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山月 春舞《やまづき はるま》

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【PW】AD199908《純真の騎士》

結び目

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   里穂が九州に引っ越してから3日後。
   暁は、唐突に崇央から事務所に来る様に命令された。

   煌佑の行確も解けてないままの唐突な呼び出しに何事かと思いながら日が沈んだ19時に顔を出す事になった。

「明日から牧原煌佑の行確を解きます」

   室長室に入り、応接用のソファーへ腰をかけたと同時に崇央に言われ、暁は怪訝な表情を向ける事しか出来ずにいた。
   それも折り込み済みだったのだろう、崇央は自分のデスクから立ち上がると1冊のファイルを暁に差し出してきた。

「今朝、三本から来た報告書、そこに煌佑の能力について詳細な情報が書かれてる、それを考慮した結果、アイツには危険性無しと判断された」

   暁は、そのファイルを受け取るとそこには煌佑の能力についての詳細な情報が書かれていた。

   意識を想念の根源への潜入、及び、想念の根源内から個人情報の調査、読み取り。

   大雑把にまとめるとそういう事なのだが正直何を書いているのか全く理解出来なかった暁は、そっと崇央を見た。
   明らかにその表情は疲労と苦悩に染まっていた。
   どれだけ有能でもまだ20代後半に差し掛かったばかりの男には、この仕事は正直重責だと暁は痛感していた。
   少し年上の自分ですら対象しきれていない、ましてや部下も崇央からすれば年上ばかりでそれを上手く扱うだけでも相当厄介のはずなのに自分で感知出来ない世界の調査と言うんだから、雲を掴む様な、下手をすれば空気を掴まされてる様な感覚に近いのだろう。

「大丈夫じゃないよな?」

   暁がそう聞くと崇央は、暁の対面に座ると天を仰ぎながら盛大な溜息を漏らした。

「マジで俺何をしてんすか?そもそも無意識の世界への潜入って何?」

   堰を切った様に崇央は、声を上げるとタバコを取り出して吸い始めた。

「正直この任務から外れたいって思ってます、だけどこれを他の奴に持っててもまともにこなせるとは、上の連中は誰も思ってない、俺も同様の中に入っている、でも体裁上、国民が関わっていて刑法に引っかかる対象を処罰しなければいけないとなれば警察の介入は無くてはならない、その為にこの部署が必要で、部署が有るなら責任者も居なければならない…」

   そして、自分は、その為の生贄。
   きっと崇央は、そう続けたいのだろうと暁は察したが何も言わずにゆっくりと崇央の目を見ていた。

「先輩、俺はどうしたら…良いんすかね?」

   崇央が漏らしたそんな弱音に暁は一息漏らした。

「辞めたきゃ辞めても良いんじゃね?」

   暁のその一言に崇央は、額を掻きながら再び天を仰いだ。

「アンタって人は、本当に、ど真ん中突いてくるな…」

「だって、俺から見てもお前相当ヤバイ顔してるからな、ここが潮時って思うなら引くのもありだと思うぞ?」

   暁の言葉に崇央は、勢い良く両頬を叩いた。

「あぁクソ!今のナシ!俺らしくない」

   暁は、そんな崇央を見て、大学の時の部活で負けても這い上がるその顔を思い出し懐かしさの笑みが零れてしまった。

「そんで、先輩、この内容ってどういう意味かわかる?」

「しらん、俺にそれを聞くな」

   真っ直ぐと応える暁に崇央は怪訝な表情をした。

「それでも、色々アイツらと関わってきてなんかヒントになる的なのは、浮かばないんすか?」

   そんなことを唐突に言われても…
   そう思いながら暁はフト思考をめぐらせながら目線を周囲に巡らせた。
   すると崇央のデスクに置いてある折り畳み式携帯に目が止まった。

「あれ?お前のその携帯って、あれかインターネットに繋がるやつか?」

   暁がそう言うと崇央は、どこか誇らしげに携帯を手に持つとまるで何処ぞの時代劇の印籠を見せるかの様に暁に見せびらかせてきた。

「これからは、インターネットの時代だからね、最先端すよ」

   インターネット…そうか!

