異世界転移の……説明なし!

サイカ

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 ノバルト達に注目が集まる。


しかし騎士様が続けて言った言葉で会場はパニックになる。

「この国も……もうすぐ攻めいられますっ……!!」

ざわめきに悲鳴が混じり始めて人々が一斉に動き出す。

……いけない! 三毛猫さん! ココさん! 結界にフライをかけて浮かせる。

シュゼット様が私の側へ来てココをお願いします、といいエリアス陛下の元へ向かう。

私はみんなが動きまわる中さっきの騎士様の言葉の意味がわからず動けなくなっていた。

リアザイア王国が落ちた…………なくなってしまったと言うこと?

そんなはずはない……だって王妃様の計画は完璧なはずだしリアザイアに残っている陛下率いる騎士団もかなりの強さだと聞いている。

ノバルトとノクトとノシュカトの表情からは何も読み取れない。

さっきの騎士様の言葉を思い出す。

もうすぐこの国も攻めいられる、と言っていた。

おかしい…………

いくら何でもリアザイアとザイダイバ両国を一度に落とせる戦力を集めることは不可能では……?

これだ……ジェイドの話を聞いた時の違和感。

と言っていた。

情報操作で両国を戦わせるわけでもなく、両方攻める……と。ずっと違和感があったのに今気付くなんて……

いくら「彼ら」が数十年前から企んでいた計画だとしても日々訓練を積んでいる王国の騎士団が相手では数だけ集めたところで……

東のベゼドラ王国と西のレクラス王国が手を貸している?

……それも考えにくい気がする東西の王国とは貿易が上手くいっていると言っていたし、街に行った時大きな馬車を何台か見かけた。

ベゼドラ王国とレクラス王国の商人達だ。

今回のザイダイバへのリアザイア一行の長期滞在もあり、有名な商会の馬車も来ていた様で街の住人達も喜んでいた。

自国の民をわざわざ争いが起こるであろう地に向かわせるだろうか……

それにリアザイア一行がザイダイバへの長期滞在を発表したのは到着する1ヶ月前だった。

作戦を立て訓練をし移動するには時間が無さすぎる。

そんな万全とは言えない状態で2国を落としにかかるだろうか……

「トウカ」

ハッとして振り向くとノバルトが私の手を取りこちらへ、と別室へ移動する。
三毛猫さんとココさんも一緒に連れていく。

部屋へ入るとエリアス陛下とセオドアとノクト、ノシュカトとシュゼット様がいる。ココさんがシュゼット様の元へいく。

それからあの騎士様も…………

騎士様はケガもしていてボロボロだった。

そんな様子をみるとますます不安になる。

「ノバルト……あ……リ、リアザイアが」

自分の声が震えていることに気が付く。

私よりもノバルト達の方が……

「トウカ、大丈夫だ。落ち着いて、リアザイアは大丈夫だよ」

「でも……」

騎士様を見てノバルトに視線を戻す。

「大丈夫、あの父上と母上がいるのだよ。リアザイアは簡単には落ちないよ。これも作戦の一部だ」

騎士様を見ると申し訳ありません……と謝られた……

じゃあ本当に? 本当に大丈夫なの?

しかし……と騎士様が続ける。

「リアザイア王国が攻められ、こちらも今攻められているのは本当です。状況を説明いたします……」


騎士様が水を飲み話し始める。


「騎士団が国境の街へ着く数キロ手前で、街の方から魔獣の群れが襲ってきました。群れの先頭には数頭の馬に乗った何者かと数台の荷馬車が走っていて、荷馬車にはおそらく動物の子供達が……馬に乗って走っている者は動物の子を……その……縄で縛り引きずって群れをおびき寄せているようでした」


ザワリと鳥肌が立つ。動物達を戦争の道具にしたのか。


ノバルトが私の手を握り落ち着いて、と言う。

「魔獣の数が多くその者達を止めることが出来ず……すでに王都に着いていると思われます。……血の跡がここまで続いていたので……」


なんて残酷な…………


「魔獣の数は?」

エリアス陛下が問う。

「大型の魔獣がおそらく200体ほど……その他に小型の魔獣も多くみられました」

皆さんが息をのむ。

「しかし前線の騎士団とトンネルを使って来たと言うリアザイア王国の援軍に助けられ魔獣の数は半数以下になりました」

と言うことはリアザイア王国は本当に大丈夫ということ……

そして魔獣達の多くは苦しみの中…………


「前線をすり抜けた魔獣達は両国騎士団長の指示で合同演習の途中で別れ、国境の街と王都の間に待機していた騎士団の分隊によりさらに半数になりましたが……大型魔獣50体程と小型の魔獣はいまだ王都へ向かっております」

こちら側も大勢の者達が犠牲に……食い止める事が出来ず申し訳ありませんっ……

そう言って泣き崩れた騎士様の肩に手を置き、無事ここまでたどり着いてくれてありがとう、後は任せて休むといい、とエリアス陛下。

「夜会の会場でこの知らせを聞いても落ち着いていた貴族達がいたな。彼らは安全な場所を知っているのだろう」

エリアス陛下が後を付けさせている、と言う。

大勢の者達が犠牲に……怖くて聞けない……オリバーは? ガイル様や他の騎士様達……

動物達を魔獣化させて武器にするなんて……そんな酷い事が出来るなんて信じられない……

こちらに向かっている魔獣達がいると言っていた……

魔獣を元に戻す薬も方法もまだ見つかってはいない。

ならばせめて私が安らかな最後を……

「ノバルト、私行ってくる」

窓へ向かおうとした私の手を握り

「トウカ、こちらへ」

ノバルトに別室へ連れていかれる。三毛猫さんもトコトコとついてくる。

「私、残った魔獣達を浄化してくる。それに……オリバー達……騎士団も心配だし」

ノバルトが見つめてくる。

「一度にこんなにたくさんの魔獣を浄化したことはあるのか?」

「…………ないです」

「私も一緒に行く」

「ニャ――」

三毛猫さんも……

ノバルトはそう言いノクトとノシュカトを呼びそう伝える。

珍しく少し強引なノバルトの様子に驚きつつ一緒に行くことになってしまった。

それならばと、3人にも三毛猫さんを見えるようにした。

ミケネコサンだ、といいノシュカトが三毛猫さんを撫でている。

ノバルトと私にも結界を張り、ノバルトにはフライもかける。

暗い中危険な所に行くから、フライには三毛猫さんとノバルトの意思も反映されて欲しい。

ノシュカトに初めてフライをかけてしがみつかれた時からゲートとは別で考えていた。

人に使う事があまりないのでいい機会だと思い、ノバルトに試してもらう。

浮かび上がるようにイメージをしてもらうと、私が何もしなくてもフワリとノバルトが浮く。

上手くいったみたい。

騎士団の皆さんが戦っている中更なる混乱を招かないようにちゃんと周りから姿を見えなくしておく。

準備はできた。


まずはこちらへ向かっているという魔獣達の元へ行こう……


    
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