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風の白魔石強の威力は……
若干の緊張感を覚えつつも、魔石の実験は始められた。
トムさんは火の赤魔石を手に取り装置の左端に置き、右端には緑魔石を置く。
どうやらこれで効果がわかるらしい。
「坊ちゃん、見ておるのじゃぞ」
「うん」
僕が言われた通りに装置をジッと見つめていると、トムさんは緑魔石の近くにあったレバーのようなものを引く。
すると、少し遅れて火の赤魔石から小さなロウソクの炎みたいなものが出てきた。
……うん、チャッカ〇ンだ、コレ。
もちろん本物のチャッカ〇ンとは比べものにならないほど大きいが、長い筒状の装置ということもあって、見た目通りと言っていいだろう。ただ、これと同じ仕組みでもっと小さなものも実用化されており、すでに生活必需品となっているそうだ。
この世界のチャッカ○ン。実物を見てみたい気もするけど、たぶん許可はおりないよね……。
でもまあ、これに風の白魔石強を加えるだけで、火炎杖なんて物を作れてしまうんだ。
なぜこれまで開発されていなかったんだろうと、不思議な気持ちになる。
けど、僕みたいにその効果が確実にわかればいいが、実験となるとそうはいかない。たまたま風の白魔石強を使ってみたとか無い限り、普通の風の白魔石を使うだろうから、火力も多少強化されたに過ぎないのだろう。
なんてことを考えていたら、トムさんが風の白魔石強を手に取った。
「では坊っちゃん、これに白い魔石を足したらどうなるとお思いになられますか?」
「え、いや、ちょっと待って……」
不意な質問に、僕は焦りを覚える。まさかと思うが、アレをセットするつもりじゃないだろうか。
ただ、そんな不安は的中するもの。
まともに答えられなかった僕に代わり、リティスが元気よく手を挙げた。
「はい! 火の勢いか増すと思います」
「うむ、そのとおり。正解じゃ。流石はリティス嬢、よく勉強しておるようじゃのう。では、見ておるのじゃぞ」
トムさんはリティスの発言に気を良くしたのか、何の躊躇もなく風の白魔石強を装置へセットしようとする。
もちろんこのままじゃ大惨事は免れないので、僕は必死になって考える。
えっと、えっと、あっ、そうだ!
「ねえ、トムさん。先にその白い魔石の効果が見たいな。その方が、違いもよくわかるよね」
僕は咄嗟にそう思いつきトムさんに提案すると、彼はポンって、手を打った。
「うむ、いわれてみれば……。坊っちゃん、よくお気づきになられた。では、先に白い魔石の効果をみてみましょう」
これで助かったと思い、ホッと一息。
けれど、それはまだ早いというもの。
トムさんは火の赤魔石を外し、風の白魔石強をセットし直した。そしていざ実験となったところで、とんでもないことを口にしたのだ。
「それでは坊ちゃん、白い魔石の前に立って効果を確かめてみてくだされ」
「えっ……」
その不意打ちに、僕は固まる。
間違いなくヤバいことになるとわかっているのに、それはない。
けれど、トムさんはそれを僕が怖がっていると捉えたらしく「さあさあ、怖がらずに」と、促すではないか。
絶対にヤバイと知っている僕に、その選択肢は無い。
助けを求めるようにメアリーへ視線を送れば、彼女も頷いてくれた。
「ダメですよ、トムさん。マルクス様にもしものことがあったら、どうするのですか。あなたのクビだけでは済まされませんよ」
「いや、まあ、それほど危険ではないのじゃがのう……」
メアリーから注意を受けるも、どこか納得いかない様子のトムさん。
でも、彼女の言葉通り僕に何かあれば、この場にいる全員が罰せられるのだ。冗談では済まされないのである。
そこで、僕の代わりにと手を挙げたのはゲイルだ。
「では、私が殿下の代わりに引き受けましょう。この身体ですから、何かあっても問題ありませんよ、ハハハ」
余裕ぶっているけど、実際はどうだろう。風の白魔石強の効果を僕は知らないから何とも言えないが、アレだけ鍛え上げられた筋肉なら大丈夫だよね。
なんて思っていたのだけれど……、まあアレだ。
先程同様、トムさんが緑魔石横にあるレバーを引くと、その瞬間「うぐっ」「ドゴッ」と、ゲイルが吹き飛ばされて壁に激突。
「…………」
「…………」
「…………」
「な、なんじゃこの魔石は!」
ああ~、やっぱそうなるよね。
想定外の威力に僕とメアリー、リティスは言葉も出ず、トムさんだけが驚きの声をあげていた。
ナンマンダブ、ナンマンダブ……。
「惜しい人物を無くした……」