   暁は、その単語にハッとした。

「それだ!」

「えっ?」

「インターネットだよ!つまり想念の根源をインターネットの世界と例えればある程度わかるんじゃないか?」

   暁は、そう言うと自分の長方形の携帯電話をテーブルに置き、その横に崇央の携帯電話を置いた。

「俺が持ってるネットに接続出来ない携帯電話を俺達一般人だとする、次にネットに接続できる携帯電話を接続者達だとすると彼等はそれによって色んなモノにアクセス出来る」

「それで想定して考えたとして、これの能力って何よ?」

「つまり、他人の携帯電話に侵入または情報を仕入れることが出来るんだ、例えばパソコンなら会社のデータとか色々あるだろ?」

「煌佑の能力がそうだと?」

「個人情報の読み取りとかだから恐らく」

   暁がそう言うと崇央は、なるほどと言う様に何度か頷いた。

「そうか、インターネットの世界と想念の根源が同じか…確かに」

   崇央は、ブツブツと言いながら立ち上がると何度か頷き、デスクに戻ると何やら書類の精査を始めた。

「確かに説明出来る…だけど厄介なのには、変わらないけど」

   暫くしてからある程度の書類を見終えた崇央は、苦笑いを零しながら溜息を漏らした。
   しかし、その表情には先程までの疲労感の色は消えているのが暁にとって少しだけ救いではあった。

   それから、崇央から言われたのは暁の班はお盆明け迄に任務がない事を告げられ、少しだけ早い休みに入った事を告げられた。

   暁は、これからどうするか考えながら事務所を後にする、腕時計で時間を確認すると既に20時を回っていたので適当に駅の近場のファーストフードで晩飯を済ませようとハンバーガー屋に入った。

   2階の窓から外を眺められるに座り頬張っていると隣の席に若い男が座って来た、暁はそれを横目で確認するとハンバーガーを食べる手を止め体ごとそちらに向いた。

「なに?」

   そんな暁の行動に素っ頓狂な表情をしながらハルは、ゆっくりとハンバーガーを頬張っていた。

「何?じゃないだ?偶然じゃないだろこれ?どこからつけてた?」

「確かに偶然じゃないけど、つけてはいない」

   ハルは、あっけらかんとそう言いながらハンバーガーを再び頬張ると紙コップに入ったジュースを飲んでいた。

「何用だよ?」

「俺と縁の事、報告に入れてなかったから大丈夫かなって心配っす」

「それなら、大丈夫だよ、勇気のある第三者で警察は納得してる」

「そっちの上は?」

「半分納得、半分疑問ってところ」

「それなら良かった」

   ハルは、そう言いながら次にポテトを食い始めた。

「それだけか?」

「まぁ俺は、それよりも大浦さんの方が色々聞きたい事あるんじゃないかと思うんだけど?」

   それは、ある。
   だが、それをどう聞けばいいのか分からないと言うのが暁の正直な答えだった。

「俺が何であの場所に行けたと思う?」

   我ながらアホな質問の仕方のは重々わかっているがダメ元で聞いてみる、ハルから呆れた溜息か鼻で笑われるかと思っていたがハルの態度はそのどちらでもなかった。

「仮定の答えになるけど、いい?」

「それはお前の中で何パーセント答えに近いと思ってる?」

「個人的な予想で言うなら8割がただけど、確実な答えではないかな」

「ほぼ正解じゃねぇか」

   そう言うとハルは、口元を上げた。

「でも、確実な正解なんてない、起きた事象から恐らくそうだろって答えさ、裁判や科学と同じさ」

「それは、そうだが…とりあえず教えてくれ」

   暁がそう言うとハルは、煙草を取り出し火をつける素振りを見せて止まるとゆっくりと暁を見た。

「今日は特別だ」

   暁がそう言うと再び笑いながら煙草に火をつけた。
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