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7-13(黒崎視点)
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午前10時半。
夏樹がリハーサルに出発した。俺はアンと父と晴海兄さんを連れて、近所のキサラギ動物病院に来ている。アンの検診のためだ。体重の増加があり、フードの種類を変えて2ヶ月が経った。そのおかげもあってなのか、ダイエットに成功したと分かり、ホッとした。好きなものを我慢させていたことで、胸が痛かかった。
「アンちゃんの体重は6キロです。正常範囲ですから、もう普段の食事に戻しても良いですよ」
「そうですか。……ええ、庭を走り回っています。週に1回だけでしたから、回数を増やしました。忙しくて、朝と夕方の散歩のみにしていましたから……。運動量はいいんですね。僕も一緒に走るんですか……」
「ゆっくりのペースで走ってあげてください。2、3分でいいですから」
「そうしてみます。こら、アン。自分で降りるな。兄さん、アンを止めてくれ」
「ああ。アントワネット、この後、レントゲンだぞ」
「ワン!」
先週、アンが足を怪我した。走っていて挫いた。腫れはなく、骨にも異常が無かった。しかし、念のために、もう一度、胸や足を撮って貰うことにした。夏樹はやり過ぎだと言うが、なんでも用心が肝心だと思っている。
今日、父と晴海兄さんを連れてきたのは、手持ち無沙汰にしていたからだ。兄さんもリハーサルとコンサート観に行くため、父の家で合流したわけだが、一貴は仕事で留守にしており、特に会話が無くて、静まりかえっていた。ユリウスは一貴が連れて行っている。二葉も留守だ。そこで、夏樹の表現で言うと、ぞろぞろとアンに付いてきたわけだ。
先ほど、夏樹からラインが入っていた。無事にコンサートホールに着いたという報告だ。久弥を写した写真も付いていた。腰までの長さの髪を赤色に染めている。コンサートの後、短いヘアスタイルに変えるそうだ。
その写真を見て、改めて夏樹がバンドのバーカルなのだと実感した。大人しい彼が一旦ステージに上がると豹変し、激しいリズムに歌声を上げる。そして、バンドメンバーが観客を波打たせる。俺はその中の一人になり、今まで見てこなかった世界を体験することになる。観客の激しいジャンプと腕の揺れ、前後の客が髪の毛を振り乱し、髪の毛が当たり合っても諍いなど起きない。そして、バラードではしんと静まりかえり、ペンライトで客席からステージを照らしている。
(もっと若い頃からコンサートを観ていていれば良かった。あの子は遠い存在に思える……)
コンサートを観に行くとすれば、クラシックやジャズが主だった。拓海兄さんの趣味だ。同級生はロックが好きな子が多かった。沙耶と怜もそうだった。自分も行っていれば、夏樹ともっと話が合ったのだと思うと、残念でならない。
(まさかな。あの子がステージに上がるなんて思わなかった……)
出会った頃の夏樹は内気であり、とても人前で拳を振り上げて歌うイメージは沸いてこなかった。音楽はヘヴィーメタルが好きだというから、そのジャンルの楽曲を聴いて学ぶようにした。話を合わせるための努力だ。今までの自分なら、相手が俺に趣味を合わせてくれた。それが当然になっていた。それが今ではすっかり様変わりし、俺の方がいまだに夏樹に話を合わせるための努力を続けている。
夏樹がリハーサルに出発した。俺はアンと父と晴海兄さんを連れて、近所のキサラギ動物病院に来ている。アンの検診のためだ。体重の増加があり、フードの種類を変えて2ヶ月が経った。そのおかげもあってなのか、ダイエットに成功したと分かり、ホッとした。好きなものを我慢させていたことで、胸が痛かかった。
「アンちゃんの体重は6キロです。正常範囲ですから、もう普段の食事に戻しても良いですよ」
「そうですか。……ええ、庭を走り回っています。週に1回だけでしたから、回数を増やしました。忙しくて、朝と夕方の散歩のみにしていましたから……。運動量はいいんですね。僕も一緒に走るんですか……」
「ゆっくりのペースで走ってあげてください。2、3分でいいですから」
「そうしてみます。こら、アン。自分で降りるな。兄さん、アンを止めてくれ」
「ああ。アントワネット、この後、レントゲンだぞ」
「ワン!」
先週、アンが足を怪我した。走っていて挫いた。腫れはなく、骨にも異常が無かった。しかし、念のために、もう一度、胸や足を撮って貰うことにした。夏樹はやり過ぎだと言うが、なんでも用心が肝心だと思っている。
今日、父と晴海兄さんを連れてきたのは、手持ち無沙汰にしていたからだ。兄さんもリハーサルとコンサート観に行くため、父の家で合流したわけだが、一貴は仕事で留守にしており、特に会話が無くて、静まりかえっていた。ユリウスは一貴が連れて行っている。二葉も留守だ。そこで、夏樹の表現で言うと、ぞろぞろとアンに付いてきたわけだ。
先ほど、夏樹からラインが入っていた。無事にコンサートホールに着いたという報告だ。久弥を写した写真も付いていた。腰までの長さの髪を赤色に染めている。コンサートの後、短いヘアスタイルに変えるそうだ。
その写真を見て、改めて夏樹がバンドのバーカルなのだと実感した。大人しい彼が一旦ステージに上がると豹変し、激しいリズムに歌声を上げる。そして、バンドメンバーが観客を波打たせる。俺はその中の一人になり、今まで見てこなかった世界を体験することになる。観客の激しいジャンプと腕の揺れ、前後の客が髪の毛を振り乱し、髪の毛が当たり合っても諍いなど起きない。そして、バラードではしんと静まりかえり、ペンライトで客席からステージを照らしている。
(もっと若い頃からコンサートを観ていていれば良かった。あの子は遠い存在に思える……)
コンサートを観に行くとすれば、クラシックやジャズが主だった。拓海兄さんの趣味だ。同級生はロックが好きな子が多かった。沙耶と怜もそうだった。自分も行っていれば、夏樹ともっと話が合ったのだと思うと、残念でならない。
(まさかな。あの子がステージに上がるなんて思わなかった……)
出会った頃の夏樹は内気であり、とても人前で拳を振り上げて歌うイメージは沸いてこなかった。音楽はヘヴィーメタルが好きだというから、そのジャンルの楽曲を聴いて学ぶようにした。話を合わせるための努力だ。今までの自分なら、相手が俺に趣味を合わせてくれた。それが当然になっていた。それが今ではすっかり様変わりし、俺の方がいまだに夏樹に話を合わせるための努力を続けている。
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