「いえ、殿下。生きてますって」
僕の何気ない呟きに、むくりと起き上がったゲイルが答える。
どうやら彼はどこも怪我をしていないようで、パンパンと埃を払い立ち上がった。
「トムさん、さっきのは何ですか。もし殿下がアレを受けていたら、大事になっていましたよ」
そう強い口調で問い詰めるゲイルであるが、トムさんは彼にではなく僕の前で深く頭を下げた。
「申し訳ございませぬ。まさかあのような魔石が混ざっておるとは露知らず、御身を危険な目に晒してしまうところでした。いかような罰でもお受けいたしますので、何なりとお申し付けください」
いつものような老人口調ではなく、礼儀正しい物言いで謝罪の言葉を述べるトムさん。
けれど、僕に彼を罰するような意思はなく、むしろ悪戯が成功したみたいで楽しかった。
なので、僕からの言葉はもう決まっている。
「頭をあげて、トムさん。あなたは僕の協力者なんだから、そんな失敗くらいで落ち込まないでよ。それより、あれってたぶん白魔石強だよね。これで土魔石強が見つかれば、斬撃を飛ばせる武器ができるんじゃないの? 調べてみようよ」
僕はそう言って、彼をなだめる。
まあ、ちょっと意味は違うかもしれないけど、昔からピンチはチャンスなんて言葉もあるし、この機会を利用しない手は無い。
けれど、トムさんはまだ俯いたままだった。
やはり元伯爵だけあって、責任感は強いらしい。
正直こんな様子では困るのだが、その危機を救ってくれたのは、まさかのリティスだった。
「そうですよ。ほら、他の白い魔石なんて、こんなもんです。トムさんだって白魔石強が入っているなんて知らなかったんだから、もし裁かれる人がいるとしたら、これを判定した人たちだと思いますよ」
そう言いながら彼女はセットされた風の白魔石強を普通の白魔石に取り換え、実験。その威力は一般的なドライヤーの中程度で、もちろん誰かを吹っ飛ばすようなものではなかった。
「うふふ、そうですね。でも、マルクス様で試すのはやめてくださいね」
「うむ、二度とそのようなことはせん」
「まあ、俺も強く言い過ぎた。そうだよな、見た目だけじゃ違いないんてわからねえもんな」
メアリーの言葉にトムさんが頷き、ゲイルも謝罪。
事なきを得た。
まあ、見た目が明らかに違うならともかく、この風の白魔石強は、ただの白魔石とそう大きさは変わらなかった。
これで誰かを責めるなんて筋違いだろう。
けれど、やはりケジメは必要らしく、僕の望みを全力で叶えることでそのバツとしたのだった。
トムさんは火の赤魔石を手に取り装置の左端に置き、右端には緑魔石を置く。
どうやらこれで効果がわかるらしい。
「坊ちゃん、見ておるのじゃぞ」
「うん」
僕が言われた通りに装置をジッと見つめていると、トムさんは緑魔石の近くにあったレバーのようなものを引く。
すると、少し遅れて火の赤魔石から小さなロウソクの炎みたいなものが出てきた。
……うん、チャッカ〇ンだ、コレ。
もちろん本物のチャッカ〇ンとは比べものにならないほど大きいが、長い筒状の装置ということもあって、見た目通りと言っていいだろう。ただ、これと同じ仕組みでもっと小さなものも実用化されており、すでに生活必需品となっているそうだ。
この世界のチャッカ○ン。実物を見てみたい気もするけど、たぶん許可はおりないよね……。
でもまあ、これに風の白魔石強を加えるだけで、火炎杖なんて物を作れてしまうんだ。
なぜこれまで開発されていなかったんだろうと、不思議な気持ちになる。
けど、僕みたいにその効果が確実にわかればいいが、実験となるとそうはいかない。たまたま風の白魔石強を使ってみたとか無い限り、普通の風の白魔石を使うだろうから、火力も多少強化されたに過ぎないのだろう。
なんてことを考えていたら、トムさんが風の白魔石強を手に取った。
「では坊っちゃん、これに白い魔石を足したらどうなるとお思いになられますか?」
「え、いや、ちょっと待って……」
不意な質問に、僕は焦りを覚える。まさかと思うが、アレをセットするつもりじゃないだろうか。
ただ、そんな不安は的中するもの。
まともに答えられなかった僕に代わり、リティスが元気よく手を挙げた。
「はい! 火の勢いか増すと思います」
「うむ、そのとおり。正解じゃ。流石はリティス嬢、よく勉強しておるようじゃのう。では、見ておるのじゃぞ」
トムさんはリティスの発言に気を良くしたのか、何の躊躇もなく風の白魔石強を装置へセットしようとする。
もちろんこのままじゃ大惨事は免れないので、僕は必死になって考える。
えっと、えっと、あっ、そうだ!
