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8-1 黒崎の家。
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6月7日、日曜日。午前11時。
黒崎と出会って約一ヶ月が経った。今日は彼のマンションに遊びに行くことになった。中間テストが終わった後から両親からの許しが出た。実は今日は万理も誘われていた。でも、万理の方が遠慮して、また今度という話になった。黒崎のことが怖いのでは無くて、俺と黒崎の仲がいいから邪魔になりそうだと思ったそうだ。そういう心配はいらないのにと言っても遠慮しているから、黒崎の方から気を遣われて、万理ちゃんもどうぞと言って、今度ランチに誘ってもらえた。それは来週になった。3人で行くのは初めてだから楽しみになった。そういうわけで、今日は遊びに行くだけでは無くて、一晩泊まらせてもらうことになった。
さっき黒崎から万理のことを心配されて、俺も気になってきた。俺がやっと打ち解けられたから邪魔になるに違いないというのは万理の本心だったと思う。やっぱり強引に誘おうかと思ったけれども、黒崎の方からはまた今度にしようと言われた。母も同じ意見だったからだ。
ここはマリーズカフェの駐車場だ。いつものように黒崎が迎えに来てくれた後、母の言いつけで、この店でお土産の焼き菓子を買った。黒崎にプレゼントするためだ。甘いものは食べないと言っていたけれど、俺が買ったものは甘さ控えめのクッキーだから、ぜひとも食べてもらいたいと思った。その他にもクラブサンドイッチも買ってきた。これは俺のお気に入りだ。きっと黒崎も気に入ると思った。
車に乗り込んだ後、さっそく黒崎に紙袋の中身を見てもらった。買ってきた物が入っている。気に入ってもらえると嬉しいと思った。そして、黒崎の反応はいいものだったからホッとした。
「万理も来れば良かったのになーーー」
「万理ちゃんにもいいタイミングがある。無理はいけない」
「うん。そうだね」
「俺のことには気を遣うな。お母さんにお礼を言わないといけない」
「いいよ。後でお母さんが電話をかけますって言っていたよ。お菓子を気に入ってもらえるといいけどって言っていたよ。そうだ。レストランの新メニューの話を聞きたいんだった。意外だったよ。黒崎さんも考えるんだね。料理をしないって言っていたからさ」
「ああ。季節限定の時は会社で会議が開かれている」
「流行のメニューで参考になるものはあるかも。藤沢が教えてくれたお店なんだけどね。パンケーキとホットケーキの融合だそうだよ」
「融合だと?どちらも同じものじゃなかったか」
「俺もそう思うよ」
藤沢が教えてくれたお店のホームページをスマホで開いた。黒崎に見てもらいたいのはメニュー表だ。どれもが融合というタイトルがついている。和洋ミックスの料理が多い。その中のパンケーキの写真を見て、黒崎が肩を揺らして笑い始めた。普通のホットケーキの写真が載っていたからだ。どちらかというと、昔からあるホットケーキだと思う。ケーキの真ん中にはチェリーが載せられている。果物が載っているからパンケーキとの融合というのだろうか。それを黒崎に聞くと、そうかもしれないと答えが返ってきた。メニューの説明を読んでみると、彼が言っていたとおりの答えが書いてあった。まるで“なぞなぞ”のようだ。
「黒崎さんが正解だったよ。パンケーキにはおしゃれな果物の飾りがついている。ホットケーキはシンプルな料理。シンプルなホットケーキにパンケーキ風の飾りをつけたらこうなったそうだよ」
「そうか。どうでもいい話だ。いや、悪い言い方だった。訂正する。斬新な料理だ」
黒崎の笑いが止まらなくなっている。藤沢から教えてもらって良かったと思った。きっと黒崎さんが笑うと思うよと言っていたとおりだった。もしかすると知り合いだろうか。この間は初対面だと思っていた。黒崎に聞くと、首をかしげていた。初対面のはずだと言っている。
「藤沢修輔君か。モデルをしているのか」
「うん。プラセルっていうブランドの広告に出ていたよ。お母さんがプラセルの系列のショップでデザイナーをしているんだ。かっこいい子だよ」
「そうか。プラセルか。写真はあるのか?」
「あるよ。ネットの記事に出ていたんだ。これだよ」
スマホの画面を黒崎に見せた。そこで黒崎が何かを思い出したように笑った。一度会ったことがあるそうだ。プラセルには、黒崎の親戚が勤務しているそうだ。レストランとのタイアップ広告を打つときに、撮影スタジオに足を運んだそうで、その撮影現場に藤沢がいたそうだ。
藤沢は同じ年に見えないぐらいに落ち着いている。私服姿のときは年上に見える。本人が言うには、よく言われるそうだ。私服姿の時は20代に見えている。でも、学生服を着ると同い年に見えるから不思議だ。着る服で自分のイメージが変わると言っていた。それを黒崎に話すと納得していた。ちょうど撮影現場でその話で盛り上がったそうだ。
「もっと大人に見えた。この間は学生服を着ていたから分からなかった」
「そうなんだね。世間は狭いね~」
「夏樹。お前も私服姿が大人に見える」
「そうかな。初めてだね。学校の送迎以外で車に乗るのは」
「怪我の治り具合がよくて良かった」
「ありがとう」
左手に巻いている包帯を眺めた。もうすっかり良くなっている。捻挫した場所にも痛みが起こらなくなっている。こうして黒崎と話している間も、怪我のことを忘れているときがあるぐらいだ。お医者さんが言うには、左手の小指下から手首にかけて、6センチぐらいの傷跡が残るそうだ。でも、薄い傷跡だ。何年か経ったら消えると思う。
