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1章 ※名称未定
第1話
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薄明りに、影が二つ。もう21時を回り、夜空で無数の星がきらめいている。
「ほら、寝る時間ですよ」
穏やかな女性が呼びかけると、小さな子どもは布団から顔を出した。
「 。 、 !」
「えぇ…下が騒がしくて眠れない?」
ジト目で女性を見、子どもは首を大きく振った。
「 !」
「なんだい?」
「 !」
子どもが布団の中から取り出したのは、年季の入った一冊の本だ。くすんだ藍色の表紙に、一つの星が特徴的な本。それだけで、表紙には一言も書かれていない。作者の名だけでなく、題名でさえ。
「本?……あぁ、この本を読んで欲しいのか」
女性は(なるほど)というように子どもから本を受け取ると、パラリ…とページをめくりだした。
「これはこれは懐かしいもんを…」
「 ?」
「あぁ、もちろん読んでやろう。」
パラ…
またページをめくり始める。
「ん”ん…『それは、とある星の、ひどく日の照りつける昼を忘れさせるような、雪がしんしんと降る夜のことでした』」
「 、 」
「ちょっと黙ってなさい、今は読んでるんだから。不満げな顔をしない!後で聞いたげるから…えぇ…『それはそれは美しい女と、屈強で大変気難しそうな男が二人して、ある店を訪れたのはちょうどその日でした』…」
「おやすみなさいの本」は、まだ始まったばかりである。
*
女は雪道をひたすら走り、明かりの灯った店を見つけたのです。辺鄙な土地にある、たった一軒の店。女は迷うことなくその取っ手に手を掛け、力強く扉を開けました。店の扉はギィィ…と嫌な音を立てましたが、彼女は何も気にしていないようでした。
「どなたか…どなたかいらっしゃいませんか!!」
声を張り上げる女に、店主と思われる中年の男は落ち着いた様子で
「おやお嬢ちゃん、どうしたんだい?こんな遅くに」
なんて言うのですから、女は少し狼狽えたようでしたが…
「あの…!とても怖い人が」
「襲い掛かってきたのかい?」
「いえ、そうではなく…」
なかなか本題に入らせてくれないようです。
「とにかく、男性が道端に倒れてらしたの!でも、私では運ぶこともできなくて…彼は『なにもしなくていい』の一点張りなのだけれど」
「なら放っておけばいいだろう?」
「えぇ…?この吹雪の中ですよ?」
「本人が何もしなくていいと、そう言うなら問題なかろう?」
「でも…!血を流して一晩だなんて、それを放っておくだなんて無理な話でしょう?」
「そうかい、血を…」
「そうです、血!あの、一応医学を少々嗜んでおりまして応急手当をしてはいるのですが、なにせこの吹雪ですし、手持ちでは限界がありまして…!」
女は続けます。
「あの、店主さんとお呼びすればいいのかしら。もしお嫌でなければ…いえ、ほぼ強制なのですが…!どうか、一緒に運んでくださいませんか?こんな話、放っておけば寝覚めも悪いでしょう?」
女は懇願するようにこちらを見て、情に訴えかける魂胆のようでした。まぁ、放っておくのは少し残った良心が痛むというものなので。
「仕方がない…それで?どの辺りだ。案内してみろ」
そう言うと、女は目を輝かせました。
「えぇ!すぐ案内します!!」
*
女が案内したのは、店からそう遠くない雪道の途中でした。先ほどの吹雪はどこへやら、寒々とした空は変わりないものの、人捜しにはいくらかましな天候へと変わったようです。
「この辺りだった気が…」
女の指差す方は雪が一面を覆い尽くしており、人ひとり見えません。雪に埋まってしまったのだろうかと小屋から持ってきたシャベルで雪かきをするものの…
「なんにもないが?…お嬢さん、あんた、さては方向音痴じゃあないだろうな?」
そう言うと、女は焦ったように「そんなことはないはずです…」と力なく言います。なんだか申し訳なくなって(これは彼女も同じかもしれないが)、少しからかいすぎたかと反省し、大人しく女とともに場所を移していきました。
*
そうこうしていると、女は何かを見つけたようで、突然走り出します。
「危ないから走るんじゃないぞ…!」
「はい!すみません、でも…あ、ほら!この布切れは私が彼に…」
そういわれて女の手を見れば小さな布があり、その白い布は真紅で染められていた。
「なら、この周辺にいるか、化け物じみた回復力の持ち主か…ってところか」
そう言うと、女はますます不安そうな顔をした。