「ねえ、トムさん。先にその白い魔石の効果が見たいな。その方が、違いもよくわかるよね」
僕は咄嗟にそう思いつきトムさんに提案すると、彼はポンって、手を打った。
「うむ、いわれてみれば……。坊っちゃん、よくお気づきになられた。では、先に白い魔石の効果をみてみましょう」
これで助かったと思い、ホッと一息。
けれど、それはまだ早いというもの。
トムさんは火の赤魔石を外し、風の白魔石強をセットし直した。そしていざ実験となったところで、とんでもないことを口にしたのだ。
「それでは坊ちゃん、白い魔石の前に立って効果を確かめてみてくだされ」
「えっ……」
その不意打ちに、僕は固まる。
間違いなくヤバいことになるとわかっているのに、それはない。
けれど、トムさんはそれを僕が怖がっていると捉えたらしく「さあさあ、怖がらずに」と、促すではないか。
絶対にヤバイと知っている僕に、その選択肢は無い。
助けを求めるようにメアリーへ視線を送れば、彼女も頷いてくれた。
「ダメですよ、トムさん。マルクス様にもしものことがあったら、どうするのですか。あなたのクビだけでは済まされませんよ」
「いや、まあ、それほど危険ではないのじゃがのう……」
メアリーから注意を受けるも、どこか納得いかない様子のトムさん。
でも、彼女の言葉通り僕に何かあれば、この場にいる全員が罰せられるのだ。冗談では済まされないのである。
そこで、僕の代わりにと手を挙げたのはゲイルだ。
「では、私が殿下の代わりに引き受けましょう。この身体ですから、何かあっても問題ありませんよ、ハハハ」
余裕ぶっているけど、実際はどうだろう。風の白魔石強の効果を僕は知らないから何とも言えないが、アレだけ鍛え上げられた筋肉なら大丈夫だよね。
なんて思っていたのだけれど……、まあアレだ。
先程同様、トムさんが緑魔石横にあるレバーを引くと、その瞬間「うぐっ」「ドゴッ」と、ゲイルが吹き飛ばされて壁に激突。
「…………」
「…………」
「…………」
「な、なんじゃこの魔石は!」
ああ~、やっぱそうなるよね。
想定外の威力に僕とメアリー、リティスは言葉も出ず、トムさんだけが驚きの声をあげていた。
ナンマンダブ、ナンマンダブ……。
「惜しい人物を無くした……」
「いえ、殿下。生きてますって」
僕の何気ない呟きに、むくりと起き上がったゲイルが答える。
どうやら彼はどこも怪我をしていないようで、パンパンと埃を払い立ち上がった。
「トムさん、さっきのは何ですか。もし殿下がアレを受けていたら、大事になっていましたよ」
そう強い口調で問い詰めるゲイルであるが、トムさんは彼にではなく僕の前で深く頭を下げた。
「申し訳ございませぬ。まさかあのような魔石が混ざっておるとは露知らず、御身を危険な目に晒してしまうところでした。いかような罰でもお受けいたしますので、何なりとお申し付けください」
いつものような老人口調ではなく、礼儀正しい物言いで謝罪の言葉を述べるトムさん。
けれど、僕に彼を罰するような意思はなく、むしろ悪戯が成功したみたいで楽しかった。
なので、僕からの言葉はもう決まっている。
「頭をあげて、トムさん。あなたは僕の協力者なんだから、そんな失敗くらいで落ち込まないでよ。それより、あれってたぶん白魔石強だよね。これで土魔石強が見つかれば、斬撃を飛ばせる武器ができるんじゃないの? 調べてみようよ」
僕はそう言って、彼をなだめる。
まあ、ちょっと意味は違うかもしれないけど、昔からピンチはチャンスなんて言葉もあるし、この機会を利用しない手は無い。
けれど、トムさんはまだ俯いたままだった。
やはり元伯爵だけあって、責任感は強いらしい。
正直こんな様子では困るのだが、その危機を救ってくれたのは、まさかのリティスだった。
「そうですよ。ほら、他の白い魔石なんて、こんなもんです。トムさんだって白魔石強が入っているなんて知らなかったんだから、もし裁かれる人がいるとしたら、これを判定した人たちだと思いますよ」
そう言いながら彼女はセットされた風の白魔石強を普通の白魔石に取り換え、実験。その威力は一般的なドライヤーの中程度で、もちろん誰かを吹っ飛ばすようなものではなかった。
「うふふ、そうですね。でも、マルクス様で試すのはやめてくださいね」
「うむ、二度とそのようなことはせん」
「まあ、俺も強く言い過ぎた。そうだよな、見た目だけじゃ違いないんてわからねえもんな」
メアリーの言葉にトムさんが頷き、ゲイルも謝罪。
事なきを得た。
まあ、見た目が明らかに違うならともかく、この風の白魔石強は、ただの白魔石とそう大きさは変わらなかった。
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