黒崎と出会って約一ヶ月が経った。今日は彼のマンションに遊びに行くことになった。中間テストが終わった後から両親からの許しが出た。実は今日は万理も誘われていた。でも、万理の方が遠慮して、また今度という話になった。黒崎のことが怖いのでは無くて、俺と黒崎の仲がいいから邪魔になりそうだと思ったそうだ。そういう心配はいらないのにと言っても遠慮しているから、黒崎の方から気を遣われて、万理ちゃんもどうぞと言って、今度ランチに誘ってもらえた。それは来週になった。3人で行くのは初めてだから楽しみになった。そういうわけで、今日は遊びに行くだけでは無くて、一晩泊まらせてもらうことになった。
さっき黒崎から万理のことを心配されて、俺も気になってきた。俺がやっと打ち解けられたから邪魔になるに違いないというのは万理の本心だったと思う。やっぱり強引に誘おうかと思ったけれども、黒崎の方からはまた今度にしようと言われた。母も同じ意見だったからだ。
ここはマリーズカフェの駐車場だ。いつものように黒崎が迎えに来てくれた後、母の言いつけで、この店でお土産の焼き菓子を買った。黒崎にプレゼントするためだ。甘いものは食べないと言っていたけれど、俺が買ったものは甘さ控えめのクッキーだから、ぜひとも食べてもらいたいと思った。その他にもクラブサンドイッチも買ってきた。これは俺のお気に入りだ。きっと黒崎も気に入ると思った。
車に乗り込んだ後、さっそく黒崎に紙袋の中身を見てもらった。買ってきた物が入っている。気に入ってもらえると嬉しいと思った。そして、黒崎の反応はいいものだったからホッとした。
「万理も来れば良かったのになーーー」
「万理ちゃんにもいいタイミングがある。無理はいけない」
「うん。そうだね」
「俺のことには気を遣うな。お母さんにお礼を言わないといけない」
「いいよ。後でお母さんが電話をかけますって言っていたよ。お菓子を気に入ってもらえるといいけどって言っていたよ。そうだ。レストランの新メニューの話を聞きたいんだった。意外だったよ。黒崎さんも考えるんだね。料理をしないって言っていたからさ」
「ああ。季節限定の時は会社で会議が開かれている」
「流行のメニューで参考になるものはあるかも。藤沢が教えてくれたお店なんだけどね。パンケーキとホットケーキの融合だそうだよ」
「融合だと?どちらも同じものじゃなかったか」
「俺もそう思うよ」
藤沢が教えてくれたお店のホームページをスマホで開いた。黒崎に見てもらいたいのはメニュー表だ。どれもが融合というタイトルがついている。和洋ミックスの料理が多い。その中のパンケーキの写真を見て、黒崎が肩を揺らして笑い始めた。普通のホットケーキの写真が載っていたからだ。どちらかというと、昔からあるホットケーキだと思う。ケーキの真ん中にはチェリーが載せられている。果物が載っているからパンケーキとの融合というのだろうか。それを黒崎に聞くと、そうかもしれないと答えが返ってきた。メニューの説明を読んでみると、彼が言っていたとおりの答えが書いてあった。まるで“なぞなぞ”のようだ。
「黒崎さんが正解だったよ。パンケーキにはおしゃれな果物の飾りがついている。ホットケーキはシンプルな料理。シンプルなホットケーキにパンケーキ風の飾りをつけたらこうなったそうだよ」
「そうか。どうでもいい話だ。いや、悪い言い方だった。訂正する。斬新な料理だ」
黒崎の笑いが止まらなくなっている。藤沢から教えてもらって良かったと思った。きっと黒崎さんが笑うと思うよと言っていたとおりだった。もしかすると知り合いだろうか。この間は初対面だと思っていた。黒崎に聞くと、首をかしげていた。初対面のはずだと言っている。
「藤沢修輔君か。モデルをしているのか」
「うん。プラセルっていうブランドの広告に出ていたよ。お母さんがプラセルの系列のショップでデザイナーをしているんだ。かっこいい子だよ」
「そうか。プラセルか。写真はあるのか?」
「あるよ。ネットの記事に出ていたんだ。これだよ」
スマホの画面を黒崎に見せた。そこで黒崎が何かを思い出したように笑った。一度会ったことがあるそうだ。プラセルには、黒崎の親戚が勤務しているそうだ。レストランとのタイアップ広告を打つときに、撮影スタジオに足を運んだそうで、その撮影現場に藤沢がいたそうだ。
藤沢は同じ年に見えないぐらいに落ち着いている。私服姿のときは年上に見える。本人が言うには、よく言われるそうだ。私服姿の時は20代に見えている。でも、学生服を着ると同い年に見えるから不思議だ。着る服で自分のイメージが変わると言っていた。それを黒崎に話すと納得していた。ちょうど撮影現場でその話で盛り上がったそうだ。
「もっと大人に見えた。この間は学生服を着ていたから分からなかった」
「そうなんだね。世間は狭いね~」
「夏樹。お前も私服姿が大人に見える」
「そうかな。初めてだね。学校の送迎以外で車に乗るのは」
「怪我の治り具合がよくて良かった」
「ありがとう」
左手に巻いている包帯を眺めた。もうすっかり良くなっている。捻挫した場所にも痛みが起こらなくなっている。こうして黒崎と話している間も、怪我のことを忘れているときがあるぐらいだ。お医者さんが言うには、左手の小指下から手首にかけて、6センチぐらいの傷跡が残るそうだ。でも、薄い傷跡だ。何年か経ったら消えると思う。
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