恋人はメリーゴーランド少年だった。

夏目奈緖

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 デザートコースの小さなお菓子を食べた後、黒崎から、よかったら食事をしていこうと誘われた。デザートを食べているうちに、お腹が空いてきて、ご飯を食べたくなってきていた。そして、俺が返事をする間もなく黒崎が料理をオーダーした。その後、黒崎と俺の前に野菜と魚料理と肉料理が運ばれてきた。
 
「これも魚料理だよね?デザートみたいで綺麗だね」
「そうだ。甘鯛のローストだ。ソースはグレープフルーツを使っている。好きだろう?」
「脂っこいものが苦手だから、こういうのは嬉しいよ。好きなものばかり食べさせてくれているよね。黒崎さんは、どうなんだよ?たまには焼肉を食べたくならない?」 
「そうでもない。俺には好き嫌いはない。お前に合わせる」 
「それは悪いよ」 
「お前の喜ぶ顔が見たい。何でも言ってくれ。そうだ。似合いそうなシャツを見つけたから、試着に連れて行く。数学のご褒美だ」
「プレゼントは受け取れないって言っただろ。だめだよ」
「一つぐらい贈り物をさせてくれないか。そうか。また今度にしよう」
 
 俺が断ると、黒崎が話を終わらせた。どうして彼は俺にプレゼントをし続けるのだろうかと考えた。恋愛感情があるから贈り物をしたいということだろうか。相手が喜ぶ顔が見たいという理由だと黒崎が言っている。

(あの話をしようかな……)

 そこで、俺はある話を思い出した。父が相談を受けたことのある話だった。それは寂しくて悲しい話だ。

 もっと黒崎と話し合う必要があると思った。俺が喜ぶだけではなく、黒崎も喜んでいる顔が見たいからだ。今のままでは言い争いになるだけだ。そこで、俺の方から話し合いをしたいと黒崎に言うと、彼が軽く首を振った。何か言葉が返ってくると思っていたのに、彼が無言になってしまった。こっちから何か声をかけようか。何を言えばいいのか分からない。

「夏樹」
「どうしたの?」
「見て欲しいものがある。こっちだ」

 すると今度は、黒崎から窓の外を見るように声をかけられた。素直に視線を向けたと同時に、俺が驚いて声を上げてしまった。ここから見える観覧車がライトアップされていたからだ。とても綺麗だと思った。 

「夏樹。向こうの席からの方がよく見える。用意させよう」 
「わざわざ悪いよ。それに、食べている途中だよ」
「遠慮をするな」

 黒崎が店員さんに声を掛けた後、新しい席が用意された。食べている途中なのにと戸惑ったのは、束の間だった。気兼ねする間もなく、新しい席を移動した。そこに座ると、窓の外には、教えてもらった通りの光景が広がっていた。さっきの席よりも観覧車がよく見えると思った。そして、その綺麗さに感激して、言葉が出なくなった。

「すごく綺麗だねーーーー」
「今日は天気がいいからな」 

 湾を挟んだ向こうには、ライトアップされた観覧車が立っていた。虹のように七色に輝いていた。その辺りには、小さな灯りが散らばっている。黒崎は何でも知っている人だと思って驚いた。

「黒崎さん。あの観覧車に乗ったことはある?」 
「乗ったことは無い。お前は乗ったことがあるのか?」
「一回だけあるよ。家族と夜、乗りに行ったんだ。向こうの観覧車からも、こっちが見えると思うんだ。ここを夜景の一部として見ているんだよ。手を振っている人がいるかもしれないよ。お互いに見つめ合っていると思うんだ。なんだか面白いと思うよ」 
「なるほど」
「黒崎さん。何をやっているんだよ?手を繋いだら食べられないだろ」 
「少し寒いからだ」
「嘘をつくなよ。手が熱いじゃん」

 黒崎から手を繋がれてしまった。周りには人が居るから恥ずかしいと思った。いい機会だからお礼を言おうと思った。そこで黒崎の手に両手を重ねた。いきなりこんなことをしたから驚かれた。それはそうだろう。こっちも勇気を出す時が来た。開明高校で教わったお礼の伝え方だ。うまく伝わると良いなと思った。
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