平凡な私が選ばれるはずがない

ハルイロ

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「ステラ、ここから離れるから目を瞑っていろ!」
ヴェイル様は、ミシャが消えゆく様を見届けると、私を両腕でしっかりと抱え直した。
けれど、私は、もう一度ヴェイル様を止める。


「駄目です。魔物の王が言った通り、多分この闇は私から離れません。」

「だが、このままでは、ステラの体が耐えきれなくなる。今は何とかして、闇から離れる方法を探そう。大丈夫だ。何とかなる。ステラは、少しでも体力を温存しておいてくれ。」

諭すように話すヴェイル様から一筋の汗が流れ落ちる。彼の顔には、焦りと心配と後悔が滲んでいた。
そんな顔をして欲しくなくて、私はヴェイル様の頬に、黒く固まった手を伸ばした。そして、かろうじて動く指先で彼の汗を拭った。


「ヴェイル様、心配しないで下さい。きっと、大丈夫です。」

「ああ、だから…。」
悔しそうに唇を噛み締めるヴェイル様の口元に、私はそっと手を当てた。そして、笑って口を開く。


「だから、私達でこの闇に立ち向かいましょう。」

「ステラ!駄目だ!そんな事は出来ない。出来ないんだ…。」
ヴェイル様は私をきつく抱きしめ、首元に顔を埋めた。私の提案を全力で拒否するように。彼の熱く荒い吐息が私の首を擽る。


「私達、ずっと一緒にいようって約束しましたよね?私は、その約束を守りたい。だから、こんな所で負けたくないんです。協力して下さい、ヴェイル様。」

「…ステラ、だが!」
ヴェイル様は、苦痛に歪んだ顔を勢いよく上げた。

「大丈夫です!私達は負けません!」
私は、それになるべく明るく応える。只々、大丈夫だと。


「貴女は死ぬつもりはないんだな?これは、生きるための戦いなんだな?」

「はい!」

「俺から離れないと約束出来るか?」

「はい!」

「限界が来たら、浄化の途中でも脱出するぞ?」

「はい!」

「絶対に死ぬな。いいな?」

「はい、必ず!」

感情を抑え、真剣な表情で私を見つめるヴェイル様に、私はしっかりと自分の意志を返した。


「分かった。俺はどうすればいい?」

「ヴェイル様は、私を異能の力で燃やして下さい。」

私の言葉に、ヴェイル様が息を呑む。それでも、私はその先の言葉を続けた。


「ヴェイル様の青炎が私に触れた時、心臓を蝕んでいた魔物の力を燃やしてくれました。ヴェイル様の異能は、番である私を傷付ける事はありません。だから、ヴェイル様には、私の中で成長し続ける魔物の王の核を、私の体ごと青炎で燃やして欲しいんです。私が、この闇を全て浄化出来るように。」

「俺に貴女を攻撃しろと言うのか?」

「攻撃じゃありません。ヴェイル様の力が、私を守るんです。私は、貴方を信じています。だから、私を信じて。」

暫く無言で見つめ合った後、ヴェイル様は覚悟を決めた顔で頷いてくれた。




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