71 / 163
2-22
しおりを挟む
「キャロライン様...。」
「ふふ、お馬鹿さんね。廊下に血の跡を残すなんて。折角の隠匿の魔法が台無しよ。」
暗くて、よく下を見ていなかった。
私は、なんて愚かなミスを...。
「さて、どうしてやろうかしら?」
キャロライン様が、私の下へゆっくり近づいてくる。月の光が差し込む窓に近付くにつれ、憎悪に歪ませたキャロライン様の顔がはっきりと見えた。
「キャロライン様、ニルセン様は助けて下さい。お願いします。」
「わたくしに願うなら、まず、膝を突きなさいな。」
真っ赤な唇の端を引き上げたキャロライン様の前に、私は跪く。
せめてニルセン様だけでも、逃げられるように。
「ふふ、そうよ...、そうなのよ。アハハ!貴女は、床がお似合なの!そのままずっと這いつくばっていればよかったのよ!欲をかいて、わたくしのヴェイル殿下に手を伸ばすから!」
急に激昂したキャロライン様が、何度も床を強く踏みつけた。
「やめな、さい、バルガンデイル公爵令嬢。ああ、もう、元公爵令嬢ですかね。今頃は、団長が、バルガンデイル公爵家を完膚なきまでに叩き潰しているはずですから。悪足掻きはやめて投降しなさい。でなければ、貴女、ここで死よりも酷い報復を受けますよ。」
「煩いわよ!わたくしはね、いつまでも番が見つからない可哀想な殿下に寄り添ってあげていたの!あの美しい方の隣は、わたくしこそ相応しいの!」
私から視線を外したキャロライン様は、スカートのスリットから短剣を引き抜くと、ニルセン様にその刃先を向けた。
「はあ、まったく貴方もバカね。ヴェイル殿下は、国の混乱を何より嫌う方よ?そんな方が、長年王家に尽くしてきたバルガンデイル家を切り捨てるわけないでしょう。きっと苦言を呈したお父様によって、自分の立場を理解したはずよ。その内、ヴェイル殿下自ら、わたくしに頭を下げに来るはずよ。」
「...なんて、愚かな。お花畑の頭もここまでいくと病気ですね。」
「なんですって!?死に損ないのくせに生意気ね!いつまでこのゴミのナイト気取りでいるのかしら?まあ、いいわ。貴方もこのゴミと一緒に殺してあげる。その傷じゃ、放っておいても死ぬだろうけど、折角だから苦痛に歪んだ顔も見たいしね。アハハ!」
キャロライン様は楽しそうに笑い声を上げて、ニルセン様に向かって行く。
私は、そのドレスの裾に、両手を回してしがみついた。
「何するのよ!」
「ニルセン様に手は出させません!絶対に守ります!」
私は、体勢を崩したキャロライン様の腕に手を伸ばした。
「ふふ、お馬鹿さんね。廊下に血の跡を残すなんて。折角の隠匿の魔法が台無しよ。」
暗くて、よく下を見ていなかった。
私は、なんて愚かなミスを...。
「さて、どうしてやろうかしら?」
キャロライン様が、私の下へゆっくり近づいてくる。月の光が差し込む窓に近付くにつれ、憎悪に歪ませたキャロライン様の顔がはっきりと見えた。
「キャロライン様、ニルセン様は助けて下さい。お願いします。」
「わたくしに願うなら、まず、膝を突きなさいな。」
真っ赤な唇の端を引き上げたキャロライン様の前に、私は跪く。
せめてニルセン様だけでも、逃げられるように。
「ふふ、そうよ...、そうなのよ。アハハ!貴女は、床がお似合なの!そのままずっと這いつくばっていればよかったのよ!欲をかいて、わたくしのヴェイル殿下に手を伸ばすから!」
急に激昂したキャロライン様が、何度も床を強く踏みつけた。
「やめな、さい、バルガンデイル公爵令嬢。ああ、もう、元公爵令嬢ですかね。今頃は、団長が、バルガンデイル公爵家を完膚なきまでに叩き潰しているはずですから。悪足掻きはやめて投降しなさい。でなければ、貴女、ここで死よりも酷い報復を受けますよ。」
「煩いわよ!わたくしはね、いつまでも番が見つからない可哀想な殿下に寄り添ってあげていたの!あの美しい方の隣は、わたくしこそ相応しいの!」
私から視線を外したキャロライン様は、スカートのスリットから短剣を引き抜くと、ニルセン様にその刃先を向けた。
