元高校球児の僕だけど、異世界転生したら称号が球界のプリンスだった

かわなお

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一階には、何があるの?

 さてと、探索に戻ろう。

 僕はさっそくとばかりに、一階へ降りる階段を探す。
 見つけ方は簡単、階段の手前には必ず騎士の人たちが警護しているみたいだから、その人たちを探せばいいだけだ。

「あったー」

 僕は階段を指さして、テンション高めに声を出す。
 というのも、やはりというべきか、予想通り階段の近くには警護の騎士たちがいた。
 僕はその人たちに手を振ってから、階段を降りる。
 
 これで、一階へ到着。
 もちろん、ここにも騎士が二人警護しているので、僕は彼らに手を振ってから、メアリーに尋ねた。

「ねえ、この階には何があるの?」

「そうですね。まず、あの先に見えるのが玄関《エントランスホール》ですね。外から来た人は、あそこから中に入ってくるのですよ」

「へえ~」

 僕の視線の先に見えるのは、大きな円形状の広場。そこに多くの近衛騎士が常駐し、ここを訪れる者たちの監視をしているのだそうだ。

 ちょっと興味はそそられるが、どうやらそちらへは向かわない様子。

「マルクス様、玄関のあるあちらは危険ですので、こっちに参りましょう」

「う、うん」

 僕はメアリーに手を引かれ、玄関とは反対方向へ進む。
 少し未練はあるけど、どのみち外へは出させてもらえないので、気にするだけ無駄だ。

 そうして暫く歩いていると、奥の方から良い香りが漂ってきた。
 これは間違いなく、アレ。食事を作っているところだ。

「いい匂い」

「はい、お腹が空いてしまいますね」

 どうやらここで作られた料理が、四階にある食事室まで運ばれてくるらしい。

 僕がとんでもなく大変な作業だなと思っていると、ここには直通の階段があるとメアリーが教えてくれた。
 知っているのは極一部の者に限られていて、安全面には配慮されているそうだ。

 そんな厨房を通り過ぎ、見つけたのは下へ降りる階段。
 こんなところにも近衛騎士が立っていたから、お腹が空いてしまわないのだろうかと心配になる。

 でも、これでついに念願だった地下へ降りることができるのだ。

「あったー」

「すみません、マルクス様。そこは貯蔵庫へ繋がっているだけですので」

 僕の喜び虚しく告げられたのは、貯蔵庫という言葉。
 厨房があるのだから当たり前だけど、残念だと言いたい。

「ガーン」

「マルクス様?」

「ううん、何でもない。先にいこう」

「はい」

 流石に冷蔵完備の貯蔵庫に足を踏み入れるわけにもいかず、僕は階段を通り越して先へ進む。
 もう察しのいい方ならわかると思うが、階段は一つだけではないのだ。
 広い王宮内で、階段が一つしかないとなれば、困ってしまうであろうことは容易に想像できる。
 そして必ずと言っていいほど、その近くには近衛騎士が立っていた。

 ということで、探すのは近衛騎士の方たち。僕の小さな身体では廊下の先にある階段を見つけるより、立っている人を見つける方が早いのである。

「いた! 近衛騎士の人」

 先程の階段から暫く歩くと、また近衛騎士の方たちが見えてきた。今度の人たちは女性であるらしく、僕が手を振ると、同じように手を振り返してくれた。

「マルクス様、よかったですね」

「うん!」

 そう、せっかく僕が手を振っているのに、今までの人たちは恐れ多いのか、全く反応が無かったのだ。
 でも、それでは寂しいというもの。相手が兄上たちのように大きければ難しいかもしれないが、僕のような子供は、手を振り返してくれた方が嬉しいもの。 

 まあ、僕の目的はその先にある階段だけどね……。

 そしてもちろん、階段はあった。

「やったー」

「はい、マルクス様。ここを降りましょうか」

「うん!」

 そんな僕の姿を、ずっと微笑ましそうに眺めているライアン改めゲイル。
 彼の本名がゲイル・ライアンと知ってしまったので、これから脳内ではゲイルと呼ぶことにしたのだ。

 でも、ゲイルって、僕を見る目がとっても優しいんだよね。となると、たぶんアレだなと予想できるわけで、思い切って彼に尋ねてみた。

「ねえ、ライアン。もしかしてだけど、僕と同じくらいの子がいるの?」

「ハハハ、殿下には敵いませんな。おっしゃる通り、私には七歳になる娘がおります。ですが、残念ながら妻に似て大人びた子でしてな。このように探索などを一緒にしてはくれないのですよ」 

 そう寂しそうに話すライアン。やはり彼には僕と年の近い子供がいたようだ。
 女の子であるためか筋トレなどはしてくれず、むしろお淑やかな少女だとか。

 でもだからって僕に筋トレを進めるのは、やめてくれる。
 今世の僕はムキムキマッチョになんて、なるつもりは無いからね。
 まずは感性を大事にして、必要なところへ必要なだけの筋肉を。
 それが僕の目標なんだから。

 まあでも、彼の気持ちもわからなくもない。一緒に遊んであげるくらいは平気だから、たまにはね。
 けど、娘に会わせようとはしないでね。下手すると婚約者に内定してしまいそうだし、僕にはメアリーがいるから絶対に無理。

 そんな妄想がはかどっていたけど、ついにこの時が来た。
 これから僕は、念願だった地下へ降りるんだ。
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