【完結】堅物騎士様は若奥様に溺愛中!

くみ

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 雨は止むどころかますます激しくなっていく。


 エイリスは寒さで震えているティアナを抱き寄せ、暖めてくれる。


 そのぬくもりに不安が少し和らいだけれど、その安堵もいきなり鳴り響いた
轟音によって弾かれた。


「っつ……!!」
 

 ティアナは肩を震わせて両耳を塞いだ。


「近くに落ちたなーティアナ?」


 ティアナの異変に気づいたエイリスが、様子を伺うように顔を覗いてくる。


「もしかして雷が怖いのか?」


 問われてティアナは恥ずかしく思いながらもコクリと頷いた。


 そんなティアナを揶揄うでもなく、エイリスは柔和に笑みを浮かべた。


「俺にしがみついていろ」


「でも……」


 さすがにそれは子供みたいで気後れする。


 今でも呆れられてないか気にしてるのに。


 躊躇している間に、また雷鳴が轟いてティアナは悲鳴を上げてエイリスにし
がみついてしまった。


「最初から素直にそうしてればいい」


 ふっと小さく笑ったエイリスは、ティアナの身体を包み込むようにして抱き
締めてくれる。


 すっぽりとエイリスの大きな体に包まれて、ティアナは落ち着きを取り戻し
ていった。


(暖かい)


 規則正しいエイリスの鼓動に耳を澄ます。


 雷鳴が鳴る度にエイリスは、ティアナの背中を優しく撫でてくれた。


 ようやく雷の音が遠くにいき、雨も上がりはじめ雲の隙間から太陽の光が降
り注ぐ。


「晴れてきたな。そろそろ行こう」


 名残惜しいけれど二人とも雨に濡れて冷えていた。


 馬に乗り帰路に就くと、屋敷の前でニーナが待っていた。


「ティアナ様!」


 ニーナが駆け寄ってきて、ずぶ濡れになったティアナを見て蒼白になる。


「まあまあ、こんなに濡れて。すぐに湯浴みをしましょう。さ、早く中へ」


「え、ええ」


 ニーナに急かされて半ば強引に屋敷に連れて行かれる。


 ティアナは名残惜しげに後ろを振り返った。


「しっかり体を暖めろよ」


「エイリス様も……」


 離れがたい気持ちを抑えてティアナは冷えた体を暖めるため屋敷の中に入っ
た。


 ニーナに手伝ってもらいながら湯浴みをし、暖かい生姜湯を飲む。


 冷え切った体が少し温かくなった。


「無事に戻られて安心しましたわ。賊に襲われたのではないかと心配しており
ました」


「こんな近くに賊がいるわけないわ」


 心配性なニーナにティアナは苦笑する。


「昔はこのあたりにも賊が度々出没してました。エイリス様はじめ騎士の方が
追っ払ってくれましたけれど」


「怖いこと言わないでよ」


「ああ、すみません。でも用心にこしたことはありませんからね。とはいえエ
イリス様が側にいてくだされば安心ですわ」


 エイリスのことを思い浮かべてドキッとする。


「それはそうと、乗馬は思ったより楽しかったようですね」


 ニッコリと笑みを浮かべながら問われ、ティアナは顔を赤くする。


「エイリス様のことたくさん知れて楽しかったわ」


「まあまあ。それはなによりです」


 自分のことのように喜んでくれるニーナにティアナも嬉しくなる。


「疲れたでしょう? 夕食を済ませて早めに床に就きましょう」


「ええ」


 楽しかったけれど慣れないことをして体は疲れていた。


 その夜はぐっすりと眠ったけれど、翌日ティアナはしっかりと風邪を引いて
しまったのだった。


 


 


 
 

 
 
 

 
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