3 / 3
高校生編
第3話「すれ違いと距離の証明」
しおりを挟む
梅雨入り前の、少し蒸し暑い午後。教室の窓を流れる風も、生ぬるくて、落ち着かない。
しゅんは、朝からずっとこたろうの様子が気になっていた。
(なんか…避けられてる?)
いつものように「おはよう」と声をかけても、こたろうは小さく会釈するだけで目を合わせてくれなかった。昼休みも一緒に食べようと誘ったが、曖昧に笑って「今日はいいや」と断られた。
その微妙な距離が、胸の中に不安を積もらせていく。
放課後、しゅんは鞄を抱えて廊下に出た。今日は一緒に帰れないかもしれない。そんな予感がしていた。
ーーが、階段の下に、こたろうの姿があった。
彼は、まるで待っていたかのように立っていて、しゅんを見つけると小さく頷いた。
「…一緒に帰る?」
「…うん」
たったそれだけのやりとりに、少し安堵する。
でも、ふたりの間には、どこかぎこちない沈黙が続いた。
何を話せばいいのかわからない。聞きたいことも、言いたいこともあるのに、言葉がうまく口に出せなかった。
駅前のベンチ。しゅんがポストにハガキを投函して戻ってくると、こたろうは目を伏せたまま、ぽつりとつぶやいた。
「…俺さ、昨日のこと、見られてた?」
「え?」
「かずとと話してたとき」
「…うん、ちょっとだけ」
こたろうの表情が、ほんのわずか曇った。
「…誤解、されたくないんだけど。かずとは、ただの友達。むしろ、俺の 気持ち を相談してただけで…」
「気持ち?」
思わず聞き返すと、こたろうはしゅんの方をじっと見た。その目は、まっすぐで、逃げ場がなかった。
「…しゅんのこと。俺、たぶんーー好きなんだと思う」
鼓動が、一瞬止まった気がした。
「…え?」
「気付いたのは最近。でも、ずっと気になってて…気付いたら、目で追ってて。気持ちを伝えるのが怖くて、今日も避けちゃってた。ごめん」
しゅんは、その言葉が嘘じゃないことを、痛いくらいに感じた。
そして、自分の気持ちもまたーーごまかせなかった。
「…俺も、たぶん、同じ」
こたろうの目が、わずかに潤む。
「ほんとに?」
「うん。俺も、こたろうのこと、好き。ずっと一緒にいたいって、思ってる」
その瞬間、ふたりの間に流れていた空気が、ふわりと優しく変わった。
沈黙は、もう怖くなかった。
それからの日々は、少しづつ、けれど足すかに変わっていった。
朝の「おはよう」が嬉しくて、昼休みの並んだお弁当が楽しくて。放課後の帰り道が、愛しくて仕方なかった。
「…ねえ、手、繋いでみる?」
ふと、ある帰り道で、しゅんがそう言った。
こたろうは驚いた顔をしたあと、少し照れながらも頷いた。
そっと、しゅんが手を伸ばし、こたろうの指に触れる。
その感触は、思ったよりも熱くて、震えていてーーけれど、しっかりと繋がった。
「…あったかい」
「緊張してる?」
「ちょっとだけ」
「俺も」
ふたりは顔を見合わせて、照れながら笑った。
その笑顔に、言葉以上の「好き」が詰まっていた。
翌日。ゆいとひなが教室でこそこそと話している。
「ねえ、見た?しゅんとこたろう、手、繋いでたよね?」
「見たみた!もう、完全に両思いじゃん!」
そうとかずともにやりと笑いながら混ざってくる。
「しゅん、攻めか…いや、受けか…どうだろうな~!」
「バカ!やめてよそういうの!」
しゅんが真っ赤になって叫ぶと、こたろうが隣でそっと耳元に囁いた。
「…どっちでもいいけど、俺はしゅんに触れたいって思ってるよ」
「なっ…!」
その言葉の破壊力に、しゅんは教科書で顔を隠すしかなかった。
放課後。ふたりきりの図書室。いつものように並んで座るけど、今日は少し違った。
お互いも気持ちを知ってから、心の距離は確実に近づいている。でも、身体の距離も、もっと近づきたいと思ってしまう。
「こたろう…その、キス…してもいい?」
震える声で、しゅんが言うと、こたろうはゆっくりと頷いた。
そっと顔を寄せて、ふたりの唇が重なる。
柔らかくて、あたたかくて、少しだけ切なくて
ーーそれは、まさに 初恋の味 だった。
ふたりの恋は、ようやく始まったばかり。
でも、この先に待っているのは、ただ甘いだけじゃない、いろんな気持ちと触れ合う日々。
それでもきっと、しゅんとこたろうは大丈夫。
だって、こんなにもお互いを、まっすぐに見つめているのだから。
しゅんは、朝からずっとこたろうの様子が気になっていた。
(なんか…避けられてる?)
