かった。

というか、町の人達の話を聞くと桜っぽいよねその川沿いの並木。

日本人だろう勇者様が懐かしいって喜んだくらいだし。

その話を聞いてから私の中ではもう完全に桜しかイメージ出来ないんだけど。

これから行って加護をつけたら、この先その木には桜の花が咲くかも知れないけどいいのかな・・・?

念のため「今までとはちょっと違う花が咲いても大丈夫ですか?」って町長さんに確かめたんだよね、怖いから。

そうしたら

「イリューディア神様の御力に祝福された召喚者様が咲かせてくださる花であれば、これから先は今までにも増して大切にさせていただきます」

ってもの凄く感謝っていうか恐縮されてしまった。

だから多分ここには桜並木が出来ちゃうと思う。

春先にテレビ中継でよく見る、川の両側からその流れに大きく枝を伸ばしてこぼれ落ちそうなほど咲き誇る桜の花だ。

そうしたら町のみんなには花見に来てもらい、川沿いを歩いて楽しんでもらおう。

散策に来た人達に踏みしめられた川沿いの土手はしっかりと固まり丈夫になって、多少の水害では崩れにくくなるかも知れない。

そんな事を考えながら歩いていたら、子ども達の一人に服の裾を引かれた。

「見て、ユーリ様。あそこなの!だいじょうぶ・・・?」

指差す先には川が見えている。

そしてその川に沿って、幹や枝が途中から折れたり曲がったりしている灰色にくすんだ木が下流に向かってずっと続いているのも見てとれた。

確かにひどい。でも苗木を育てるのに比べればすでにある程度の大きさに成長し切っている木を癒やし、悪いところを再生させるだけなのでまだやりやすい。

それに私の中にも桜並木の明確なイメージがある。

「大丈夫です!すぐに綺麗なお花を見せてあげますからね‼︎」

子ども達に力強く頷く。そして後ろにいるシェラさんに地図を見せてもらおうと声をかけた。

川は下流に行くと隣町まで繋がっていて、この並木もその町境まちざかいまで続いているらしい。

説明は受けていたけど念のためもう一度地図でもその並木が続いている箇所を確かめて、今見えていないところまでしっかりと加護を付けたかった。

「シェラさん、地図を貸してもらっても・・・」

そう声をかけて振り向けば、シェラさんが私ではなくずっと遠くを見つめているのに気が付いた。

なんだろう?まるでレジナスさんが私には聞こえていない遠くの物音をじっと耳を澄まして聞いているような。

もしくはネコが何にもいない天井の角をジッと見つめて見えない物を見ているような。

「シェラさん?」

一体どうしたのかなと思っていたら、私の耳にかすかに「おーい、」という男の人の声が聞こえてきた。

声はシェラさんが見つめていた川の先、下流の方からする。

もしかしてこれに気付いていたのかな?

そちらを見れば、川沿いの道を5、6人の男の人達が手を振りながらゆっくりとこちらに歩いて来ているのが小さく見えてきたところだった。







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