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正門を抜けた後、幸也君から、やっと手を離してもらえた。ぜえぜえと息を吐いているからだった。ただでさえ彼は早足なのに、肩を抱かれて歩いた。俺にとっては小走りも同じだ。
大学の前にはタクシー乗り場がある。すでに数人が待っていて、次々に乗り込んでいった。俺たちもその後ろに並んだ。食事に行くとは言っていないのに、強引に連れて行かれようとしている。
「理久、大丈夫か?」
「そう見える……わけ?聞くまで……もないだろっ」
「タクシーに乗るぞ」
「帰るってば……っ」
「その状態じゃ無理だ。一人で帰せない」
「なに言っているんだよ……」
まだ心臓がバクバクいっている。鼓動の早さよりも、息づかいの方が気になる。この寒い時期だけは喘息の発作が起こりやすいからだ。バッグからマスクを取り出した。ローズマリーの精油を染み込ませてある。これを当てておくと、すぐに息苦しさが治まる。
「こほっ、こほっ」
「理久、冷えたのか……」
「休んだら大丈夫だから」
「ごめん。乗ろう……」
俺たちの順番がやって来た。ここで拒んでも仕方がない。乗せてもらった後、家に送ってもらうことにした。
大学の前にはタクシー乗り場がある。すでに数人が待っていて、次々に乗り込んでいった。俺たちもその後ろに並んだ。食事に行くとは言っていないのに、強引に連れて行かれようとしている。
「理久、大丈夫か?」
「そう見える……わけ?聞くまで……もないだろっ」
「タクシーに乗るぞ」
「帰るってば……っ」
「その状態じゃ無理だ。一人で帰せない」
「なに言っているんだよ……」
まだ心臓がバクバクいっている。鼓動の早さよりも、息づかいの方が気になる。この寒い時期だけは喘息の発作が起こりやすいからだ。バッグからマスクを取り出した。ローズマリーの精油を染み込ませてある。これを当てておくと、すぐに息苦しさが治まる。
「こほっ、こほっ」
「理久、冷えたのか……」
「休んだら大丈夫だから」
「ごめん。乗ろう……」
俺たちの順番がやって来た。ここで拒んでも仕方がない。乗せてもらった後、家に送ってもらうことにした。
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