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トム視点――マルクス殿下――
儂《わし》はトム・ローガン。
バトラウス王国の王城で宮廷庭師筆頭を任されておる。
といっても、昔から趣味で土いじりはしておったのじゃが、長年携わってきた者には勝てん。
ただ元伯爵ってだけで、筆頭を任されておるだけじゃ。
まあ、腐れ縁の元国王シルベスタから頼まれたってのも、あるがのう。
そんな儂のもとに、ある日、シルベスタの孫で第五殿下のマルクス坊ちゃんが訪ねて来おった。
護衛の騎士にヒューイ殿を連れておるくらいだから、何事か面倒な相談であろうと思っておったが、まあ当たりといって良いじゃろう。
ゴムのボールが欲しいという坊ちゃんに、儂は聞いたことがないので『何処でそれを』と尋ねてみると、それがまさかの答えじゃ。
『あ~、うん、夢で見たの。素材はゴムの木の樹脂と、アロン樹の根の粉末。それとネンチャクカマキリの体液だったかな。もう、すっごく楽しくて、また遊びたいの』
まだお子様だから、これでバレないとでも思っておるのじゃろうが、そんな夢があってたまるものか。
そのボールとやらで遊んだ話であればわかるが、どこに素材まで教えてくれる夢がある。
儂はもう少し様子を見るため、少し意地悪をしてみた。
「ほう、夢でございますか。それにしても素材までとは豪勢な夢でございますな」
そう言ってみたところ、やはり殿下は困った様子。
儂はこっそりほくそ笑み、こう続けてみた。
「……ですが、確か自身の知らないことを夢で見るようなことはないはずでして、もしそれがあったとしたら、予知夢か、神からの御神託でござりましょうな」
ふふふ、やはり困っておる。
さて、ここからどう誤魔化してくれるのかのう。
そんなことを考えておったのじゃが、まさかそう来るか。
『そうなの? じゃあ僕、予知夢だったら嬉しいな。だって、夢の中の僕、すっごく楽しそうに遊んでたんだもん』
うむ、見事な返しじゃて。
諦めて真実を話すかと思ったのじゃが、どうやら坊ちゃんは相当切れるらしい。
まあ、どこか抜けたところは愛嬌としても、到底ただの五歳児とは思えん。
これは間違いなく何かを隠しておるんじゃろうが、それはどうでもいいことじゃ。
坊ちゃんの話に乗ってみても、面白いかもしれん。
どのみち長くもない人生じゃ。面白おかしく生きようぞ。
「ま、まあ、予知夢であろうと、御神託であろうと、幼い坊ちゃんには理解できますまい」
儂がこう折れたことで、坊ちゃんは少し気が抜けた様子。だが、ここからが本題じゃ。
坊ちゃんの欲しがる素材は全て、魔物じゃからのう。
そう簡単には手に入らんし、現実を教えねばならん。
だから儂は少し大げさに言ったのじゃが……まさかヒューイ殿までとはのう。
『それでは、私が中隊を率いて採って参りましょう。十日ほどもあれば集められると思いますので、まず陛下から許可をいただきましょうか』
もうすっかり心酔しておる。
なら、儂も倣うとするか。
まさかこの年になって、こんな楽しみに出会えるとはのう。
世の中はわからぬものじゃな。
バトラウス王国の王城で宮廷庭師筆頭を任されておる。
といっても、昔から趣味で土いじりはしておったのじゃが、長年携わってきた者には勝てん。
ただ元伯爵ってだけで、筆頭を任されておるだけじゃ。
まあ、腐れ縁の元国王シルベスタから頼まれたってのも、あるがのう。
そんな儂のもとに、ある日、シルベスタの孫で第五殿下のマルクス坊ちゃんが訪ねて来おった。
護衛の騎士にヒューイ殿を連れておるくらいだから、何事か面倒な相談であろうと思っておったが、まあ当たりといって良いじゃろう。
ゴムのボールが欲しいという坊ちゃんに、儂は聞いたことがないので『何処でそれを』と尋ねてみると、それがまさかの答えじゃ。
『あ~、うん、夢で見たの。素材はゴムの木の樹脂と、アロン樹の根の粉末。それとネンチャクカマキリの体液だったかな。もう、すっごく楽しくて、また遊びたいの』
まだお子様だから、これでバレないとでも思っておるのじゃろうが、そんな夢があってたまるものか。
そのボールとやらで遊んだ話であればわかるが、どこに素材まで教えてくれる夢がある。
儂はもう少し様子を見るため、少し意地悪をしてみた。
「ほう、夢でございますか。それにしても素材までとは豪勢な夢でございますな」
そう言ってみたところ、やはり殿下は困った様子。
儂はこっそりほくそ笑み、こう続けてみた。
「……ですが、確か自身の知らないことを夢で見るようなことはないはずでして、もしそれがあったとしたら、予知夢か、神からの御神託でござりましょうな」
ふふふ、やはり困っておる。
さて、ここからどう誤魔化してくれるのかのう。
そんなことを考えておったのじゃが、まさかそう来るか。
『そうなの? じゃあ僕、予知夢だったら嬉しいな。だって、夢の中の僕、すっごく楽しそうに遊んでたんだもん』
うむ、見事な返しじゃて。
諦めて真実を話すかと思ったのじゃが、どうやら坊ちゃんは相当切れるらしい。
まあ、どこか抜けたところは愛嬌としても、到底ただの五歳児とは思えん。
これは間違いなく何かを隠しておるんじゃろうが、それはどうでもいいことじゃ。
坊ちゃんの話に乗ってみても、面白いかもしれん。
どのみち長くもない人生じゃ。面白おかしく生きようぞ。
「ま、まあ、予知夢であろうと、御神託であろうと、幼い坊ちゃんには理解できますまい」
儂がこう折れたことで、坊ちゃんは少し気が抜けた様子。だが、ここからが本題じゃ。
坊ちゃんの欲しがる素材は全て、魔物じゃからのう。
そう簡単には手に入らんし、現実を教えねばならん。
だから儂は少し大げさに言ったのじゃが……まさかヒューイ殿までとはのう。
『それでは、私が中隊を率いて採って参りましょう。十日ほどもあれば集められると思いますので、まず陛下から許可をいただきましょうか』
もうすっかり心酔しておる。
なら、儂も倣うとするか。
まさかこの年になって、こんな楽しみに出会えるとはのう。
世の中はわからぬものじゃな。
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