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山月 春舞《やまづき はるま》

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AD202004《巨木の門》

荒廃

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   栄華を極める。
   かつてのこの場所からこの風景を眺めていたらそんな事を思っていたのだろうか?

   彼は、そんなことを思いながらタバコに火をつける。

   重く垂れ込む灰色の空に無骨なコンクリートの山が積み上げられた道、かつて巨大なビルとしてそびえ多くの人達を吸っては吐いていたそれは、今や大きな墓石の群れの様にすら見えた。

   まるで広大な墓地の様に見える廃都、それはほんの数年前まで東京の中心であり、日本という国の中枢でもあった。

   東京千代田区。

   多くの大企業のビル、省庁、国会議事堂などが並び置かれ、多くの人達がこの国を支えていた。

   あの頃よりも人は、減ったがそれでもまだ人は、いる。
   しかし、それとかつての様にスーツを着たサラリーマンや乗用車とかではなく、戦闘服に身を包み防弾ベストを着用した兵士達と戦車や装甲車などが行き交っていた。

   そんな世界を眺めながら彼はそっとそれに目を向けて煙を吐いた。

   残骸になった巨大なビルの隙間から天を衝き伸びる枝で大地を覆う翡翠色の巨木。

   600m以上あるであろうその巨木は、その大きさながらも太陽を遮ることの出来ない幻だ。
   だがその幻は、まるでその存在を誇示するかの様に世界を見下ろしていた。

『ハル、今どこだ?』

   彼の、ハルの耳に嗄れた聞きなれた声が聞こえハルは、ため息を漏らした。

「キャンプから9時方向の何処ぞのビルの残骸屋上にいるけど?どうした?」

『どうした?じゃねぇよ、ブリーフィングだ、戻ってこい』

   そう言われハルは、ため息を漏らすと踵を返した。

   しかし、ふと立ち止まり振り返り再び巨木を睨みつけた。

   巨木は、そんな事になんら興味が無い様にただ悠然とそこに聳える。

   まるでこの世界を嘲笑っているかの様に。


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