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66 木曜日
しおりを挟む木曜日。今日はノバルトが来る。
お昼過ぎ、仕事の区切りが2時くらいにつくからその頃に鍵を開けておいて欲しいとのことだったのでその通りにして待つ。
コン コン コン
「は――い。どうぞ」
ドアが開きノバルトが入って来る。
なんというか……ロイヤル。入ってきた瞬間部屋の空気が変わるというか……これがカリスマ性……?
いつもの通り家の中を案内する。2階はいいかなと思っていたらノシュカトから話を聞いていたみたいで2階の作業部屋もみたいと言われた。
「これが……」
リライのあめ玉を見ている。しばらく部屋を見回してリビングへ移動する。
キャットタワーのてっぺんで三毛猫さんが毛繕いをしている。
ソファーにかけてもらいお茶を出す。いつもはノバルトがおいしいお茶を出してくれていたのでどうかな? と思っていると、
「おいしいよ。ありがとう」
と言ってくれた。
「少し強引に話を進めてしまい申し訳なかった。弟達は楽しんでいるようだが……トウカの迷惑にはなっていないだろうか」
さすがお兄さんですね。お気遣いありがとう。
たぶん王妃様とノバルトはいわゆる天才なのだと思う……話をすると似ている気がする。
王妃様の思い通りに話が進み、してやられた気もするけれど……でも……
「実はノシュカトをお城に送ってから家が広く感じてしまって少しだけ寂しかったので……少しだけ助かっています」
なかなか素直になれないのと1人と三毛猫さんとの時間も大切にしたいのとで変な言い方になったけれど感謝はしています。
「それならば良かった。ありがとう」
ニコリと微笑まれた。顔がいい。
お茶を飲みながら今まで皆さんが教えてくれたことをおさらいする。
何となく気になった北のザイダイバ王国についても聞いてみる。
人材でお金を動かしている事もあり他の国に比べて実力主義な感じが強いみたい。
激しい王位争いがあるのもこの国らしいけれど、今回の代替わりではそんなことはなかったようだ。
「ザイダイバ王国は先王が引退されていて今は第一王子のエリアス・アーリア・ザイダイバが王位についている」
30才の若き王である。
同い年だというので初めてノバルトの年齢がわかった。
やっぱり年上だった。
年も立場も同じということもあり、幼い頃から何度か会ったことがあるみたい。
印象を聞くと、何だかハッキリしない。
「最後に会ったのは何年も前だからね」
少し……寂しそう?
ザイダイバ王国のエリアス国王には弟が2人いるらしい。
第二王子のセオドア・アーリア・ザイダイバは28才。
ノクトと同い年。
これ程年が近くてなぜ王位争いにならなかったのか……どうやらセオドアは放浪癖というか神出鬼没というか……要はフラフラしてるっぽい。
第三王子のルシエル・アーリア・ザイダイバは15才。
若い。今は王位に興味がないかもしれないけれど後々どう動くかわからない。
話だけ聞くと何だか殺伐とした印象を持ってしまいそうだけれど実際行って見なければわからないものよね。
さて、一通り聞きたい事をきけたかな。
庭に出ると熊さんとキツネさんが遊んでいる。
「連れていきたい所があるのですが、飛んでいくので少しの間ノバルトの視界を私に預けて頂けますか?」
「構わないよ」
即答ですか。
では、2人に結界を張りノバルトにはアイマスクをイメージした視界がボンヤリする結界も張る。
しばらく飛んで着いた所はノシュカトが落ちた密猟者の仕掛けた罠がある場所。
ノバルトは穴の周囲を見回してから穴を見つめる。
「中を見ることは出来るだろうか」
穴には結界を張っておいたのでそのままの状態で残っている。つまり……血の匂いもするかも。
「大丈夫だよ。出来るなら私だけ降ろしてくれてもいい」
「一緒に降ります」
火の玉を幾つか出してノバルトの手を取りフライで降りていく。
突き立てられた槍と尖らせた木を見てもノバルトの表情は変わらなかったけれど、何て言うんだろう……空気がピリピリとしている。
しばらく穴の中の状況を見て外に出る。
「トウカ、もし出来るのなら中に突き立てられているものとノシュカトの足に刺さっていた槍を全て集めて持っては帰れないだろうか。それからこの穴を埋めてくれると有り難いのだが」
「できますよ。他の動物達が落ちたら大変ですよね。穴の中の物は全て取り出しておきます」
風魔法で穴の中の物を全て取り出してまとめる。それから土魔法で穴を埋める。ようやくこの穴を塞ぐ事ができた。
「トウカ、いろいろと頼んでしまってすまない。ありがとう」
頭を下げられてしまった。
こちらこそいろいろと救われている気がするから
「こちらこそ、ありがとうございます」
私も頭を下げ、お互い顔を見合わせて笑う。
それから家に戻り、穴の中にあったものを持っていきやすいように紐で縛りまとめておく。
「明日は母がこちらにお邪魔する日だが、私も熊の子を連れて一緒に来ても大丈夫だろうか」
「子熊さんも来られるんですか!? 熊さん喜びます! もちろん大歓迎ですよ」
「明日は今日と同じくらいの時間に来てもいいだろうか」
王妃様とノバルトが、立ち会ってくれるみたい。
今日と同じくらいの時間に約束をして、ノバルトは帰って行った。
明日も熊さんは来てくれるかな……
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