130 / 163
*ヴェイル視点 35
「お前が、私の番を狂わせたのか!?」
よろけた体勢を立て直し、俺を突き飛ばした人物を確認すると、エルフ族の異能者が、俺に代わり魔物の王の首を掴み上げていた。
その形相は、あまりにも必死で、悲痛だった。
そして、周りからも似たような声が上がる。
「ハハハハハ!古の大戦で疲弊し、眠りについていた我は、夢を介してお前達を弄んでいたのだ!ハハハハ!狂った番に縋るお前達は、滑稽だったぞ!」
「殺してやる…。私の番を狂わせたお前は、生かしてはおかない。」
「おい!待て!」
異能の力を引き出したエルフに、俺は手を伸ばす。けれど、俺の制止の手は、あと一歩届かず、エルフの短剣が魔物の王の胸に深々と刺さった。
「おい!」
怒りに震えるエルフを引き剥がし、魔物の王の体を確認すると、グチャリと不快な音を立てて、ヤツの体が地面に崩れ落ちた。そして、その体が、影の中に溶けていく。
「クソッ!ステラを返せ!」
魔物の王の体を追いかけて、沼のような影の中に、俺の腕を突き入れる。すると、指先に何かが触れた。覚えのある感触のそれを掴んで、一気に引き上げる。
影に塗れても目を引く赤に、俺は安堵の息を吐き出した。
「ステラ、大丈夫か!?ああ、良かった!」
影から引き上げたステラは、その場に俯いたまま座り込んでいる。けれど、覗き込んだステラの口からは、しっかりとした呼吸を感じ取れた。
「ステラ、もう大丈夫だ。一度、神殿に戻ろう。」
ステラに向かって両腕を伸ばすと、突然、彼女がクスクスと笑い始めた。
その愛らしい声が、ヤツの声と重なって俺の耳に届いた。
「アハハハ!ハハハハハハ!どうだ?我が分かるか?ああ、愉快、愉快。」
ステラの口が、ヤツの言葉を発し、ステラの手が、ステラの体を確かめるように触れ回る。
その光景を茫然と見つめていると、満面の笑みを浮かべて、ステラの姿をした魔物の王が俺に抱きついてきた。
「敵である我に愛する番の体を乗っ取られた感想を教えてくれ!ハハハハ、今、お前はどんな気分なのだ?」
「…やめろ。たのむ…。」
どうしたらいい?
どうしたら…。
心底楽しそうに、残酷な言葉を告げる魔物の王に、俺の心が悲鳴を上げる。
絶望感に支配され、俺の足から力が抜けたその時、ステラの体が、光の鎖に巻き取られた。
「しっかりしなさい、このヘタレ!貴方が、ステラを諦めてどうするのよ!フェイ!私がステラを浄化するから、そのまま押さえていて!」
「分かった。」
フェーイレーン殿がステラの体を拘束し、巫女が浄化をかける。
しかし、ステラの体から感じる魔に揺らぎは見えない。それでも巫女は、浄化魔法を掛け続けた。
ふと殺気を感じ、一歩前に出ると、風を纏った短剣が飛んできた。俺は、短剣を弾き、それを飛ばしてきたエルフに剣を向けた。
「やめろ!ステラを傷付けるな!!」
「今、それは、魔物だ。可哀想だが、世界のため。彼女には、魔物の王と共に死んでもらう。」
「ふざけるな!貴方は、ただ、番の復讐をしたいだけだろう!俺達の邪魔をするな!」
「邪魔なのは、お前だ、黒豹族の王子。現実を見ろ。お前は、番を守れなかった罪を背負って、魔物の王を討つしかないんだよ。」
エルフに続いて、鳥人族の異能者まで、ステラに殺意を向けてきた。しかも、他の異能者達も、ステラごと魔物の王を殺そうと、その異能を研ぎ澄ませ始めた。
よろけた体勢を立て直し、俺を突き飛ばした人物を確認すると、エルフ族の異能者が、俺に代わり魔物の王の首を掴み上げていた。
その形相は、あまりにも必死で、悲痛だった。
そして、周りからも似たような声が上がる。
「ハハハハハ!古の大戦で疲弊し、眠りについていた我は、夢を介してお前達を弄んでいたのだ!ハハハハ!狂った番に縋るお前達は、滑稽だったぞ!」
「殺してやる…。私の番を狂わせたお前は、生かしてはおかない。」
「おい!待て!」
異能の力を引き出したエルフに、俺は手を伸ばす。けれど、俺の制止の手は、あと一歩届かず、エルフの短剣が魔物の王の胸に深々と刺さった。
「おい!」
怒りに震えるエルフを引き剥がし、魔物の王の体を確認すると、グチャリと不快な音を立てて、ヤツの体が地面に崩れ落ちた。そして、その体が、影の中に溶けていく。
「クソッ!ステラを返せ!」
魔物の王の体を追いかけて、沼のような影の中に、俺の腕を突き入れる。すると、指先に何かが触れた。覚えのある感触のそれを掴んで、一気に引き上げる。
影に塗れても目を引く赤に、俺は安堵の息を吐き出した。
「ステラ、大丈夫か!?ああ、良かった!」
影から引き上げたステラは、その場に俯いたまま座り込んでいる。けれど、覗き込んだステラの口からは、しっかりとした呼吸を感じ取れた。
「ステラ、もう大丈夫だ。一度、神殿に戻ろう。」
ステラに向かって両腕を伸ばすと、突然、彼女がクスクスと笑い始めた。
その愛らしい声が、ヤツの声と重なって俺の耳に届いた。
「アハハハ!ハハハハハハ!どうだ?我が分かるか?ああ、愉快、愉快。」
ステラの口が、ヤツの言葉を発し、ステラの手が、ステラの体を確かめるように触れ回る。
その光景を茫然と見つめていると、満面の笑みを浮かべて、ステラの姿をした魔物の王が俺に抱きついてきた。
「敵である我に愛する番の体を乗っ取られた感想を教えてくれ!ハハハハ、今、お前はどんな気分なのだ?」
「…やめろ。たのむ…。」
どうしたらいい?
