最強の盾と最凶の矛~魔王の呪いを受けてパーティーを自主的に抜けたら最強になった~

剣太郎

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第5章 ヤン・オーウェン

第24話 再会の刻

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「それじゃあ二人に自己紹介。私の名前はカナリア。アレス君とは冒険者になりたての頃からの付き合いなんだ」

 アレス達三人は、ヤン・オーウェンのカナリアの家に招かれていた。昔からの付き合いであるアレスはともかく、ルカとハンスの二人とカナリアは初対面であることから、このタイミングでお互いを紹介することにしたのだ。

「私はルカと言います。ここからずっと北にある森に住んでいたんですが、今はアレスさんに着いていって、王都を目指す旅をしています」

「俺はハンス! こいつと同じように、アレスに着いていって色んな事を見聞して学んでいる最中だ!」

 ハンスが魔族だということは、カナリアには話さないことにした。
 カナリアは新人時代に魔族の襲撃によって命の危機に瀕し、そこをアレスに救われたという経験があった。
 アレスのことを慕っているのはその時の感謝の気持ちが大きいが、それと同時にその時の経験が魔族への恨みや恐怖に繋がっているかもしれないと、アレスはそう考えたからだ。

「へぇ、二人とも凄いね! まだ若いのに、そんな立派な志を持って旅をしているなんて!」

「応よ、気持ちのスケールのデカさなら俺ぁ誰にも負けねぇつもりだからな!」

 もっとも、今のハンスとカナリアは初対面とは思えないほど打ち解けているが。
 どうやら、褒め上手なカナリアとおだてられやすいハンスの相性は中々良いようだ。
 そしてもう一方のルカも、カナリアに対しては純粋に好印象を抱いている様子である。

(正体を隠しているハンス君はともかく……私のことも、はじめから人間と変わらない目線で接してくれるんだ……別に奇特な目で見られるのが嫌ってわけじゃないけど、こうゆうのも嬉しいかも)

 今までルカと出会った人間は皆、アレスでさえも一番に彼女の耳を見た当初は物珍しげな、奇特なものを見る目を彼女に向けていた。
 しかし、カナリアはルカと出会ってから今まで一度もそんな目を見せることはない。エルフは人間から奇異の目で見られることが当たり前だと思っていたルカにとって、カナリアの反応は新鮮なものであった。

(ああ、何となく分かるな。この人凄くいい人だ。きっと、アレスさんにとっての大切な人の一人なんだろうなぁ)

 ルカは、駅でアレスとカナリアが再会したシーンを思い浮かべた。あの時の二人の本当に嬉しそうな顔を思い出すだけで、ルカにとって彼女を信用する理由となりえたのだ。

(……でも、アレスさんが本当に会いたい人は王都にいるんだよね。……早く、会わせてあげたいなぁ)

「……そうだ、カナリア。スティングのヤツは元気にしてるか?」

「お兄ちゃん? うん、相変わらずの堅物だよ。警察隊の隊長になってからは、いつも以上に肩肘張ってるように見えるなぁ」

「話聞いてるだけで相変わらずってのが分かるなぁ。
あいつはお人好しだし、苦労してなきゃいいが……」

「……アレスさん、スティングっていうのは……」

「カナリアの兄貴だ。あいつとも古い付き合いになるからな、この街を出ていく前に挨拶くらいはしておきたいところだが……」

 その時、ちょうどカナリアの家の玄関が開く音が聞こえた。

「あ、もしかしてお兄ちゃんじゃない? アレス君、一緒に出迎えてやろうよ!」

 そう言ったカナリアはアレスの手を掴み、玄関まで引っ張っていくのであった。



(……アレス、いるのか?)

 家まで戻ってきたスティングは、ゆっくりと玄関の扉を開く。部下のコーリーの言っていたことが本当なら、今ここにかつての友がいるはずなのだ。

「お兄ちゃん、お帰り!」

 緊張していたスティングを出迎えたのは、見慣れている暢気そうな妹の顔。
 スティングは肩透かしを食らったような気分になり、いつもの無愛想な態度で妹と接する。

「なんだ、カナリアか……そうだ、お前ちゃんと王都行きの切符は買えたのか……って」

 その時、カナリアの後ろから大男が現れた。そう、スティングがずっと会いたがっていた、あの男が。

「…………よう、久しぶりだな。スティング」

「……アレス。お前、本当に生きて…………」

 スティングは、死んだと聞いていた友人の姿を見て、しばらくの間固まっていた。
 話に聞いていただけなのと、実際に生きている姿を見るのとでは、与えられる感動が全く違うのだ。
 その顔は驚きから、次いで歓喜に変わり……そして、最後に敵意に変わった。

「……アレス、お前……」

「……スティング? どうし」

 彼の表情の変化に気づいたアレスが声をかけた時には、彼はアレスの後ろにいるハンスに剣を突き立てていた。

「……っ!」

「おいっ、スティング! お前何を……!」

「“何を”はこちらの台詞だ。……お前、なぜ魔族を連れている?」

 スティングの放つ視線は、見る者を怯ませるほどの力を持つ、強者特有の威圧の視線になっていた。
 そう、ハンスが魔族であることは、実力者であるスティングには一瞬でバレていたのだ。
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