平凡な私が選ばれるはずがない

ハルイロ

文字の大きさ
131 / 163

*ヴェイル視点 36

しおりを挟む
「やめないか!仲間割れをしている場合ではないだろう!」

俺達が睨み合っていると、樹人族の異能者リアーナ殿が止めに入った。


「止めるな、リアーナ殿。どう見ても、魔物の王は、あの体に慣れていない。今が、アイツを仕留める好機なんだ!」

「少し冷静になれ、バレイン。彼女は、ヴェイルの番なのだぞ?神の慈悲たる番を殺す気か?どの種族よりも神への信仰心が強い鳥人族のそなたが?」

「クゥッ…。」
リアーナ殿の諭すような言葉に、鳥人族の異能者が反論をやめ考え込む。
その僅かな隙を抜けて、エルフがステラに迫った。


「クソッ!しつこい!」
駆けるエルフの背に、俺は拘束魔法を放つ。しかし、俺の魔法が届く直前、エルフの体が地面に崩れ落ちた。エルフは地面に膝を突き、頭を押さえて蹲る。


何があった?
どうして、エルフの異能が消えている?
なぜ、これほど魔力が減っているんだ?

視線を感じ、顔を上げると、光の拘束の中で微笑むステラの瞳が俺を捉えた。


「さあ、始めよう。」
ステラの口が、魔物の王の合図を告げた瞬間、身の毛もよだつ咆哮が、辺りから響き渡った。

俺は、警戒を強め、周囲を見渡す。
グルリと見回した視線が、ある一点の異変に止まった。


「湖が…。」
その場にいる全員の視線が、湖に向く。無色透明だった湖は、中心が渦を巻き、黒く染まっていた。


「さあ、来い、同胞達。本能のまま、殺戮を始めよう。母たる魔の願いのために。」
魔物の王の呼びかけに応え、湖の中心から、三体の大型の魔物が飛び出してきた。
それは、四肢や体の各部分を違う生き物でチグハグに繋ぎ合わせたような酷く不気味な姿をしていた。


「何だ、アレは!?あの魔物、体に複数の核を持っているぞ!?」

「あんな姿の魔物は、見たことがない。」

「どういうことだ?魔力量も尋常じゃないぞ!?」

湖上を飛び交う異様な魔物の姿に、さすがの異能者達も動揺し始める。
それを横目に、俺は以前、ニルセンが言っていた事を思い出していた。


「バルフレア山で、共食いを始めた魔物の成れの果てか。」
俺は、その異様な姿に、ニルセンが言っていた事を思い出していた。

「成れの果てとは、随分と酷いな。お前達と遊びやすいように姿を変えてやったというのに。」

「ステラ…。」
思わず彼女の名前を呟いた俺の下に、魔物の王が、フェーイレーン殿の拘束を解いて、悠然と歩いてきた。
ステラの体は、ここから見る限り、巫女の浄化が効いているようには見えない。


クソッ!どうしたら…。


「お前はまだ、我をステラと呼ぶのか!ハハ、ステラなどという娘は、初めから存在しなかったというのに。」


「そんな事ないわ!ステラはステラよ!私の大切な家族だわ!」

巫女が、息を乱しながら、ステラの行く先を遮った。


「フェイ!もう一度、ステラを押さえて!」

「しかし…。」

異能の行使を躊躇したフェーイレーン殿を、嘲笑しながら魔物の王は告げる。


「無駄だ!無駄だ!我とこの体の相性は、想像以上に良い。見ろ!」

魔物の王は、俺達に見せつけるように、隣に蹲るエルフの肩に手を置いた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸せな番が微笑みながら願うこと

矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。 まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。 だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。 竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。 ※設定はゆるいです。

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

おばあちゃんの秘密

波間柏
恋愛
大好きなおばあちゃんと突然の別れ。 小林 ゆい(18)は、私がいなくなったら貰って欲しいと言われていたおばあちゃんの真珠の髪飾りをつけた事により、もう1つの世界を知る。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

私は、聖女っていう柄じゃない

波間柏
恋愛
夜勤明け、お風呂上がりに愚痴れば床が抜けた。 いや、マンションでそれはない。聖女様とか寒気がはしる呼ばれ方も気になるけど、とりあえず一番の鳥肌の元を消したい。私は、弦も矢もない弓を掴んだ。 20〜番外編としてその後が続きます。気に入って頂けましたら幸いです。 読んで下さり、ありがとうございました(*^^*)

竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える

たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。 そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!

処理中です...