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山月 春舞《やまづき はるま》

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【PW】AD199905《氷の刃》

邂逅 4

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「あっがァァ」

   呼吸が出来ないのと痛みからだろう岩倉はエビ反りをしながら床でのたうち回った。 

「おら、立て、こんなもんで済むわけねぇぞ」

   そう言うと髑髏の仮面の男は、掴んでいた腕を引っ張り上げ、岩倉を無理くり起こすと再び腕を回しながら岩倉の体を今度は壁に叩きつけた。
   岩倉の悲鳴と壁や床にぶつかる音だけが廊下を支配した。
   計7回目の壁の激突で痛みとダメージからだろう遂に岩倉は気絶し、そのままダラりと崩れる様に床に倒れた。

   そうして、漸く髑髏の仮面の男は岩倉の掴んでいた腕を離した。

「アンタ、何者よ?」

   ロッソを撫でながら静かに藤は髑髏の仮面の男を睨みつけた。

「藤さん、アンタは後だ、君はこっちの保護下に置く事になるからそこんとこ宜しく」

   髑髏の仮面の男の淡々とした返しに藤は、何か言おうとしたが直ぐに口を塞いだ。

「とりあえず、俺はとある所に頼まれてこの場を収めに来た、まず犬」

   髑髏の仮面の男は、そう言いながら星見を指差した。

「今回、この事態を収めたのは君達だ、これは上同士で話がついてる筈だから、確認してくれ。次に埼玉県警さん」

   次に本郷と暁に向かい指差す。

「そっちは、これからこっちの言う事に従ってもらう。一応カバーストーリー的には暴徒と化した岩倉のチームを犬達と共に鎮圧の為に動いたって話になるからそのつもりで」

「ちょっと待てよ!」

   そこで漸く口を開いたのは、本郷だった。

「どこの誰か知らねぇが、勝手に話を進めんなよ。こっちは経緯を上司に…」

「オタクらの上司じゃこの話は誰も介入できずに上から黙らされるのがオチだけど?」

「どうして、言い切れる?」

「さっきも言ったけど話ついてるって、そっちの上司と犬は同じ系統だよ、わかってんだろ?」

   そう言われ、暁には心当たりがあった。
   林だ。彼は縄張り違いとは言え同じ警察組織だ、そんな男が星見と接触していた事実を踏まえるとその可能性は十分に高い、だが警察とは言え一枚岩とは、言い難い。
   管轄、分野が違えば当たり前の様に争う。刑事部でも捜査一課と捜査四課で争うなんてザラにある話だ。
   刑事部でもない公安部なら尚更だ。
   その2つを一気に黙らせる事が出来る組織なんてそんなに多くはない。

「そもそも、アンタらじゃ、コイツを起訴すら持ち込めないだろ?精々出来て器物破損と不法侵入ぐらい。殺しじゃ到底無理だね、違うか?」

「そんなもん、捜査しないと分からないだろ?」

   本郷がそう言うと髑髏の仮面の男は、ケラケラと笑いだした。

「なら、今起きた事をどう起訴に持ち込める?」

   そう言われ、本郷は押し黙ってしまった。
   正直、暁もだが何が起きたのか全くわからなかった。
   岩倉が何をしたのか皆目検討もつかない。何よりも物的証拠となるモノが何も無いのだ。こんな状態で起訴に持ち込めたとしても不法侵入とギリギリで暴行罪ぐらいだろうか、懲役どころか執行猶予付きで直ぐに岩倉は自由の身になる。

「今起きたことをありのままで公表する。そうすれば世間の目は変わるかもしれない…」

   本郷が何とか絞り出した無謀な答えに髑髏の仮面の男は盛大な溜息を漏らした。

「まさか本気で言ってないよね?」

   そう問われてると本郷も天を仰ぐと盛大な溜息を漏らしながら頷いた。

「本末転倒だな…だがお前らは何なんだ?」

   本郷の肩から力が抜けていくのがわかる。抜けて末に出たのは、なんの忖度もない純粋な本音の疑問だった。

「そいつは、トップシークレットさ、まぁアンタらは今回の一件である程度の説明を受けるとは、思うけど……納得いく答えは得られないだろうね」

   その応えに本郷は苦笑いを零した。

「とりあえず、岩倉を捕まえられるなら好きにしろ」

「安心しな、コイツが自由に闊歩出来る未来は悉く潰しておくさ」

   その力強い言葉に本郷は手をヒラヒラと泳がせながら壁に背を預けながら座り込みながら一言「タバコ吸いてぇ~」っとぼやいていた。

「ちなみにそこの教師の方は既に眠りについて頂いてるんだけど、この人は騒ぎと同時に岩倉達に頭ひっぱたかれて気絶したって話なんでよろしく」

   髑髏の仮面の男にそう言われて暁が慌てて学年主任の教師を探すと彼は椅子に座りながら眠りこけていた。

    いつの間に…
    もう事は、済ませたのか別の髑髏の仮面が教師の頭に少し触れるとそのまま離れ、昇降口の方へ歩き出した。

「そいじゃあ、今夜は俺達はこのまま消えさてもらう、もう少ししたら志木署と別の応援がくるので」

   そう言いながら髑髏の仮面の男もまた昇降口に向かい歩き出した。

「ちょっと、私は?」

   そんな髑髏の仮面の男の背中に声を掛けたのは藤だった。

「いずれこちらから連絡入れるから、それまで待ってな」

   そう言いながら片手を上げてヒラヒラとさせると一陣の風が吹き、一瞬眼を離した隙にその姿は、消えていた。

   暁は視線を周囲に向けた時に空が深い青黒く染まっていることに気づいた。

   街灯の光に赤い光がチラチラと映り込む。

   終わったのか? 
   暁はなんの実感も無いまま今起きた嵐にただ呆然としながらふと見えた月に目を奪われていた。

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