平凡な私が選ばれるはずがない

ハルイロ

文字の大きさ
116 / 163

3-24

「ステラは、どちらの国のドレスが着たいの?」

「そうだな。ステラの好みだと、どうなんだ?」

ヴェイル様と姫様が、身を乗り出して私に迫ってきた。隣に座るヴェイル様なんて、私の肩に前足を乗せて、触れる寸前まで顔を寄せている。


「で、でも、あの…。結婚は、どうなるか、まだ分かりませんし…。」
思わず私がそう答えると、不満を露わにしたヴェイル様に咎められた。


「ステラ、俺達は、この先ずっと一緒だと約束しただろう。それとも、貴女は、いつか俺から離れていくつもりなのか?」

「ち、違います。私も、ヴェイル様とずっと一緒にいたいです。でも、私、先のことって、まだよく分からなくて、それで…。」

自分の不安定な未来が、こんなにも怖いと思ったのは初めてだった。
先を思い描くことが、こんなに難しいことだなんて知らなかった。

私は、どうしたらいいの?
結婚って、家族になるって、どういうこと?

不安で、不安で、私はヴェイル様の温かな体温に縋り付いた。そこからは、力強い心音が聞こえる。
その音を聞いていると、自分ではどうする事も出来なかった不安定な気持ちが、次第に落ち着きを取り戻していった。


「俺は、ステラとの未来しか望まない。そこはもう、受け入れるしかないと諦めてくれ。」

ヴェイル様から向けられた言葉は、私の胸を締め付けるほど苦しくて、それでいて甘やかだった。
私は、抱きついたヴェイル様の首元で、一つの頷きを返した。



「フフフ、先ずは、二人でしっかり話し合う必要があるみたいね。でも、私は、その分準備期間が確保出来るわ!二人は、思う存分、イチャイチャしてから結ばれちゃいなさい!」

「ひ、姫、さま…。」
姫様の明け透けな言葉に、私はヴェイル様の首元から顔を上げられなくなってしまった。
そんな私の頭を、ヴェイル様が齧ったので、私は定位置化している右手に巻き付いた尻尾を少しだけ強く握り返した。







日付けが変わる頃、私達は就寝のために、一度解散することになった。
でも、冴えてしまった私の頭は、中々眠りに就いてはくれなかった。


「眠れないのか?」

「す、すみません。起こしてしまいましたか?」

私の寝たふりは、ヴェイル様にバレていたらしい。
ヴェイル様の眠りを邪魔しないように、なるべく動かないように気を付けていたんだけど、通用しなかったみたいだ。

私が使っているベッドから、少し離れたソファで丸くなっていたヴェイル様が、こちらに顔を向けている。


「いや、元々、いつ呼ばれてもいいように、寝るつもりはなかった。獣人は、体力だけはあるからな。一日ぐらい寝なくても全く問題ない。だから、俺は大丈夫だ。でも、ステラは、少しでも寝た方がいい。」

「はい。」

ヴェイル様の言葉に従って、寝返りを打った後、目を瞑る。でも、やっぱり眠気はやって来なかった。

すると、私が横になっているベッドが大きく軋む。そして、背中に温もりを感じた。





あなたにおすすめの小説

幸せな番が微笑みながら願うこと

矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。 まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。 だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。 竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。 ※設定はゆるいです。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

政略結婚の相手に見向きもされません

矢野りと
恋愛
人族の王女と獣人国の国王の政略結婚。 政略結婚と割り切って嫁いできた王女と番と結婚する夢を捨てられない国王はもちろん上手くいくはずもない。 国王は番に巡り合ったら結婚出来るように、王女との婚姻の前に後宮を復活させてしまう。 だが悲しみに暮れる弱い王女はどこにもいなかった! 人族の王女は今日も逞しく獣人国で生きていきます!

どうかこの偽りがいつまでも続きますように…

矢野りと
恋愛
ある日突然『魅了』の罪で捕らえられてしまった。でも誤解はすぐに解けるはずと思っていた、だって私は魅了なんて使っていないのだから…。 それなのに真実は闇に葬り去られ、残ったのは周囲からの冷たい眼差しだけ。 もう誰も私を信じてはくれない。 昨日までは『絶対に君を信じている』と言っていた婚約者さえも憎悪を向けてくる。 まるで人が変わったかのように…。 *設定はゆるいです。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

私、異世界で獣人になりました!

星宮歌
恋愛
 昔から、人とは違うことを自覚していた。  人としておかしいと思えるほどの身体能力。  視力も聴力も嗅覚も、人間とは思えないほどのもの。  早く、早くといつだって体を動かしたくて仕方のない日々。  ただ、だからこそ、私は異端として、家族からも、他の人達からも嫌われていた。  『化け物』という言葉だけが、私を指す呼び名。本当の名前なんて、一度だって呼ばれた記憶はない。  妹が居て、弟が居て……しかし、彼らと私が、まともに話したことは一度もない。  父親や母親という存在は、衣食住さえ与えておけば、後は何もしないで無視すれば良いとでも思ったのか、昔、罵られた記憶以外で話した記憶はない。  どこに行っても、異端を見る目、目、目。孤独で、安らぎなどどこにもないその世界で、私は、ある日、原因不明の病に陥った。 『動きたい、走りたい』  それなのに、皆、安静にするようにとしか言わない。それが、私を拘束する口実でもあったから。 『外に、出たい……』  病院という名の牢獄。どんなにもがいても、そこから抜け出すことは許されない。  私が苦しんでいても、誰も手を差し伸べてはくれない。 『助、けて……』  救いを求めながら、病に侵された体は衰弱して、そのまま……………。 「ほぎゃあ、おぎゃあっ」  目が覚めると、私は、赤子になっていた。しかも……。 「まぁ、可愛らしい豹の獣人ですわねぇ」  聞いたことのないはずの言葉で告げられた内容。  どうやら私は、異世界に転生したらしかった。 以前、片翼シリーズとして書いていたその設定を、ある程度取り入れながら、ちょっと違う世界を書いております。 言うなれば、『新片翼シリーズ』です。 それでは、どうぞ!

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。