「心配です。一刻も早く捜さなくては…」
「…見ず知らずの人間にそこまでするとは。あんた、物好きだなぁ」
皮肉ったはずなのだが、女は嬉しそうに笑うだけだった。
「えぇ、よく言われます。でも、人に優しくするようにと教育されてきましたからね。…あ!」
女の目線を追うと、背丈が高い人影がたしかに見えたものだから、「お、探していた人間か?」なんて。(少しテンションが上がってしまったのはバレていないだろうか)と店主がどぎまぎしているのに気づきもせず、「そうかもしれないです!」と女は安堵の笑みを浮かべました。まだ確証はないのですが。
「行くか」
「はい!」
『あるものがたり』1章—1話 つづく・・・
****************************************
はじめまして、世藍(ぜいりゃん)といいます。
名前に由来等はありませんし、どのように読んでくださっても構いません。
①話が脱線しがち・②書きたいお話(シーン)を優先して書き、その間を埋めるのによく苦労する作者です。よろしくお願いいたします。
今回は初めての投稿なのですが、これからシリーズものを作成する予定です(自己満足)。
この作品はシリーズの一部といいますか、作者が世界観を掴んだり、アイデアを書き留めるためのお試しストーリーです。
そのため、「本編」とされる作品(シリーズ本編)を執筆する際には、全く異なる世界観のこともあれば、現在の構想が一部、あるいはほぼ全て採用することもあるでしょう。
そのため、「お試し」と称される今作では世界観がくるくる変わることもあり得ます。ご了承ください。
今回の『あるものがたり』編は上記のような意図があって作られたものです。
思い付きで書いているため、編集・訂正を繰り返す予定です。
おそらく更新時は会話が多くなると思われますが、順次追加されていくと思われます。
また、容姿についての記述は一切されていませんが、今後追加される予定です。
今回は「この先、主人公となりそうな女性」と「店主さん」しか出てきていませんからね…!
また、今回書いていてナレーション(特に、1つ目の*以降)を主に丁寧語「です」「ます」にすることで書きづらさと表現の難しさを感じましたので、もしかすると次話からは「だ」「である」調でいくかもしれませんね…
その場合、後日1話を修正することになります。
よかったら、今後もお付き合いくださいm(__)m
「ほら、寝る時間ですよ」
穏やかな女性が呼びかけると、小さな子どもは布団から顔を出した。
「 。 、 !」
「えぇ…下が騒がしくて眠れない?」
ジト目で女性を見、子どもは首を大きく振った。
「 !」
「なんだい?」
「 !」
子どもが布団の中から取り出したのは、年季の入った一冊の本だ。くすんだ藍色の表紙に、一つの星が特徴的な本。それだけで、表紙には一言も書かれていない。作者の名だけでなく、題名でさえ。
「本?……あぁ、この本を読んで欲しいのか」
女性は(なるほど)というように子どもから本を受け取ると、パラリ…とページをめくりだした。
「これはこれは懐かしいもんを…」
「 ?」
「あぁ、もちろん読んでやろう。」
パラ…
またページをめくり始める。
「ん”ん…『それは、とある星の、ひどく日の照りつける昼を忘れさせるような、雪がしんしんと降る夜のことでした』」
「 、 」
「ちょっと黙ってなさい、今は読んでるんだから。不満げな顔をしない!後で聞いたげるから…えぇ…『それはそれは美しい女と、屈強で大変気難しそうな男が二人して、ある店を訪れたのはちょうどその日でした』…」
「おやすみなさいの本」は、まだ始まったばかりである。
*
女は雪道をひたすら走り、明かりの灯った店を見つけたのです。辺鄙な土地にある、たった一軒の店。女は迷うことなくその取っ手に手を掛け、力強く扉を開けました。店の扉はギィィ…と嫌な音を立てましたが、彼女は何も気にしていないようでした。
「どなたか…どなたかいらっしゃいませんか!!」
声を張り上げる女に、店主と思われる中年の男は落ち着いた様子で
「おやお嬢ちゃん、どうしたんだい?こんな遅くに」
なんて言うのですから、女は少し狼狽えたようでしたが…
「あの…!とても怖い人が」
「襲い掛かってきたのかい?」
「いえ、そうではなく…」
なかなか本題に入らせてくれないようです。
「とにかく、男性が道端に倒れてらしたの!でも、私では運ぶこともできなくて…彼は『なにもしなくていい』の一点張りなのだけれど」
「なら放っておけばいいだろう?」
「えぇ…?この吹雪の中ですよ?」