どうしたら…。
心底楽しそうに、残酷な言葉を告げる魔物の王に、俺の心が悲鳴を上げる。
絶望感に支配され、俺の足から力が抜けたその時、ステラの体が、光の鎖に巻き取られた。
「しっかりしなさい、このヘタレ!貴方が、ステラを諦めてどうするのよ!フェイ!私がステラを浄化するから、そのまま押さえていて!」
「分かった。」
フェーイレーン殿がステラの体を拘束し、巫女が浄化をかける。
しかし、ステラの体から感じる魔に揺らぎは見えない。それでも巫女は、浄化魔法を掛け続けた。
ふと殺気を感じ、一歩前に出ると、風を纏った短剣が飛んできた。俺は、短剣を弾き、それを飛ばしてきたエルフに剣を向けた。
「やめろ!ステラを傷付けるな!!」
「今、それは、魔物だ。可哀想だが、世界のため。彼女には、魔物の王と共に死んでもらう。」
「ふざけるな!貴方は、ただ、番の復讐をしたいだけだろう!俺達の邪魔をするな!」
「邪魔なのは、お前だ、黒豹族の王子。現実を見ろ。お前は、番を守れなかった罪を背負って、魔物の王を討つしかないんだよ。」
エルフに続いて、鳥人族の異能者まで、ステラに殺意を向けてきた。しかも、他の異能者達も、ステラごと魔物の王を殺そうと、その異能を研ぎ澄ませ始めた。
あなたにおすすめの小説
幸せな番が微笑みながら願うこと
矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。
まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。
だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。
竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。
※設定はゆるいです。
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
政略結婚の相手に見向きもされません
矢野りと
恋愛
人族の王女と獣人国の国王の政略結婚。
政略結婚と割り切って嫁いできた王女と番と結婚する夢を捨てられない国王はもちろん上手くいくはずもない。
国王は番に巡り合ったら結婚出来るように、王女との婚姻の前に後宮を復活させてしまう。
だが悲しみに暮れる弱い王女はどこにもいなかった! 人族の王女は今日も逞しく獣人国で生きていきます!
どうかこの偽りがいつまでも続きますように…
矢野りと
恋愛
ある日突然『魅了』の罪で捕らえられてしまった。でも誤解はすぐに解けるはずと思っていた、だって私は魅了なんて使っていないのだから…。
それなのに真実は闇に葬り去られ、残ったのは周囲からの冷たい眼差しだけ。
もう誰も私を信じてはくれない。
昨日までは『絶対に君を信じている』と言っていた婚約者さえも憎悪を向けてくる。
まるで人が変わったかのように…。
*設定はゆるいです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
私、異世界で獣人になりました!
星宮歌
恋愛
昔から、人とは違うことを自覚していた。
人としておかしいと思えるほどの身体能力。
視力も聴力も嗅覚も、人間とは思えないほどのもの。
早く、早くといつだって体を動かしたくて仕方のない日々。
ただ、だからこそ、私は異端として、家族からも、他の人達からも嫌われていた。
『化け物』という言葉だけが、私を指す呼び名。本当の名前なんて、一度だって呼ばれた記憶はない。
妹が居て、弟が居て……しかし、彼らと私が、まともに話したことは一度もない。
父親や母親という存在は、衣食住さえ与えておけば、後は何もしないで無視すれば良いとでも思ったのか、昔、罵られた記憶以外で話した記憶はない。
どこに行っても、異端を見る目、目、目。孤独で、安らぎなどどこにもないその世界で、私は、ある日、原因不明の病に陥った。
『動きたい、走りたい』
それなのに、皆、安静にするようにとしか言わない。それが、私を拘束する口実でもあったから。
『外に、出たい……』
病院という名の牢獄。どんなにもがいても、そこから抜け出すことは許されない。
私が苦しんでいても、誰も手を差し伸べてはくれない。
『助、けて……』
救いを求めながら、病に侵された体は衰弱して、そのまま……………。
「ほぎゃあ、おぎゃあっ」
目が覚めると、私は、赤子になっていた。しかも……。
「まぁ、可愛らしい豹の獣人ですわねぇ」
聞いたことのないはずの言葉で告げられた内容。
どうやら私は、異世界に転生したらしかった。
以前、片翼シリーズとして書いていたその設定を、ある程度取り入れながら、ちょっと違う世界を書いております。
言うなれば、『新片翼シリーズ』です。
それでは、どうぞ!
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました!
※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)
狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。
突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。
だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。
そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。
共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?
自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。