元高校球児の僕だけど、異世界転生したら称号が球界のプリンスだった

かわなお

文字の大きさ
33 / 36

遠征の土産

「殿下、お久しぶりでございます」

「うん、久しぶり。それで、ヒューイ。長いこと来なかったけど、どうしてたの?」

 僕は以前と変わらず優しい笑みを浮かべるヒューイに、素直な疑問をぶつける。
 もう彼とは一月程度は会っておらず、護衛に来るのもゲイルとリティスのライアン兄妹《きょうだい》ばかりなのだ。
 いったいどうしてしまったのかと不安になるのも、当然だと思う。

 けど、彼からは僕の予想していなかった答えが返ってきた。

「はい、殿下のおっしゃっていたアオダモの木を採りに行ってまいりました」

「えっ、そうなの?」

「はい、アオダモの木はトロイトの森深くに生育しておりまして、道中に少々厄介な魔物の生息地があります。そのため、ここまで時間が掛かってしまいました」

 彼はまるで何事もなかったかのように話すが、一ヶ月も掛かるというのはただ事ではない。
 いつものように中隊(約百人)を率いたとして、輸送にかかる食料などを考慮すれば、遠征費は莫大だ。
 相当無理をしたに違いないのだろうが、それを全く感じさせないところが彼の凄いところでもある。

 なら僕にできることは、言葉を伝えることしかない。

「僕のためにありがとう。一緒に行ってくれたみんなにも、僕が感謝していたと伝えて。この恩はいずれ楽しいイベントで返すから、楽しみに待っててねって」

「はい、もちろんです。殿下のお心遣いを聞けば、皆も涙を流すでしょう。それに、たぶんですが、殿下のしようとしていることって、我々のためでもあるのですよね」

 そう答えるヒューイは、流石に鋭い。

 もちろん僕が野球をしたいからってのもあるけど、実際はこの世界にスポーツという娯楽を生み出すことが目的なのだから、あながち間違ってはいないだろう。

 僕の野望としては、まず手はじめに騎士たちから広めていくつもりなのだ。そこから兄上たちを頼りに学校へ手を広げ、僕が通うころにはクラス対抗戦なんてことが行われていたら最高だろう。
 各都市ごとにチームがあり、国内でプロリーグなんてのも面白いかもしれない。

 僕の夢は広がるばかりなのだ。

「うん、その通りだよ。準備は着々と進んでいるから、もうすぐお披露目するね」

 僕はそう言って、この話を終わらせる。

 トムさんに頼んでグローブとボールは運んであるし、もういつでもキャッチボールを始められるんだよね。
 みんなの驚く顔が、今から楽しみだ。



 ……ってことで、ヒューイも戻ってきたことだし、あの作戦を伝えてもいい頃合いだろう。
 これは、彼なくしてできない計画だからね。

「うん、それでね、ヒューイに協力して欲しいことがあるんだけど」

 僕がそう切り出すと、彼はすでに言いたいことを理解していた。

「ええ、リティスから聞いております。殿下は彼女と協力して、魔石の研究をなされているのですね。私は、今回の遠征で魔石をいくつか手に入れましたので、持参いたしました。全部ではありませんが、陛下からも許可を得ていますので安心してお使いください」

 なんて、言ってくれるから、大助かりだ。

「えっ、ほんと」

 僕も驚いてしまったけど、実は最初から彼は大きなバッグを手にしていた。

「はい、こちらをご覧ください」

 ヒューイは僕の前で、そのバッグに入っていた箱を開ける。
 すると、そこには色とりどりの魔石が並べられており、眩いばかりの輝きを放っていた。

「おおっ」

「まあ、きれいですね」

 箱の中身を見た僕とメアリーの感想は驚きだった。

 以前トムさんに見せてもらった魔石はどれもビー玉サイズで、それぞれの属性の物が三個づつ揃っていたため、整理されている感が否めなかったけど、それが大きさも配列もバラバラ。それでもキレイに輝いて見えるのだから不思議であるが、僕がもっと指摘したい点は別にある。

 箱の中身を確認するや否や、すぐさま鑑定した結果がコレだ。

 火の赤魔石強  火の赤魔石   冷の青魔石
 水の青魔石   研磨の土魔石強 岩の土魔石
 研磨の土魔石強 研磨の土魔石  光の黄魔石
 癒しの黄魔石強 風の白魔石強  風の白魔石
 緑魔石     緑魔石     緑魔石

 強の付く魔石が五つ。
 これが意味するところは、彼がとんでもなく強い魔物と戦ったであろうということだ。
 他にも岩の土魔石は初めて見たが、なんとなく戦いに使えそうな気がする。

 でも、まずはコレ、火の赤魔石強。どんな魔物から入手したのか、気になる。

「ねえ、この赤魔石はどうやって手に入れたの?」

「こちらはですね。森でレッドウルフに襲われまして、その時ですね」

 なんてことを簡単に言ってのけるヒューイであるが、レッドウルフなんて異世界物の小説でも強者に入る部類であったはずだ。
 それと遭遇したというのだから、ただで済むはずはない。
 けど、もしかしたら、この世界では弱いのか?

 これは尋ねてみるしかない。

「レッドウルフに襲われたって、大丈夫だったの?」

「はい、レッドウルフはウルフ系の最上位に位置する魔物ですが、厄介なのは炎を吐くことだけで、それ以外は他のオオカミとかわりません。炎は盾で防げますし、よくフォレストウルフを従えているので数は多いですが、こちらも中隊を率いていたので問題ありませんでした」

 そんなことを平然と言ってのけるが、ウルフ系最上位ってことは、そうとうヤバイ魔物だったはずだ。
 それを事もなさげに倒したとなると、むしろ彼らが強いのか?

「そんな魔物が相手で、よく無事だったね。ヒューイたちは僕の想像してた以上に優秀なんだ」 

「ありがとうございます。そうですね、この程度ならどうってことありませんね。それよりも、何度か遭遇した地竜が厄介でした。ヤツに襲われていたユニコーンの助けに入ったのですが、力及ばず残念な結果となってしまいました」

 そう話すヒューイであるが、ここに研磨の土魔石強があるのだから、地竜も倒したのだろう。

 でも地竜といえば、上位ランクのハンターたちが満身創痍で倒したという魔物だ。いくら彼が中隊を率いていたとはいえ、ユニコーンを助けられなかったのは仕方のないことかもしれない。

 けど、なんとなく癒しの黄魔石強がある理由がわかった。たぶん、ユニコーンの物だろう。

 そう思っていたら、案の定、正解だったらしい。

「亡くなったユニコーンには申し訳ないと思ったのですが、素材となる角と魔石をいただき、埋葬してまいりました」

 やっぱり……。

 でも、素材の回収と埋葬ができたくらいなのだから、地竜も倒したに違いない。どんな状況であったかわからないが、遭遇した時点で手遅れであれば無理もないことだけど。
 となれば、残るは風の白魔石強だけど、今はまだいいや。

 それよりも僕がピンポイントで魔石を指定したことに、ヒューイが怪しんだようだ。

「……やはり、殿下は魔石の種類がわかるのですね」

 その指摘に、僕は焦りを覚える。

 まずい、バレた? どうしよう……。

 なんて不安を抱くが、ヒューイからはそれこそまさかな指摘がなされた。

「トムさんも言っておりましたが、殿下は精霊の声が聞けるのではないですか?」

「へっ……」

 あまりに突拍子もない説に、僕は素で驚いてしまった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。