いつものように「おはよう」と声をかけても、こたろうは小さく会釈するだけで目を合わせてくれなかった。昼休みも一緒に食べようと誘ったが、曖昧に笑って「今日はいいや」と断られた。
その微妙な距離が、胸の中に不安を積もらせていく。
放課後、しゅんは鞄を抱えて廊下に出た。今日は一緒に帰れないかもしれない。そんな予感がしていた。
ーーが、階段の下に、こたろうの姿があった。
彼は、まるで待っていたかのように立っていて、しゅんを見つけると小さく頷いた。
「…一緒に帰る?」
「…うん」
たったそれだけのやりとりに、少し安堵する。
でも、ふたりの間には、どこかぎこちない沈黙が続いた。
何を話せばいいのかわからない。聞きたいことも、言いたいこともあるのに、言葉がうまく口に出せなかった。
駅前のベンチ。しゅんがポストにハガキを投函して戻ってくると、こたろうは目を伏せたまま、ぽつりとつぶやいた。
「…俺さ、昨日のこと、見られてた?」
「え?」
「かずとと話してたとき」
「…うん、ちょっとだけ」
こたろうの表情が、ほんのわずか曇った。
「…誤解、されたくないんだけど。かずとは、ただの友達。むしろ、俺の 気持ち を相談してただけで…」
「気持ち?」
思わず聞き返すと、こたろうはしゅんの方をじっと見た。その目は、まっすぐで、逃げ場がなかった。
「…しゅんのこと。俺、たぶんーー好きなんだと思う」
鼓動が、一瞬止まった気がした。
「…え?」
「気付いたのは最近。でも、ずっと気になってて…気付いたら、目で追ってて。気持ちを伝えるのが怖くて、今日も避けちゃってた。ごめん」
しゅんは、その言葉が嘘じゃないことを、痛いくらいに感じた。
そして、自分の気持ちもまたーーごまかせなかった。
「…俺も、たぶん、同じ」
こたろうの目が、わずかに潤む。
「ほんとに?」
「うん。俺も、こたろうのこと、好き。ずっと一緒にいたいって、思ってる」
その瞬間、ふたりの間に流れていた空気が、ふわりと優しく変わった。
沈黙は、もう怖くなかった。
それからの日々は、少しづつ、けれど足すかに変わっていった。
朝の「おはよう」が嬉しくて、昼休みの並んだお弁当が楽しくて。放課後の帰り道が、愛しくて仕方なかった。
「…ねえ、手、繋いでみる?」
ふと、ある帰り道で、しゅんがそう言った。
こたろうは驚いた顔をしたあと、少し照れながらも頷いた。
そっと、しゅんが手を伸ばし、こたろうの指に触れる。
その感触は、思ったよりも熱くて、震えていてーーけれど、しっかりと繋がった。
「…あったかい」
「緊張してる?」
「ちょっとだけ」
「俺も」
ふたりは顔を見合わせて、照れながら笑った。
その笑顔に、言葉以上の「好き」が詰まっていた。
翌日。ゆいとひなが教室でこそこそと話している。
「ねえ、見た?しゅんとこたろう、手、繋いでたよね?」
「見たみた!もう、完全に両思いじゃん!」
そうとかずともにやりと笑いながら混ざってくる。
「しゅん、攻めか…いや、受けか…どうだろうな~!」
「バカ!やめてよそういうの!」
しゅんが真っ赤になって叫ぶと、こたろうが隣でそっと耳元に囁いた。
「…どっちでもいいけど、俺はしゅんに触れたいって思ってるよ」
「なっ…!」
その言葉の破壊力に、しゅんは教科書で顔を隠すしかなかった。
放課後。ふたりきりの図書室。いつものように並んで座るけど、今日は少し違った。
お互いも気持ちを知ってから、心の距離は確実に近づいている。でも、身体の距離も、もっと近づきたいと思ってしまう。
「こたろう…その、キス…してもいい?」
震える声で、しゅんが言うと、こたろうはゆっくりと頷いた。
そっと顔を寄せて、ふたりの唇が重なる。
柔らかくて、あたたかくて、少しだけ切なくて
ーーそれは、まさに 初恋の味 だった。
ふたりの恋は、ようやく始まったばかり。
でも、この先に待っているのは、ただ甘いだけじゃない、いろんな気持ちと触れ合う日々。
それでもきっと、しゅんとこたろうは大丈夫。
だって、こんなにもお互いを、まっすぐに見つめているのだから。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
残念でした。悪役令嬢です【BL】
渡辺 佐倉
BL
転生ものBL
この世界には前世の記憶を持った人間がたまにいる。
主人公の蒼士もその一人だ。
日々愛を囁いてくる男も同じ前世の記憶があるらしい。
だけど……。
同じ記憶があると言っても蒼士の前世は悪役令嬢だった。
エブリスタにも同じ内容で掲載中です。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる