しゅんとこたろうのBL物語

しゅんきち

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高校生編

第3話「すれ違いと距離の証明」

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梅雨入り前の、少し蒸し暑い午後。教室の窓を流れる風も、生ぬるくて、落ち着かない。
しゅんは、朝からずっとこたろうの様子が気になっていた。

(なんか…避けられてる?)

いつものように「おはよう」と声をかけても、こたろうは小さく会釈するだけで目を合わせてくれなかった。昼休みも一緒に食べようと誘ったが、曖昧に笑って「今日はいいや」と断られた。
その微妙な距離が、胸の中に不安を積もらせていく。



放課後、しゅんは鞄を抱えて廊下に出た。今日は一緒に帰れないかもしれない。そんな予感がしていた。

ーーが、階段の下に、こたろうの姿があった。

彼は、まるで待っていたかのように立っていて、しゅんを見つけると小さく頷いた。

「…一緒に帰る?」
「…うん」

たったそれだけのやりとりに、少し安堵する。
でも、ふたりの間には、どこかぎこちない沈黙が続いた。
何を話せばいいのかわからない。聞きたいことも、言いたいこともあるのに、言葉がうまく口に出せなかった。



駅前のベンチ。しゅんがポストにハガキを投函して戻ってくると、こたろうは目を伏せたまま、ぽつりとつぶやいた。

「…俺さ、昨日のこと、見られてた?」
「え?」
「かずとと話してたとき」
「…うん、ちょっとだけ」

こたろうの表情が、ほんのわずか曇った。

「…誤解、されたくないんだけど。かずとは、ただの友達。むしろ、俺の 気持ち を相談してただけで…」
「気持ち?」

思わず聞き返すと、こたろうはしゅんの方をじっと見た。その目は、まっすぐで、逃げ場がなかった。

「…しゅんのこと。俺、たぶんーー好きなんだと思う」

鼓動が、一瞬止まった気がした。

「…え?」
「気付いたのは最近。でも、ずっと気になってて…気付いたら、目で追ってて。気持ちを伝えるのが怖くて、今日も避けちゃってた。ごめん」

しゅんは、その言葉が嘘じゃないことを、痛いくらいに感じた。
そして、自分の気持ちもまたーーごまかせなかった。

「…俺も、たぶん、同じ」

こたろうの目が、わずかに潤む。

「ほんとに?」
「うん。俺も、こたろうのこと、好き。ずっと一緒にいたいって、思ってる」

その瞬間、ふたりの間に流れていた空気が、ふわりと優しく変わった。
沈黙は、もう怖くなかった。



それからの日々は、少しづつ、けれど足すかに変わっていった。
朝の「おはよう」が嬉しくて、昼休みの並んだお弁当が楽しくて。放課後の帰り道が、愛しくて仕方なかった。

「…ねえ、手、繋いでみる?」

ふと、ある帰り道で、しゅんがそう言った。
こたろうは驚いた顔をしたあと、少し照れながらも頷いた。
そっと、しゅんが手を伸ばし、こたろうの指に触れる。
その感触は、思ったよりも熱くて、震えていてーーけれど、しっかりと繋がった。

「…あったかい」
「緊張してる?」
「ちょっとだけ」
「俺も」

ふたりは顔を見合わせて、照れながら笑った。
その笑顔に、言葉以上の「好き」が詰まっていた。



翌日。ゆいとひなが教室でこそこそと話している。

「ねえ、見た?しゅんとこたろう、手、繋いでたよね?」
「見たみた!もう、完全に両思いじゃん!」

そうとかずともにやりと笑いながら混ざってくる。

「しゅん、攻めか…いや、受けか…どうだろうな~!」
「バカ!やめてよそういうの!」

しゅんが真っ赤になって叫ぶと、こたろうが隣でそっと耳元に囁いた。

「…どっちでもいいけど、俺はしゅんに触れたいって思ってるよ」
「なっ…!」

その言葉の破壊力に、しゅんは教科書で顔を隠すしかなかった。



放課後。ふたりきりの図書室。いつものように並んで座るけど、今日は少し違った。
お互いも気持ちを知ってから、心の距離は確実に近づいている。でも、身体の距離も、もっと近づきたいと思ってしまう。

「こたろう…その、キス…してもいい?」

震える声で、しゅんが言うと、こたろうはゆっくりと頷いた。
そっと顔を寄せて、ふたりの唇が重なる。
柔らかくて、あたたかくて、少しだけ切なくて
ーーそれは、まさに 初恋の味 だった。



ふたりの恋は、ようやく始まったばかり。
でも、この先に待っているのは、ただ甘いだけじゃない、いろんな気持ちと触れ合う日々。
それでもきっと、しゅんとこたろうは大丈夫。
だって、こんなにもお互いを、まっすぐに見つめているのだから。
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