平凡な私が選ばれるはずがない

ハルイロ

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「邪魔をするな!」

ヴェイル様が、私達の周りに集まった影を焼き払う。でも、払っても払っても新たな影が、私達の足に絡みついてきて、行く手を阻み続けた。


「クソッ!クソッ!いい加減にしろ!」

何度も異能の力を使うヴェイル様の顔色が悪い。私は、荒い呼吸を繰り返すヴェイル様にしがみ付いて、彼を止めた。
すると、影はまた、私達の周りに大量の闇を吐き出す。


このままじゃ、ヴェイル様の体がもたない。
ヴェイル様の体もミシャの闇に、侵食され始めていた。彼に触れた所から闇の力が流れてくるのだ。
でも、周りの闇が濃過ぎて、私ではヴェイル様を浄化しきれない。


どうしたらいいの?
ヴェイル様を助けたいのに。
せめて、ヴェイル様だけでも…。

そう考えて、私は頭を振る。


駄目よ。
ずっと一緒にいるって約束したんだから。
自分だけ犠牲になればいいだなんて、以前の私のような考えではいけないのよ。
私達が、みんなが、助かる方法を考えなきゃ!

ヴェイル様の腕の中で、必死に思考を巡らせていると、彼が一際大きな青炎を燃え上がらせた。
青の大火は、空高く上りキラキラと輝く火の粉を散らせる。それが、頭上から光の雨のように大地と私達に降り注いだ。

一気に空気が澄み、私の心臓の痛みも和らぐ。その時ふと、私はある可能性に気付いた。


「ヴェイル様、ミシャの闇を全て浄化しましょう。」

「ステラ、駄目だ!貴女の体は、もう限界だ。このまま、この闇から一度離れるぞ。」

「でも、私達なら…。」



「それは無理だぞ。」

話の途中で突然、ミシャの声が聞こえた。そして、目の前の闇が左右に割れ、地面に広がる影の一部が盛り上がる。その影の中から、所々体が崩れた満身創痍のミシャが、姿を露わにした。


「もう、この闇は、フローラに与えた我の核から離れない。フローラを主人と定めた。フローラは、この地を汚す魔の一部となるのだ!ハハ。」


「そんな事はさせない。俺は、必ずステラを守りきる。彼女を幸せにすると約束したからな。だから、お前達、魔の者には、決してステラは渡さない。」

ヴェイル様は、強く宣言すると、私を抱き抱えたまま、剣を上空へ翳した。そして、ミシャ目掛けて、青炎の刃を斬りつけた。
炎刃をまともに受けたミシャの体から青炎が噴き上がる。その美しい炎の中で、笑顔に狂気を混ぜながら、ミシャは笑い続けていた。自分の死など、どうでもいいと言うかのように。


「いずれまた…、魔、と共に。その日、まで、苦し、め。」

ミシャは、最後に私達へ呪詛を吐き、崩れながら影に溶けていった。






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