キュウカンバ伯爵家のピクルス大佐ですわよ!

紅灯空呼

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【第十四幕】アルデンテ王国の危機

謎解きはザラメ軍曹にお任せ

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 直立不動の状態で待ち構えていたチョリソールがここで口を開く。ピクルスとザラメの会話が一段落したと判断したのだ。

「ピクルス大佐は、ザラメ軍曹にどのようなご用件でしょうか?」
「そうでしたわ。これの匂いを嗅いで下さるかしら?」

 ピクルスは、エプロンのポケットに忍ばせてきたレジ袋を取り出し、中から蝉の抜け殻を一個摘み出した。
 そして、すぐさまそれをザラメ軍曹の鼻先に持って行った。

「わおん! これは、先日チョリソール大尉についていた女性の匂いです!」
「まあ、チョリソール大尉には、そのような仲の恋人がいらして?」
「憎いねぇチョリソール大尉、よっ色男!」
「うぉちょちょつおっ! ちちち、違いまっす!! ごっらぁザラメ軍曹、滅多なことを、そんな軽々しくいうものでは、ないぞぉぉーっ!」

 チョリソールは顔面を真っ赤にして、突如として自身に振りかかってきたスキャンダルを全否定した。

「違いますの?」
「そうです。ピクルス大佐、どうか信じて下さい。私の心の中には、あ……」
「あなたの心の中には?」
「あ、いえ、なにも……」

 喉まで出かかってきた、「あなた様しか、ピクルス姫様しかあり得ません!」という心の底からの雄叫びを、チョリソールは、すんでのところで飲み込んだ。

「そうしますと、その女性の匂いというのは?」
「はい、それは先の日曜日の午後に、私がポプコン山の麓で馬の稽古をしていた時のことです。見慣れない女性が倒れておるのを偶然発見しまして、それで人気のない場所でもありますし、とても気になって私が側へ近づいた途端、その女性が目を覚まして、突然私の下半身に飛びかかってきたのです」
「まあ、そうとうアグレッシブな方、なのですわね?」
「はい。容姿からは、とっくに三十歳を越えているように見えたのですが、なんと私と同じ二十歳だったのです」
「なるほど。分かりましたわ!」

 ピクルスは確信した。

「どういうことでしょう?」
「その女性が犯人ですわ。ええ、フライシラコ‐ピザエスに相違なくてよ!」
「す、すると、そのピザエスという者が、オチタスピのレプリカを盗んだということに、なるのでしょうか?」
「シュアー!」

 先日の真夜中に、ペンネ伯爵から届いた怪しい手紙に、「近日,あなたの大切なχクロスを貰おうと思う.」と書かれていたのはそういう意味だったのだ。しかも、もう一つ、このアルデンテ王国の実権をも奪う、という大それた野心が隠されている。
 そこまでの筋書きを、ピクルスは推理しているのだ。

 ――ズッドォーン!!

 突然、爆発音が聞こえた。

「おや、どこやらの軍隊が爆撃を仕かけてきたのかしら?」
「いやあ、今の爆破は、規模も比較的小さかったですし、それにこの王宮敷地内は、四重の聖水翼賛強結界にて、外部から強固に守られておりますし……」
「そうしますと、きっと内部に忍び込んだ者による小型爆弾での犯行ですわ。爆音は、女官たちの食堂がある辺りから届きました。さあ、チョリソール大尉とザラメ軍曹も、準備はよろしくて? 直ちに急行しますわよっ!」
「ラッジャーッ!!」
「ラジャーわおん!」

 二人と一匹が勢い良く駆け出した。
 エスカレートする嫌がらせ事件も、いよいよ大詰めを迎えた。
 果たして爆破実行犯は誰であろうか? その目的はなんであろうか?

 女官たちの食堂は火の手が上がっていた。
 ピクルスたちが到着した時、王宮消火部門に属している騎士たちもやってきて、ちょうど放水を始めるところだった。
 建物から大勢の女官たちが逃げてくる。先頭を走ってきたのは準一級女官ショコレットだ。その後方にパンコとパインチッチの顔も見える。
 ピクルスがショコレットに駆け寄った。

「ショコレットさん!」
「あピクルス大佐、食堂でラードが暴れたのよ」
「ラード!? あっそういえば、以前わたくしが倒した魔王ギョーザーはラードに転生したのだったわ。倒せまして?」
「ええ、もちろん。でも少しだけ手強い相手でしたわ」

 ラードになってまで戦いを挑んでくるとは、魔王ギョーザーもしぶとい惣菜キャラだといえよう。

「それで、みなさんはご無事ですの?」
「彼女たちは私の防火魔法で守りましたわ」
「さすがは準一級女官さん!」
「それももちろんのことよ。階級では負けても、魔法ではまだまだ負けません」
「ですわ」

 この時、上空を一機のヘリコプターが飛んできた。

「あ、オヤジがきた!」
「チョリソール大尉のお父様ですの?」
「イエッサァー!」

 水を得た海老が跳ねるかのように威勢良く応えるチョリソールだった。
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