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20-23(夏樹視点)
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午前9時。
東京都南青山にあるフラワーショップ、ベル・パッソネに到着した。ここが北岡さんのお店だ。近くにある駐車場に車を停めて、みんなで歩いてきた。ここの近くには俺と黒崎の好きなイタリアンレストランのレストランテ森下がある。
その森下を通り過ぎて、道路から2本入った通りを歩いて行くと、フラワーショップがあった。一見、うっそうとしたジャングルのような外観をした店だ。ウッドデッキにはベンチが置いてあり、社長時代のお義父さんがよく座っていたと聞いている。
「おはようございますーーーー」
営業時間は午前10時からだ。しかし、裏の事務所が開いている。俺達は店では無く、その事務所の方に歩いて行き、出入り口で声を掛けた。すると、奥から北岡さんが出てきた。今日はお店に1日いるということで、黒いエプロンを着けていた。
「おはよう。みんな無事か?」
「無事だよ。ありがとう。お義父さん、こっちだよ」
俺は後ろにいるお義父さんの腕を引いた。一貴さんが何かをして迷惑をかけようとしているから止めようとしていた。俺はそれを止めた。後でまとめて謝れば良いことだ。そう考えるほどに俺の心は緊張していた。悪戯かも知れないメールとはいえ、気持ちの良い物ではない。そして、警察と話して避難することを選んだわけで、何も起きなければ良いのにと願った。
すると、お義父さんが杖を付いていなくても歩けるようになっていると北岡さんに伝えて、足を見せた。そして、北岡さんが微笑んだ。
「黒崎さん。中にどうぞ」
「すまないね」
「朝ご飯は食べてきましたか?喉を通らなかったのでは無いですか?お手伝いさん達は自宅待機ということですが……」
「ああ。今日の夕方までいない。昨夜は一貴がざるそばを茹でてくれた。今朝もトーストを焼いてくれた。コーヒーは夏樹がコーヒーメーカーをセットしてくれたから、それを飲んだ」
「それだけですか!」
「ああ。たまには小食がいい」
「なんでことだ。何か買ってくるという選択肢はなかったんですか?」
「私は戦時中に小さい頃を過ごした。食べ物が無い時を経験したのは覚えていない年ぐらいだったが、戦争の後も食べ物が無くて、いつも空腹だった。この通り、その時の経験は生かされている。息子達には我慢を強いたが、たまにはいい」
「……」
北岡さんが何も言わなくなった。お義父さんがそうすると言えば、俺達は従う。というか、付き合うことになる。だから、俺達が空腹なのだと知り、お饅頭があると言ってくれた。お茶も珈琲もあるという。それにはありがたいと思った。
「さあ、みんな入ってくれ。晴海君も出勤してある」
「どうもすみません」
さっきまで事務所の出入り口に置いてあったディスプレイのクリスマスリースのような物に触れて、葉っぱを引っ張って遊んでいた一貴さんが、急に大人になった。はいはいと言いながら俺の背中を押し、中に入らせた。それはまるで町内会のおじさんを彷彿させる物であり、ヨークに切り替わったのだと分かった。
そして、中に入ると、花や葉っぱの匂いが立ちこめていた。今から店内に飾るための花がバケツに入って置かれている。それはたくさんあり、これだけの花が1日で完売するのかと驚いた。お義父さんの家のように、家に出張して花を生けるサービスもあるからだろう。
俺達が通されたのは、応接セットだ。そこそこの広さがある事務所の中で、どんと置かれていたセットだ。テーブルは片付けられていて、すでにお饅頭が置かれていた。そして、晴海さんがキッチンでお茶の支度をしてくれていた。黒いエプロン姿だ。家で料理はしないというが、本来持って生まれた手先の器用さで華麗にみんなの分のお茶を煎れて、それぞれに配ってくれた。
「ありがとう」
「まあ、座れ。師匠。師匠はブラック珈琲でしたね」
「ああ。砂糖もミルクも抜きにしてくれ、ありがとう」
北岡さんが俺達と一緒にソファーに座った。俺の隣はお義父さんだ。俺の手を握っている。そして、何も怖いことは無いのだと言ってくれた。アン達はキャリーケースに入ったままで、北岡さんが、出してあげてと言ってくれた。
