眠れる森の星空少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 午前9時半。

 これから畑作りをする。今日の畑作りの手伝いのメンバーは、俺と早瀬、森本と山崎と真羽、桜木さんと伊吹さんだ。森本達はさっき着いて、リビングでお茶で飲んでいた。桜木さん達はもうすぐで到着するとのことだった。

 陣頭指揮は、黒崎家の向かいに住んでいる遠藤健吾えんどうけんごさんだ。奥さんの佳代子さんもいる。子供の頃、実家で畑をやっていたということで、その経験から、今回の手伝いに参加したという。さっき車の中で早瀬が名前を出していた、IKUエンタテインメントというレコード会社の代表取締役だ。気難しい人かと思ったら、そんなことはなかった。遠慮せずに話せている。

「良い天気だなーーー」
「悠人君。タオルを持っていようね」
「うん」

 みんなで庭に下りた。さっきまで少し曇っていたが、晴れ渡った。汗を拭くためのタオルを首に掛けて、畑のそばに行くと、アンが尻尾を振りながら、待ってくれていた。

 テラスの前に、6畳ぐらいの広さの畑がある。シャベルやスコップで土を掘り起こし、新しい土を入れ混ぜた後、アメリカンレーキで平らにするのが今日の作業だ。 

 まず、森本と山崎と真羽が畑全体の土を掘り起こし、粒を小さくした。今日の気温は涼しいし湿気がない方だが、作業をしているうちに暑くなり、三人が汗を流し始めた。夏樹がそばにあるテラスにテーブルを持ってきて、その上に冷たい飲み物を置いた。みんなが自由に飲めるためだ。

 俺の担当は、細かく粒にした土に新しい土を入れた後、アメリカンレーキで平らにする作業だ。夏樹から道具を借りて、使い方を遠藤さんから習った。すると、佳代子さんがやって来て、俺の汗を拭いてくれた。

「たくさん汗をかいているわよ」
「ありがとうございます。こんなに体を動かすのは久しぶりです」
「悠人君。飲み物を飲んだ方が良い」
「うん!」

 早瀬から飲み物を勧められた。さっき、黒崎さんと遠藤さんとで畑に新しい土を入れていた。早瀬も汗をかいていて、持ってきたタオルで汗を拭き始めた。そして、俺の背中を拭いてくれた。

 するとその時だ。テラスの方から男性の声が聞こえてきた。その方を向くと、桜木さんが到着したのだと分かった。そばにいるのは、恋人の伊吹さんだ。初めて会う。夏樹のお兄さんだ。とても似ている顔立ちをしていると思った。その伊吹さんが黒崎さんと向かい合って、何か話している。なんだか険悪なムードだ。

「裕理さん。伊吹さんだよね?」
「ああ。黒崎さんと喧嘩しているようだね」
「え?」
「いつものことだ。ははは」

 早瀬が笑った。伊吹さんは電子書籍コンテンツの開発をしている会社の経営者だ。若き経営者として、新聞にもインタビュー記事が載ったことがあるそうだ。そして、業績は右肩上がりで、業界から注目されているそうだ。伊吹さんは俺達と同じ大学に通っていたが、在学中に今の会社を起業し、波に乗り、忙しくなったから休学しているという話だ。

 夏樹が言うには、伊吹さんは優しいけれど、図々しい人だそうだ。黒崎さんの交友関係に自分のことを宣伝して貰いたいと頼んで、今、断られたらしい。早瀬がそう言っていた。でもそれは黒崎さんの冗談だそうだ。でも、伊吹さんが腹を立てて、黒崎さんに嫌みを言い始めたようだ。それを笑顔で早瀬が見ている。
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