七人の魔族と森の小さな家

サイカ

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16 お願い

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 ルウのお願い……何だろう?


「僕達は城での務めを果たして外に出てきたのだけれど、城で借りていたアクセサリーをうっかり返し忘れてしまったんだ」

シュン、と申し訳なさそうなルウ。
可愛い……思わず頭に手が伸びそうになる。

「それでね、僕達には外せないからハルに外して欲しいんだ」

私に?

「外せないって……どうして? ルウに外せないのに私にできるのかな?」

器用だと思っていたのにこの様だからなぁ……

「ハルは僕のも外してくれたから」

あの足首に着けていた金の輪か。
高そうだと思ったらお城の物だったんだ。

社員証みたいな物なのかな? 
確かに……返し忘れるというか……時々首から社員証をぶら下げたまま帰宅をしたことがあったなぁ。

「ハルが外してくれたら僕が全部城に返してくるから……」

お願いできる? と可愛く言われたら……いや……ルウの頼みなら

「もちろん、それなら早い方がいいよね」

任せて、と言うとありがとうと微笑むルウ……大人になったんだなぁ……

ベッドから起き上がりリビングへ行こうとすると

「ハルはここで待っていて、みんなを呼んでくるから」

とルウが空になったお皿も持って部屋から出ていく。

ご飯も食べられるしもうベッドから出ても大丈夫なんだけれど……ルウって案外過保護なのかも。

みんなを呼んでくる、と言っていたけれどもルウが連れてきたのは女の子二人だけだった。

「まずは彼女達からお願いてきるかな」

そう言って微笑むルウが……何か警戒している?
一瞬そう感じたのだけれど……気のせいだったかな。

もしかしたらこの子達のどちらかがルウの大切な人なのかも。

「初めまして、私はハルだよ」

よろしくね、と微笑む。

「私はロゼッタ、このコはミア。さっさ……と……さ、寒いわね、最近」

噛んだのかな、可愛い。
実際二人とも凄く可愛い……確か魔族は容姿が整っていると家にある本に書いてあったかな。

それにしても…………

ベッドから出て立ち上がり膝をついて目線を彼女達に合わせる。

森で見つけたときのルウに似ている。

痩せていて……裸足で……痣はないしルウとは違って服も綺麗だけれど……

「少し触るね」

そう言ってから一人ずつ抱き上げ、ベッドに座らせて私は床に座る。

ロゼッタとミアは不安そうに手を繋いでいる。

「見せてもらうね」

ゆっくりとミアの足に触れる。
ルウは片足だけだったけれども二人とも両足に金の輪を嵌めている。

「ミア、外すね」

そう言って微笑むと怯えながらも小さく頷いてくれた。

右足首の輪に両手で触れて力を入れるとルウのときと同じように二つに割れた。

もう片方も同じように外してして元の輪に戻してからルウに渡す。

「あ……あ、ふぅぅっ……ありが……と……」

ミアが泣き出した……
えぇっ!? 何で!? これ外しただけ……

もしかして返さないと相当きつく怒られるのかな……
早くルウに返してきてもらわないと。

ロゼッタの輪も同じように外してルウに渡す。

「…………ありがとう」

ロゼッタが顔をしかめながらお礼をいうのが可笑しくて笑ってしまう。

「うん」

二人の頭を撫でようとするとロゼッタには避けられた……

「ハル、他の子達も頼めるかな」

後ろからルウに話しかけられて振り向くといつの間にかみんな揃っていた。

男の子が一人私に近づく。

「あ、あの……僕はレトです。あの……」

もう泣きそう……ルウを見ると

「レトがハルに薬を作ったんだよ」

そうなんだ……

「ありがとう、レト。私はハルだよ、よろしくね」

こんなに小さな手で作ってくれたのか……
頭を撫でてから抱き上げてベッドに座わってもらい、レトの両足首に着けている輪も外す。

「薬を作るのは大変だったよね、ありがとう。お陰で元気になったよ」

レトの小さな手を握る。

「あの……ハル……が作った薬の材料がま……間違っていたから……その……」

やっぱり間違えていたのか。
それがわかるレト……凄いな。

「もし良かったら後で作り方を教えてくれる?」

泣きそうな顔で頷くレト……喜んでいる……でいいのかなぁ…………