東京都南青山にあるフラワーショップ、ベル・パッソネに到着した。ここが北岡さんのお店だ。近くにある駐車場に車を停めて、みんなで歩いてきた。ここの近くには俺と黒崎の好きなイタリアンレストランのレストランテ森下がある。
その森下を通り過ぎて、道路から2本入った通りを歩いて行くと、フラワーショップがあった。一見、うっそうとしたジャングルのような外観をした店だ。ウッドデッキにはベンチが置いてあり、社長時代のお義父さんがよく座っていたと聞いている。
「おはようございますーーーー」
営業時間は午前10時からだ。しかし、裏の事務所が開いている。俺達は店では無く、その事務所の方に歩いて行き、出入り口で声を掛けた。すると、奥から北岡さんが出てきた。今日はお店に1日いるということで、黒いエプロンを着けていた。
「おはよう。みんな無事か?」
「無事だよ。ありがとう。お義父さん、こっちだよ」
俺は後ろにいるお義父さんの腕を引いた。一貴さんが何かをして迷惑をかけようとしているから止めようとしていた。俺はそれを止めた。後でまとめて謝れば良いことだ。そう考えるほどに俺の心は緊張していた。悪戯かも知れないメールとはいえ、気持ちの良い物ではない。そして、警察と話して避難することを選んだわけで、何も起きなければ良いのにと願った。
すると、お義父さんが杖を付いていなくても歩けるようになっていると北岡さんに伝えて、足を見せた。そして、北岡さんが微笑んだ。
「黒崎さん。中にどうぞ」
「すまないね」
「朝ご飯は食べてきましたか?喉を通らなかったのでは無いですか?お手伝いさん達は自宅待機ということですが……」
「ああ。今日の夕方までいない。昨夜は一貴がざるそばを茹でてくれた。今朝もトーストを焼いてくれた。コーヒーは夏樹がコーヒーメーカーをセットしてくれたから、それを飲んだ」
「それだけですか!」
「ああ。たまには小食がいい」
「なんでことだ。何か買ってくるという選択肢はなかったんですか?」
「私は戦時中に小さい頃を過ごした。食べ物が無い時を経験したのは覚えていない年ぐらいだったが、戦争の後も食べ物が無くて、いつも空腹だった。この通り、その時の経験は生かされている。息子達には我慢を強いたが、たまにはいい」
「……」
北岡さんが何も言わなくなった。お義父さんがそうすると言えば、俺達は従う。というか、付き合うことになる。だから、俺達が空腹なのだと知り、お饅頭があると言ってくれた。お茶も珈琲もあるという。それにはありがたいと思った。
「さあ、みんな入ってくれ。晴海君も出勤してある」
「どうもすみません」
さっきまで事務所の出入り口に置いてあったディスプレイのクリスマスリースのような物に触れて、葉っぱを引っ張って遊んでいた一貴さんが、急に大人になった。はいはいと言いながら俺の背中を押し、中に入らせた。それはまるで町内会のおじさんを彷彿させる物であり、ヨークに切り替わったのだと分かった。
そして、中に入ると、花や葉っぱの匂いが立ちこめていた。今から店内に飾るための花がバケツに入って置かれている。それはたくさんあり、これだけの花が1日で完売するのかと驚いた。お義父さんの家のように、家に出張して花を生けるサービスもあるからだろう。
俺達が通されたのは、応接セットだ。そこそこの広さがある事務所の中で、どんと置かれていたセットだ。テーブルは片付けられていて、すでにお饅頭が置かれていた。そして、晴海さんがキッチンでお茶の支度をしてくれていた。黒いエプロン姿だ。家で料理はしないというが、本来持って生まれた手先の器用さで華麗にみんなの分のお茶を煎れて、それぞれに配ってくれた。
「ありがとう」
「まあ、座れ。師匠。師匠はブラック珈琲でしたね」
「ああ。砂糖もミルクも抜きにしてくれ、ありがとう」
北岡さんが俺達と一緒にソファーに座った。俺の隣はお義父さんだ。俺の手を握っている。そして、何も怖いことは無いのだと言ってくれた。アン達はキャリーケースに入ったままで、北岡さんが、出してあげてと言ってくれた。
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