平凡な私が選ばれるはずがない

ハルイロ

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*ヴェイル視点 24

「ヴェイル殿下…。」
キャロラインは折れた腕を庇うことなく、幽鬼のようなボロボロの姿で、こちらを睨んでいる。そして、炎の檻に手を掛けると、大声で笑い出した。


「アハハハ!王族のくせに、人間の侍女を大切に囲っているなんて!アハハ!その女、末端貴族の養女なのでしょう?そんな下級民、誰が認めるものですか!国民だって受け入れないわよ!きっと、高潔なヴェイル殿下を堕落させた悪女として、どこへ行っても嫌悪されるでしょうね!」

「黙れ!」

「黙らないわ!だって、そうでしょう?異能者のヴェイル殿下には、いずれ番様が現れる。そうなれば殿下も、先代陛下のように番様しか目に入らなくなるわ。つまり、その女は捨てられるの。獣人全員を敵に回したままね!アハハハ、その日が楽しみだわ!」

「煩い!黙れと言っただろう!」
昂った俺の感情が、無意識にキャロラインを拘束している炎を燃え上がらせた。その炎がキャロラインの手足に燃え移る。


「キャアアアーー!」

女の甲高い悲鳴に血の匂いが混じり、母上と過ごした苦しい日々が蘇る。それが、俺に酷い吐き気を誘った。
思わず、唇を強く噛み締め顔を背けると、俺の背に小さな手が触れた。大丈夫だと、慰める優しい声と共に。


ありがとう、ステラ。
そして、すまない。
貴女を傷付けてばかりの俺を、どうか、赦さないでくれ。
こうしなければ貴女を守れない俺を、恨んでくれ。



「…、番だ。」


「は?え?」

「殿下、今…、何と?」

「今、殿下は何を?」

動揺した貴族達が、口々に疑問の声を漏らす。

俺はその声を無視して、俺の腕の中で、真っ直ぐにこちらを見上げているステラと目を合わせた。




「ステラ・バレリーは、俺の運命の番だ。」



俺は、ステラの緑青色の瞳を見つめたまま、ゆっくりと言葉を紡いだ。
見開かれた彼女の瞳が、潤みを増し揺れ動く。そして、そこから一筋の涙がこぼれ落ちた。


「ステラ、俺の事は赦さなくていい。貴女を絶望に突き落とした俺を恨んでいいんだ。俺は、その全てを受け入れるから。だから、どうか、俺に貴女が幸せになる手伝いをさせてくれ。何でもする。俺の全てを賭けて。」

「わ、私は、だって、私じゃ…。なんで、どうして…。」
拭っても拭っても流れ落ちるステラの涙に、俺の胸が締め付けられる。俺は泣きじゃくるステラを強く抱きしめ、その姿をマントで隠した。

その時、エントランスの大扉が激しい音を立てて倒れた。
そしてすぐに、剣を携えた部下の騎士達が突入してくる。彼らは、床に転がる傭兵を手際良く拘束していった。

すると、その中に堂々と佇む兄上の姿を見つけた。
兄上は、鋭い視線を俺に向けていた。




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