「本人が何もしなくていいと、そう言うなら問題なかろう?」
「でも…!血を流して一晩だなんて、それを放っておくだなんて無理な話でしょう?」
「そうかい、血を…」
「そうです、血!あの、一応医学を少々嗜んでおりまして応急手当をしてはいるのですが、なにせこの吹雪ですし、手持ちでは限界がありまして…!」
女は続けます。
「あの、店主さんとお呼びすればいいのかしら。もしお嫌でなければ…いえ、ほぼ強制なのですが…!どうか、一緒に運んでくださいませんか?こんな話、放っておけば寝覚めも悪いでしょう?」
女は懇願するようにこちらを見て、情に訴えかける魂胆のようでした。まぁ、放っておくのは少し残った良心が痛むというものなので。
「仕方がない…それで?どの辺りだ。案内してみろ」
そう言うと、女は目を輝かせました。
「えぇ!すぐ案内します!!」
*
女が案内したのは、店からそう遠くない雪道の途中でした。先ほどの吹雪はどこへやら、寒々とした空は変わりないものの、人捜しにはいくらかましな天候へと変わったようです。
「この辺りだった気が…」
女の指差す方は雪が一面を覆い尽くしており、人ひとり見えません。雪に埋まってしまったのだろうかと小屋から持ってきたシャベルで雪かきをするものの…
「なんにもないが?…お嬢さん、あんた、さては方向音痴じゃあないだろうな?」
そう言うと、女は焦ったように「そんなことはないはずです…」と力なく言います。なんだか申し訳なくなって(これは彼女も同じかもしれないが)、少しからかいすぎたかと反省し、大人しく女とともに場所を移していきました。
*
そうこうしていると、女は何かを見つけたようで、突然走り出します。
「危ないから走るんじゃないぞ…!」
「はい!すみません、でも…あ、ほら!この布切れは私が彼に…」
そういわれて女の手を見れば小さな布があり、その白い布は真紅で染められていた。
「なら、この周辺にいるか、化け物じみた回復力の持ち主か…ってところか」
そう言うと、女はますます不安そうな顔をした。
「心配です。一刻も早く捜さなくては…」
「…見ず知らずの人間にそこまでするとは。あんた、物好きだなぁ」
皮肉ったはずなのだが、女は嬉しそうに笑うだけだった。
「えぇ、よく言われます。でも、人に優しくするようにと教育されてきましたからね。…あ!」
女の目線を追うと、背丈が高い人影がたしかに見えたものだから、「お、探していた人間か?」なんて。(少しテンションが上がってしまったのはバレていないだろうか)と店主がどぎまぎしているのに気づきもせず、「そうかもしれないです!」と女は安堵の笑みを浮かべました。まだ確証はないのですが。
「行くか」
「はい!」
『あるものがたり』1章—1話 つづく・・・
****************************************
はじめまして、世藍(ぜいりゃん)といいます。
名前に由来等はありませんし、どのように読んでくださっても構いません。
①話が脱線しがち・②書きたいお話(シーン)を優先して書き、その間を埋めるのによく苦労する作者です。よろしくお願いいたします。
今回は初めての投稿なのですが、これからシリーズものを作成する予定です(自己満足)。
この作品はシリーズの一部といいますか、作者が世界観を掴んだり、アイデアを書き留めるためのお試しストーリーです。
そのため、「本編」とされる作品(シリーズ本編)を執筆する際には、全く異なる世界観のこともあれば、現在の構想が一部、あるいはほぼ全て採用することもあるでしょう。
そのため、「お試し」と称される今作では世界観がくるくる変わることもあり得ます。ご了承ください。
今回の『あるものがたり』編は上記のような意図があって作られたものです。
思い付きで書いているため、編集・訂正を繰り返す予定です。
おそらく更新時は会話が多くなると思われますが、順次追加されていくと思われます。
また、容姿についての記述は一切されていませんが、今後追加される予定です。
今回は「この先、主人公となりそうな女性」と「店主さん」しか出てきていませんからね…!
また、今回書いていてナレーション(特に、1つ目の*以降)を主に丁寧語「です」「ます」にすることで書きづらさと表現の難しさを感じましたので、もしかすると次話からは「だ」「である」調でいくかもしれませんね…
その場合、後日1話を修正することになります。
よかったら、今後もお付き合いくださいm(__)m
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