恋人はメリーゴーランド少年だった。

夏目奈緖

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 思い切って、達也に万理のことを聞いてみようかと思った。後ろを付けてきたのは達也かどうか知りたい。万理が逃げてきた後で男の写真を撮っている。それを見ると、達也としか思えなかった。でも、会って話した方がいいと思って、ラインで聞くのをやめた。今回は自分だけの力で片づけたい。小学生の時に起きた事件では万理のことを守りきれなかった。だから、これから先は、何があろうと俺が守ると決めた。読んでいると、また達也から新しいラインが入った。

「夏樹。達也君からか?」
「うん。さっき届いたラインだよ。『今日のライブのチケットを渡したいから広場に来てほしい。何時だったら来られる?』ってさ」
「断ったんだろう」
「うん。断ったんだ。でも、どうしても一緒に行きたいって書いてあるよ。今日会って断ってくるよ。広場はここから歩いてすぐだし」
「昼食の前に寄ろう。12時はどうだ?」 

 達也にラインを送って時間を聞くと、即座に返事が入った。OKだそうだ。そして、俺は昨日、藤沢から聞いた達也の噂を思い出した。藤沢は書店の店員から聞いたそうだ。先月、書店の元同僚が達也の車に連れ込まれて、その元同僚が信号待ちで逃げ出したそうだ。連れ込んだのは達也の冗談であり、元同僚には誤解が解けたそうだ。でも、そういうことが何度かあった噂もあるらしい。だから大学内で噂が広まり、仲のいい友達がいないのだと聞いた。でも、本山さんは達也と仲がいいから、本当に冗談だったのだと思う。でも、達也には気をつけた方がいいと思った。

「返事がきたよ。12時でOKだって」
「会いに行った後で昼食に行こう」
「どこに食べに行く?」
「鹿屋を予約する。好きだろう?」
「やったー。刺身が食べたかったんだ」 
「いくらでも連れて行ってやる。行きたい場所はないのか?」 
「甘やかすなよ。調子に乗りそうだよ」
「甘やかしたい。達也君は、たしかお前より少し背の高い子だったな?」
「知っていたんだね。そうだよ。万理が後ろをついて来られたんだけど、たぶん、達也君だと思う」
「そうか。実は知っていた。お母さんから聞いた」
「そうだったんだね」

 黒崎は知っていた。俺の方から話すのを待っていたと言われた。万理を怖がらせたから自分で片づけると言い切ると、黒崎が俺の目を見て頷いた。

「広場の噴水の前で待ち合わせをしろ。近くのカフェで待っている。揉めたら電話をして来い。今まで悪かった」
「うん。約束するよ。信用してくれてありがとう。……ごめんって?」
「お前に逃げられたくなくて束縛していた。信用していないと受け取られても仕方がない。そのつもりがなくてもだ。挽回させてくれ」

 黒崎から謝られた。強引なことをしてすまないと。俺のことを心配してくれていることが嬉しくて、抱きついてお礼を言った。ここでまた抱き合っていると、約束の時間に間に合わなくなってしまう。黒崎の体温を名残惜しく感じながら、腕の中から抜け出した。
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