次の子が私の前に来る。

「俺はライオス。よろしく」

ライオスは私が抱き上げる前に自分でベッドに座った。

「ハルだよ。よろしくね」

ライオスの輪も外してルウに渡す。
ライオスのお腹が鳴る。

「お腹空いたね。みんなのを外したら何かつくるね」

そう言って頭を撫でようとしたら避けられた。
空振りした私の手……ちょっと悲しい。

次はグレンという男の子。

「グレン」

と一言……

「私はハル。よろしくね」

コクリと頷くグレン。無口なのかな。
ベッドに座ってもらって金の輪を外す。

金の輪をルウに渡すとベッドから降りたグレンが私の手を握る。

「ありがとう、ハル」

しゃがんでから、うん、とグレンの頭を撫でる。

最後の男の子が私の前に歩いてくる。

「私はアレスです。よろしくお願いします」

なんかしっかりした子がきた。

「あ、私はハルです。よろしくお願いします」

アレスは自分でベッドに座りもう一度、お願いしますというと、金の輪を外す私の手をジッと見ていた。

「ハルは人間……ですよね?」

? うん、と頷く私を見て口を開きかけるアレスを遮るように

「ハル、お茶をいれるから少し休んで」

とルウに言われた。
夕食にはまだ少し早いけれど小腹が空いたな……子供達を見ているとおやつを作りたくなる、これも母性か……

みんなに食べられないものはないか聞いてみる。
アレルギーとかあったら大変だからね。

みんなは不安そうな顔で首をふる…………
本当かなぁ……こっちまで不安になるのだけれど……

念のためルウにもみんなのことを聞いてみると食べられないものはない、と言われた。

「もし何かあっても僕が治すから」

なるほど。

とりあえず混ぜて焼くだけのパウンドケーキを作ろう。
街でいろいろ買い込んでおいて良かった。

「ルウ、おやつを作る」

おやつを? と首を傾げるルウ。

「夕飯までの繋ぎだよ。私も甘いもの食べたいし」

簡単だから大丈夫、と言ったけれどもルウはキッチンまで付いてきた。他の子達もぞろぞろと……

キッチンに立つと改めてルウの成長を意識させられる。
いつもはルウが私を見上げていたのに今は……

いけない、おやつ作りに集中しないと。
失敗したら子供達をガッカリさせちゃう。

材料を混ぜて型……はないから適当な器に流し込む。
あとは焼くだけなんだけれど……

オーブンはないから釜戸でじっくり焼くか……暖炉? と考えているとルウが魔力を使って上手に焼いてくれた。凄い……

「凄いよルウ!」

ありがとう、と思わずいつものように頭を撫でて抱き締めようと手を伸ば…………届かない。

ルウがため息をつきしゃがむ。
……えっ……と、これは……子供の頃のルウの背丈……

そっと頭を撫でる。

「それじゃぁ、お茶をいれようか」

手を離そうとするとしゃがんだままのルウに抱き締められた。

「ル、ルウッ……みんなが見て……」

いないっ……いつの間にか暖炉の前に……

「…………」

そしてルウは無言か……

確かに……いつもは頭を撫でて抱き締める、がワンセットみたいなものだったけれど……

まぁ、身体が大きくなってもルウはルウか……

「ルウ、ありがとう」

そう言って私の胸の位置にあるルウの頭を抱き締める。
よしよし、と抱き締めたままひとしきり頭を撫でると満足したのかルウが解放してくれた。

ルウが過保護な上に素直に甘えてくる気がする……

つい最近まで子供だったルウとの距離をどうとったらいいのかよくわからない。

まぁ、今はとにかく

「食べようかっ」

パウンドケーキを切り分けている間にルウがお茶をいれてくれる。

みんなに席に着いてもらおうと思ったけれどここには人数分の椅子も大きなテーブルもない。

ちょっとお行儀が悪いかもしれないけれど暖炉の前に敷いたラグに座ってもらった。

形はバラバラだけれど大きめなお皿やお盆みたいなものを人数分集めてその上にそれぞれカップと切り分けたパウンドケーキを一緒に乗せて小さなテーブル代わりにしてみんなの前に出していく。

みんないい匂い、とか美味しそうと目を輝かせている。
ふっふっふ、作って良かった、と心の中でガッツポーズを取る。

「どうぞ、召し上がれ」

みんなは顔を見合わせて……


顔を見合わせるだけで……誰も手を付けようとしなかった……

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