平凡な私が選ばれるはずがない

ハルイロ

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「キャロライン様...。」

「ふふ、お馬鹿さんね。廊下に血の跡を残すなんて。折角の隠匿の魔法が台無しよ。」


暗くて、よく下を見ていなかった。
私は、なんて愚かなミスを...。


「さて、どうしてやろうかしら?」
キャロライン様が、私の下へゆっくり近づいてくる。月の光が差し込む窓に近付くにつれ、憎悪に歪ませたキャロライン様の顔がはっきりと見えた。


「キャロライン様、ニルセン様は助けて下さい。お願いします。」

「わたくしに願うなら、まず、膝を突きなさいな。」
真っ赤な唇の端を引き上げたキャロライン様の前に、私は跪く。
せめてニルセン様だけでも、逃げられるように。


「ふふ、そうよ...、そうなのよ。アハハ!貴女は、床がお似合なの!そのままずっと這いつくばっていればよかったのよ!欲をかいて、わたくしのヴェイル殿下に手を伸ばすから!」

急に激昂したキャロライン様が、何度も床を強く踏みつけた。



「やめな、さい、バルガンデイル公爵令嬢。ああ、もう、元公爵令嬢ですかね。今頃は、団長が、バルガンデイル公爵家を完膚なきまでに叩き潰しているはずですから。悪足掻きはやめて投降しなさい。でなければ、貴女、ここで死よりも酷い報復を受けますよ。」

「煩いわよ!わたくしはね、いつまでも番が見つからない可哀想な殿下に寄り添ってあげていたの!あの美しい方の隣は、わたくしこそ相応しいの!」

私から視線を外したキャロライン様は、スカートのスリットから短剣を引き抜くと、ニルセン様にその刃先を向けた。

「はあ、まったく貴方もバカね。ヴェイル殿下は、国の混乱を何より嫌う方よ?そんな方が、長年王家に尽くしてきたバルガンデイル家を切り捨てるわけないでしょう。きっと苦言を呈したお父様によって、自分の立場を理解したはずよ。その内、ヴェイル殿下自ら、わたくしに頭を下げに来るはずよ。」

「...なんて、愚かな。お花畑の頭もここまでいくと病気ですね。」

「なんですって!?死に損ないのくせに生意気ね!いつまでこのゴミのナイト気取りでいるのかしら?まあ、いいわ。貴方もこのゴミと一緒に殺してあげる。その傷じゃ、放っておいても死ぬだろうけど、折角だから苦痛に歪んだ顔も見たいしね。アハハ!」

キャロライン様は楽しそうに笑い声を上げて、ニルセン様に向かって行く。
私は、そのドレスの裾に、両手を回してしがみついた。

「何するのよ!」

「ニルセン様に手は出させません!絶対に守ります!」
私は、体勢を崩したキャロライン様の腕に手を伸ばした。





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