元高校球児の僕だけど、異世界転生したら称号が球界のプリンスだった

かわなお

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騎士団の訓練場

 翌日、家族全員が集まる朝食会で、騎士団の訓練場を視察したいと父上に申し出た。
 もちろん、パパお願いと甘えてみたりもしたのだけど、答えはノー。
 理由は、とてもわかりやすいものだった。

「ダメだ。怪我でもしたらどうする。子供の遊び場じゃないんだぞ」

 もちろん遊びに行く気は全くないけど、それを説明しようにも中々難しい。
 ヒューイには申し訳ないが、この話は無かったことにするしかないと思う。
 流石に僕が続けてケガをしたら、今度は騎士団の人たちの首が文字通り飛ぶからね。

 残念ではあるけれど、僕はまだ五歳。この先いくらでも機会はあるから、まずは道具の準備を進めよう。

 今ある素材はゴムの木の樹液とアロン樹の根の粉末。ネンチャクカマキリの体液はまだ目的の魔物が見つからないらしく、配下からの報告を待っている状態らしい。

「どうしよう」

 素材が足りない状態で出来ることといえば、他の道具を調べてみることくらいだ。
 もし順調にボールができたとして、次に必要となるものは、グローブかな?

 よし、グローブの素材を調べてみよう。

「グローブっと」

 僕がテキスト欄に記入して得た検索結果は。

『ガープ牛の皮 タンポポ羊の綿毛』

「…………」

 また変なの出た。
 何? ガープ牛って。聞いたことないんだけど……。
 グローブの皮はよく牛皮とか使ってるから、適した素材ってことかな。
 それと、タンポポ羊ってなに? しかも綿毛って……。
 羊なの? タンポポなの? どっち?

 これはまたヒューイに相談しなくちゃ。
 素材を取ってくるのは彼だから、知っているよね。たぶん……。

 僕はメアリーに頼んで彼を呼び出すと、まずは視察について謝罪する。

「ごめんなさい。父上から許可が貰えなくて」

「ああ、視察の件ですね。それなら私から申請して許可をいただいておきましたよ」

「えっ!?」

 どういうこと? 僕から頼んでもダメだったのに、ヒューイなら良いって。
 そんなに信用無いの? ぼく……。 
 まあ、中庭に出るのも彼がいたから許可されたわけだし、今更か。

 僕はヒューイに「ありがとう」と礼を言って、今回呼んだ理由について説明する。

「また夢を見て、手に入れて欲しい素材が増えたんだけど……」

 そう伝えてみたら、ヒューイの行動が早い。

「では、トムさんのところに参りましょう。彼に話を通しておいた方が、事が早いですからね」

 その一言で、僕はまたトムさんに会うため、中庭の管理小屋を訪れた。
 トムさんは、ちょっと僕を警戒するように見ている。

「殿下、今度は何ですかな?」

「えっと、グローブを作るためにガープ牛の皮とタンポポ羊の綿毛が欲しくて」

 でも、僕は彼の態度は無視して、率直に目的を伝えた。
 それで、トムさんの反応はというと……。

「ふむ、グローブってことは、手を覆う物ですかな。ふむふむ、まあそれはいいとして、ガープ牛はガープ領特産の牛ですから流通しておるので問題ないでしょう」

 おっと、どうやらガープ牛は食用に生産された牛らしい。皮も加工用に取引されているみたいだから安心だ。

 けど……。

「ですが、タンポポ羊の綿毛となると、少々問題がありますな。そもそもタンポポ羊はデイダラ高原に生息する魔物でして、群れの数は百を超えるとか。鼻筋の黄色い毛がタンポポの花のように見えるためそう呼ばれておりますが、それを逆手にとって獲物を狩る高原のハンターとして恐れられておりまする」

「そうなんだ……」

 だよね~って、感じ。
 でも、羊だよね。何故、肉食? 
 それにハンターって少数精鋭みたいなイメージだけど、違うのかな。

 謎過ぎる生態だけど、僕にできることは何もない。たた、皆の無事を祈るばかりである。


 ということで、今回決まった内容はというと、タンポポ羊の討伐には二個中隊で臨むらしい。

 当然指揮を執るのはヒューイだが、流石に強敵過ぎて、もう一人精鋭を連れて行くみたいだ。

 明日の視察の際に紹介してくれるというので、今から楽しみにするとしよう。


 

 そして翌日。

 やってきました騎士団訓練場。
 何故か父上と兄上二人も一緒に居るけど、それはまあいい。たぶん、そんなことじゃないかとは思っていた。
 僕が中庭をお散歩するだけでついて来ようとする国王《ひと》だからね。今回も兄上たちに勉強させたいという名目で、了承したようだ。

「全員整列!」

「よいよい、皆の者、続けるがよいぞ」

「ハッ! 全員、訓練再開!」

 凄い、一糸乱れぬとはこういうことをいうのか。でも、やっぱりヒューイって副団長なんだな。僕のところに来た時とは大違いだ。いつもはにこやかなお兄ちゃんって感じだけど、今はビシッと決まっている。やっぱ額に汗を流す姿って、カッコいいよね。
 うん、僕も大きくなったらあんな風になろう。

 僕は父や兄たちと一緒に騎士団の訓練を視察する。
 訓練場は広く、イメージでいえば陸上競技場くらいだろうか。不思議と四百メートルトラックもあって、様々な競技……じゃなくて、訓練が行われていた。

 うん、あれはやり投げだね。遠くへ投げるってより、正確に的へ当てることが目的かな。投げてる人は投擲種目らしく凄い筋肉だし、あれで至近距離を的にしたら大変なことになっちゃいそう。

 それから、あっちは重い鎧を付けたままの……持久走? って、水濠障害もあるじゃないか。めちゃくちゃハードだな。


 僕は騎士団の訓練場っていうから、木剣での戦いが繰り広げられているのかと思ってた。けれど、意外にも地味なトレーニングばかりで驚いた。

 弓を射る練習や無手による格闘、そして木剣での戦闘訓練も行われているけど、どちらかといえば基礎体力造りがメインじゃないかと思う。 

 でも、だからこそ確信がある。
 野球には投げる、打つ、走る、捕ると、身体能力を鍛える術が全て含まれているからね。
 トレーニングの一環としてじゃ困るけど、受け入れられると思うんだ。

「殿下、ニヤニヤしておられるようですが、如何されました?」

「あ、ヒューイ。みんな頑張ってるなって思って」

「ええ、みんな殿下が視察に来られると聞いて、張り切っているのですよ」

「え、ぼく……」

「はい」

「えっと、国王陛下である父上ではなく、ぼくがいるからって、どういうこと?」

「それはですね。殿下が何か新しい遊びを考えているみたいだって、私が皆に伝えたからですね」

 って、おまえが原因かい!
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