桜花

依久

文字の大きさ
1 / 11

1話

しおりを挟む


一方通行?!

やってしまった!
まさか、一通だったとは。


仕事のピークが越え久々に何も無い休日。
桜の花びら舞う中、快調にバイクを走らせていたアタシは、つい桜の花に見とれながらハンドルを切り、知らずに一通に入り込んでしまっていた。

それに気がついたのは、踏切の遮断機が上がり踏切を通り抜けた瞬間だった。
さっきまで視界にいなかったお巡りさんがにこやかに手招きしているのを確認した瞬間、ザワザワと心がさざ波をたてた。


「はい、君、違反ね。ちょっとそこの署まで来てもらえるかな?」
「違反て?」
「ここ、一方通行ね」


桜の花に見とれていたから見落とした~~とは言えなかった。
言えば、脇見運転で点数加算されるのが見て取れたから。

はああ~~~~とため息が出そうになった時、踏切の向こうからエンジン音が聞こえた。

あ!マズイ!

と思った次の瞬間、大型二輪のお兄さんもお巡りさんに捕まりアタシと同じ顛末に…。


ほとんど同時刻に信じられない、とお巡りさんさんは頭を抑えたが気を取り直しアタシにした説明と同じものをその大型バイクの人にした。


青の綺麗なバイクから渋々降りたのは、かなり歳上の男性。
20台後半くらいかな?
アタシは自分の職場の先輩達の姿を思い浮かべた。
だいたいあの位の歳かな?


ヘルメットで表情は見えないけれど不機嫌な様子が見てとれた。


あの人は不機嫌。アタシはがっくり!
あーあ、これから映画を観る予定だったのにもう開演に間に合わないな。


お巡りさんにエンジンを切るように指示されバイクを押して歩いた。
5分ほど歩いた所に駐在所があった。


カウンターみたいな所にそのお兄さんと並んで腰かけた。


罰金、いくらだろう。
しなくても良い出費だ。もったいない(涙


「じゃあ、まずお嬢ちゃんからね」
「なんかセクハラされてるみたいですけど!」
むすっとして言い返すと、隣からクスリ、と声が聞こえた。


言い返されたお巡りさん、もとい警察官は「これは失礼。ではお名前を教えてください」と、こほんと咳払いをして調書をとった。


こってり絞られるだろうと思ったけれど、事務的な処理の後、警察官は申し訳なさそうに振込用紙を私達二人の間に出してきた。


「この期日までに金額を振り込んでくださいね」


チラリと隣を見ると、バイクの排気量によって同じ違反でも金額が違うようだ。


警察官が、帰りがけに行き先を聞いてきたので「映画館よ」と告げると、そこはまだ一通なのでエンジンを切って押して歩くように言われた。


二度も言わんでもわかるわ~~と心の中で息巻いても罰金は帳消しにはならなかった。悲しい…。


「ねえ…」
まさか話しかけられるとは思わなくてびっくり目で青のバイクのお兄さんを見上げた。


背、高いな。


ライダースーツに身を包み、遠くから走って来た感じがした。


「映画に行く予定だったの?」
「ええ、でももう始まっている。お兄さんはどこに行くつもりだったの?」
「仕事の資格試験の下見」
「へえ、会場はどこですか?」
「K工業高校」
「え?逆方向ですよ」
「マジかよ!それで捕まって罰金かあ、ついてない」
「あはははは~~」
「ちょっと、そこで笑う?オレ、傷ついたぞ」


そういうお兄さんの目は笑っていた。


「もう、笑うしかないよなー。オレの名前は青木」
「青いバイクの青木さんかあ。アタシは坂本。坂本綾子」
「あやこちゃんか、可愛い名前だね」
「褒めても何も出ませんよ」
「これは手厳しい!」


互いに笑い合うのを警察官が建物の中から見てくるので、その場を離れることにした。


「オレも映画観に行こうかな。一緒しても良いかな?」
「ええ、旅は道連れって言いますからね。でも青木さん、下見は?」
「行く気が失せた。来週行くよ」
「でも、映画始まったとこですよ」
「じゃあさ、映画館にバイク置いてオレのバイクでメシ食べに行こう!実は朝から何も食べてないんだよ」


今度はアタシが、マジですか~~?と言う番だった。


2話につづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

真実の愛は水晶の中に

立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。 しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。 ※「なろう」にも重複投稿しています。

処理中です...