「はあ、まったく貴方もバカね。ヴェイル殿下は、国の混乱を何より嫌う方よ?そんな方が、長年王家に尽くしてきたバルガンデイル家を切り捨てるわけないでしょう。きっと苦言を呈したお父様によって、自分の立場を理解したはずよ。その内、ヴェイル殿下自ら、わたくしに頭を下げに来るはずよ。」
「...なんて、愚かな。お花畑の頭もここまでいくと病気ですね。」
「なんですって!?死に損ないのくせに生意気ね!いつまでこのゴミのナイト気取りでいるのかしら?まあ、いいわ。貴方もこのゴミと一緒に殺してあげる。その傷じゃ、放っておいても死ぬだろうけど、折角だから苦痛に歪んだ顔も見たいしね。アハハ!」
キャロライン様は楽しそうに笑い声を上げて、ニルセン様に向かって行く。
私は、そのドレスの裾に、両手を回してしがみついた。
「何するのよ!」
「ニルセン様に手は出させません!絶対に守ります!」
私は、体勢を崩したキャロライン様の腕に手を伸ばした。
162
あなたにおすすめの小説
幸せな番が微笑みながら願うこと
矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。
まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。
だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。
竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。
※設定はゆるいです。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
どうかこの偽りがいつまでも続きますように…
矢野りと
恋愛
ある日突然『魅了』の罪で捕らえられてしまった。でも誤解はすぐに解けるはずと思っていた、だって私は魅了なんて使っていないのだから…。
それなのに真実は闇に葬り去られ、残ったのは周囲からの冷たい眼差しだけ。
もう誰も私を信じてはくれない。
昨日までは『絶対に君を信じている』と言っていた婚約者さえも憎悪を向けてくる。
まるで人が変わったかのように…。
*設定はゆるいです。
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
『完結』番に捧げる愛の詩
灰銀猫
恋愛
番至上主義の獣人ラヴィと、無残に終わった初恋を引きずる人族のルジェク。
ルジェクを番と認識し、日々愛を乞うラヴィに、ルジェクの答えは常に「否」だった。
そんなルジェクはある日、血を吐き倒れてしまう。
番を失えば狂死か衰弱死する運命の獣人の少女と、余命僅かな人族の、短い恋のお話。
以前書いた物で完結済み、3万文字未満の短編です。
ハッピーエンドではありませんので、苦手な方はお控えください。
これまでの作風とは違います。
他サイトでも掲載しています。
【受賞&書籍化】先視の王女の謀(さきみのおうじょのはかりごと)
神宮寺 あおい
恋愛
謎解き×恋愛
女神の愛し子は神託の謎を解き明かす。
月の女神に愛された国、フォルトゥーナの第二王女ディアナ。
ある日ディアナは女神の神託により隣国のウィクトル帝国皇帝イーサンの元へ嫁ぐことになった。
そして閉鎖的と言われるくらい国外との交流のないフォルトゥーナからウィクトル帝国へ行ってみれば、イーサンは男爵令嬢のフィリアを溺愛している。
さらにディアナは仮初の皇后であり、いずれ離縁してフィリアを皇后にすると言い出す始末。
味方の少ない中ディアナは女神の神託にそって行動を起こすが、それにより事態は思わぬ方向に転がっていく。
誰が敵で誰が味方なのか。
そして白日の下に晒された事実を前に、ディアナの取った行動はーー。
カクヨムコンテスト10 ファンタジー恋愛部門 特別賞受賞。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる