恋人はメリーゴーランド少年だった。

夏目奈緖

文字の大きさ
82 / 152

10-10

しおりを挟む
 5分後ぐらい経った頃のことだ。何度か襲ってきた雷の光と音に耐えているうちに、だんだんと雷が遠くなっていった。黒崎からは呆れられてしまった。俺がブルブルと震えているからだ。俺の背中を優しく叩き、そろそろ顔をあげたらどうかと声をかけてくれた。

「おいおい。コアラか?」
「コアラでも子ザルでもいいんだよーーっ 」
「やんだぞ……」
「黒崎さんも苦手なんじゃない?ドキドキしてるよ?」
「気のせいだ」 
「苦手なんだろ~?」
「バカ言うな」 
「ふふん。俺たち仲間だね」
「雨が止んだぞ」

 黒崎から肩を叩かれて顔を上げると、雨に濡れた土の匂いが鼻をくすぐった。雷が遠ざかったと思ったら、さっきまでの自分のことが恥ずかしくなった。黒崎の顔を見る勇気がない。

 屋根の下にいた人達が立ち去って行く姿を眺めていると、黒崎が腕時計に視線を向けた。今日は帰った方が良さそうだと思った。するとその時、胸の鼓動が高鳴った。そして、痛みが起きた。もっと一緒にいたいと思ったからだ。

「黒崎さん。時計を見ないでよ」
「夏樹。どうしてだ?」
「楽しい時間が消えそうになるもん」
「そうか。今からイベントを見に行こう。時間を気にしていた理由はそれだ。花火も上がるそうだが、中止になるかもしれない」
「この近くであるの?」 
「徒歩で15分だ。タクシーにするか?」 
「歩く方がいい!」 

 急に嬉しくなり立ち上った。今日のような旅行の時間が、いつまでも続けばいいと思っていたからだ。降っていた雨のように、泣きそうな気分だったのに、心の中が晴れてきた。どうしてそう思うのだろうか。黒崎のことが好きだからだと思う。

 そばにいる彼の手を取れば、今のモヤモヤから解放されると思う。でも、俺には前に進む勇気がない。ごめんね。心の中で黒崎に謝った後、ベンチから立ち上がった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺の推し♂が路頭に迷っていたので

木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです) どこにでも居る冴えない男 左江内 巨輝(さえない おおき)は 地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。 しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった… 推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???

有能副会長はポンコツを隠したい。

さんから
BL
2.6タイトル変更しました。 この高校の生徒会副会長を務める僕・東山 優真は、普段の仕事ぶりから次期生徒会長の最有力候補と言われている。……んだけど、実際は詰めの甘さやうっかりミスを根性論でカバーしてきたポンコツだ。 こんなに頑張れているのは、密かに思いを寄せている安西生徒会長のため。 ある日、なんの奇跡か会長に告白され晴れて恋人同士となった僕は、大好きな人に幻滅されないためにポンコツを隠し通すと決めたけど……!?(内容は他サイト版と同じですが、こちらの方がちょっと読みやすいはずです)

ヒーロー組織のサポートメンバーになりました!

はちのす
BL
朝起きたら、街はゾンビだらけ!生き残りたい俺は、敵に立ち向かうヒーロー組織<ビジランテ>に出逢った。 ******** 癖の強いヒーロー達の"心と胃の拠り所"になるストーリー! ※ちょっとイチャつきます。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

イケメンに惚れられた俺の話

モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。 こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。 そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。 どんなやつかと思い、会ってみると……

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

バズる間取り

福澤ゆき
BL
元人気子役&アイドルだった伊織は成長すると「劣化した」と叩かれて人気が急落し、世間から忘れられかけていた。ある日、「事故物件に住む」というネットTVの企画の仕事が舞い込んでくる。仕事を選べない伊織は事故物件に住むことになるが、配信中に本当に怪奇現象が起こったことにより、一気にバズり、再び注目を浴びることに。 自称視える隣人イケメン大学生狗飼に「これ以上住まない方がいい」と忠告を受けるが、伊織は芸能界生き残りをかけて、この企画を続行する。やがて怪異はエスカレートしていき…… すでに完結済みの話のため一気に投稿させていただきますmm

処理中です...