元高校球児の僕だけど、異世界転生したら称号が球界のプリンスだった

かわなお

文字の大きさ
28 / 36

トム視点――マルクス殿下――

 儂《わし》はトム・ローガン。
 バトラウス王国の王城で宮廷庭師筆頭を任されておる。

 といっても、昔から趣味で土いじりはしておったのじゃが、長年携わってきた者には勝てん。
 ただ元伯爵ってだけで、筆頭を任されておるだけじゃ。

 まあ、腐れ縁の元国王シルベスタから頼まれたってのも、あるがのう。


 そんな儂のもとに、ある日、シルベスタの孫で第五殿下のマルクス坊ちゃんが訪ねて来おった。
 護衛の騎士にヒューイ殿を連れておるくらいだから、何事か面倒な相談であろうと思っておったが、まあ当たりといって良いじゃろう。

 ゴムのボールが欲しいという坊ちゃんに、儂は聞いたことがないので『何処でそれを』と尋ねてみると、それがまさかの答えじゃ。

『あ~、うん、夢で見たの。素材はゴムの木の樹脂と、アロン樹の根の粉末。それとネンチャクカマキリの体液だったかな。もう、すっごく楽しくて、また遊びたいの』

 まだお子様だから、これでバレないとでも思っておるのじゃろうが、そんな夢があってたまるものか。
 そのボールとやらで遊んだ話であればわかるが、どこに素材まで教えてくれる夢がある。

 儂はもう少し様子を見るため、少し意地悪をしてみた。

「ほう、夢でございますか。それにしても素材までとは豪勢な夢でございますな」

 そう言ってみたところ、やはり殿下は困った様子。
 儂はこっそりほくそ笑み、こう続けてみた。

「……ですが、確か自身の知らないことを夢で見るようなことはないはずでして、もしそれがあったとしたら、予知夢か、神からの御神託でござりましょうな」

 ふふふ、やはり困っておる。
 さて、ここからどう誤魔化してくれるのかのう。

 そんなことを考えておったのじゃが、まさかそう来るか。

『そうなの? じゃあ僕、予知夢だったら嬉しいな。だって、夢の中の僕、すっごく楽しそうに遊んでたんだもん』

 うむ、見事な返しじゃて。
 諦めて真実を話すかと思ったのじゃが、どうやら坊ちゃんは相当切れるらしい。
 まあ、どこか抜けたところは愛嬌としても、到底ただの五歳児とは思えん。
 これは間違いなく何かを隠しておるんじゃろうが、それはどうでもいいことじゃ。

 坊ちゃんの話に乗ってみても、面白いかもしれん。
 どのみち長くもない人生じゃ。面白おかしく生きようぞ。

「ま、まあ、予知夢であろうと、御神託であろうと、幼い坊ちゃんには理解できますまい」

 儂がこう折れたことで、坊ちゃんは少し気が抜けた様子。だが、ここからが本題じゃ。

 坊ちゃんの欲しがる素材は全て、魔物じゃからのう。
 そう簡単には手に入らんし、現実を教えねばならん。

 だから儂は少し大げさに言ったのじゃが……まさかヒューイ殿までとはのう。

『それでは、私が中隊を率いて採って参りましょう。十日ほどもあれば集められると思いますので、まず陛下から許可をいただきましょうか』

 もうすっかり心酔しておる。

 なら、儂も倣うとするか。

 まさかこの年になって、こんな楽しみに出会えるとはのう。

 世の中はわからぬものじゃな。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。