47 / 163
2-5
しおりを挟む
夜も深まり、窓から入り込んだ肌寒い風がカーテンを揺らす。
サウザリンド王国の昼と夜の激しい寒暖差には、どうもまだ慣れない。私は窓を閉めようと、窓際に近寄った。すると、賑やかな演奏が風と共に運ばれてきた。
「シャンデリアの灯りに照らされたアデライード様も見たかったな。」
正直に言えば、給仕係でもいいから参加したかった。陰ながら、サウザリンド王宮の華やかな世界を見てみたかったから。
でも...。
私は、自分が着ている長袖の侍女服を見下ろして溜息を吐く。
給仕係もドレスの着用が決まりなんだから、私じゃ無理でしょう?
ドレスを着られない自分が悪いんじゃない。アデライード様のドレス姿を見られただけでも、良かったと思わなきゃ。
さあ、片付けを終わらせちゃいましょ!
私は、畳み終わった服を、どんどん衣装箱の中に詰めていった。
コンコン
「はい。」
ノックの音に返事をすると、正装したサージェントの騎士がひょっこり顔を出した。
「あれ?侍女さん、夜会に行かなかったの?」
「あ、はい。私、今日は夜勤なので。」
「えー!それは、ついてないね。じゃあ、これ!一緒に食べない?」
騎士は、効果音が出そうなほど大袈裟に、バスケットを掲げてみせた。
「これ、どうしたんですか?」
覗き込むと、バスケットの中には、沢山のご馳走が入っていた。
「俺も、これから夜勤でさ。夜会をちょこっと見に行ったついでに貰ってきたんだー!でも、流石に多過ぎたから、一緒に食べてくれると嬉しい!」
人懐っこいこの騎士は、バスケットを抱え直すと、私にダンスを申し込むように、手を差し出してきた。
「ふふ、では、少しだけ。」
片付けも粗方終わった。
後は、主人の帰りを待つだけ。
だから、今ぐらい楽しんでも大丈夫よね。
私は、目の前の騎士の魅力的な誘いに乗ることにした。
とは言え、主人の部屋で食事なんて出来ない。私達は、今は誰もいない使用人用の控え室に移動した。
騎士がテーブルに料理を並べてくれている間に、私はヴェイル殿下から習ったお茶を淹れる。
「良い香り!酒が飲めないのが残念だと思ってたけど、このお茶は、料理に凄く合うよ!美味しい!」
「それは、良かったです。おかわりは、遠慮なく言って下さいね。」
「うん!」
夜会で出される料理は、どれも美味しくて、話しながら食べていたら、いつの間にか完食していた。
「ああー!美味しかった!これで夜勤も乗り越えられるよ!付き合ってくれて、ありがとう。」
「いえ、こちらこそ、ありがとうございました。」
「でさ...、その、よ、良かったら、なんだけど...。」
騎士が、何かを話そうとした時、廊下の方から言い争うような、ざわざわした声が聞こえた。
「何だろう?ちょっと見てくるから、君はそこに居て。」
そう言って、騎士は警戒しながら、扉に近付いていく。すると、勢いよく扉が開いて、人が入ってきた。
「え?サウザリンドの王弟殿下?」
ポカンとしている騎士を、ヴェイル殿下が睨みつける。そしてすぐ、彼のその鋭い瞳が、私を捉えた。
「なぜ、夜会に来なかった?」
いつもより低い声が、私の耳に届く。けれど、あまりの迫力に、私の喉が張り付いて、上手く声を出すことが出来なかった。
サウザリンド王国の昼と夜の激しい寒暖差には、どうもまだ慣れない。私は窓を閉めようと、窓際に近寄った。すると、賑やかな演奏が風と共に運ばれてきた。
「シャンデリアの灯りに照らされたアデライード様も見たかったな。」
正直に言えば、給仕係でもいいから参加したかった。陰ながら、サウザリンド王宮の華やかな世界を見てみたかったから。
でも...。
私は、自分が着ている長袖の侍女服を見下ろして溜息を吐く。
給仕係もドレスの着用が決まりなんだから、私じゃ無理でしょう?
ドレスを着られない自分が悪いんじゃない。アデライード様のドレス姿を見られただけでも、良かったと思わなきゃ。
さあ、片付けを終わらせちゃいましょ!
私は、畳み終わった服を、どんどん衣装箱の中に詰めていった。
コンコン
「はい。」
ノックの音に返事をすると、正装したサージェントの騎士がひょっこり顔を出した。
「あれ?侍女さん、夜会に行かなかったの?」
「あ、はい。私、今日は夜勤なので。」
「えー!それは、ついてないね。じゃあ、これ!一緒に食べない?」
騎士は、効果音が出そうなほど大袈裟に、バスケットを掲げてみせた。
「これ、どうしたんですか?」
覗き込むと、バスケットの中には、沢山のご馳走が入っていた。
「俺も、これから夜勤でさ。夜会をちょこっと見に行ったついでに貰ってきたんだー!でも、流石に多過ぎたから、一緒に食べてくれると嬉しい!」
人懐っこいこの騎士は、バスケットを抱え直すと、私にダンスを申し込むように、手を差し出してきた。
「ふふ、では、少しだけ。」
片付けも粗方終わった。
後は、主人の帰りを待つだけ。
だから、今ぐらい楽しんでも大丈夫よね。
私は、目の前の騎士の魅力的な誘いに乗ることにした。
とは言え、主人の部屋で食事なんて出来ない。私達は、今は誰もいない使用人用の控え室に移動した。
騎士がテーブルに料理を並べてくれている間に、私はヴェイル殿下から習ったお茶を淹れる。
「良い香り!酒が飲めないのが残念だと思ってたけど、このお茶は、料理に凄く合うよ!美味しい!」
「それは、良かったです。おかわりは、遠慮なく言って下さいね。」
「うん!」
夜会で出される料理は、どれも美味しくて、話しながら食べていたら、いつの間にか完食していた。
「ああー!美味しかった!これで夜勤も乗り越えられるよ!付き合ってくれて、ありがとう。」
「いえ、こちらこそ、ありがとうございました。」
「でさ...、その、よ、良かったら、なんだけど...。」
騎士が、何かを話そうとした時、廊下の方から言い争うような、ざわざわした声が聞こえた。
「何だろう?ちょっと見てくるから、君はそこに居て。」
そう言って、騎士は警戒しながら、扉に近付いていく。すると、勢いよく扉が開いて、人が入ってきた。
「え?サウザリンドの王弟殿下?」
ポカンとしている騎士を、ヴェイル殿下が睨みつける。そしてすぐ、彼のその鋭い瞳が、私を捉えた。
「なぜ、夜会に来なかった?」
いつもより低い声が、私の耳に届く。けれど、あまりの迫力に、私の喉が張り付いて、上手く声を出すことが出来なかった。
220
あなたにおすすめの小説
幸せな番が微笑みながら願うこと
矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。
まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。
だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。
竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。
※設定はゆるいです。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
おばあちゃんの秘密
波間柏
恋愛
大好きなおばあちゃんと突然の別れ。
小林 ゆい(18)は、私がいなくなったら貰って欲しいと言われていたおばあちゃんの真珠の髪飾りをつけた事により、もう1つの世界を知る。
王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える
たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー
その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。
そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる