夏椿の天使~あの日に出会った旋律

夏目奈緖

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 1月10日、木曜日。午前2時半。

 ベッドのスプリングがきしむ音がした。室内のひんやりした空気が素肌に触れたことで、ふいに体が震えた。すると、上半身を脱いだ黒崎が覆いかぶさってきて、すまないと耳元で謝られてしまった。せっかく寝ていたのに起こした上に、寒い思いをさせたと。そんな気持ちがこもっている。

 こんな時間にイチャついているのは、黒崎が会食で深夜帰宅になったからだ。一週間近く触れ合っていない。さすがに限界になったようだ。疲れが取れないと言っている。

「くろさき……、さん。んん……」
「抱いたら疲れが取れる。頑張ってきたご褒美がほしい」
「もう……。変なところを舐めるなよ……」
「おかしくないだろう。……夏樹」
「まだだよ。もっとキスをしてからじゃないと」

 黒崎が笑い声を立てた後、俺の体を抱き起こして、膝の上に向かい合わせで座らせた。背中に甘い痺れが走ったのは、かすれた声で囁かれたからだ。何をさせようとしているのか。

「恥ずかしいから……」
「それが見たい。感度が良いから勿体ない」
「あ……」

 促すようにしてく揺さぶられた後、動きを止められた。焦らされている。首筋に吸い付かれて、思わずのけぞると、今度は胸元へキスをされた。何度も繰り返されるうちに、足がガクガク震えてきた。

「ほら 、こうしてみろ」
「んん……ちょっと……」
「こうだ……」
「うん……」

 俺達は3日以上空けないでイチャついている。でも、今回は一週間空いた。黒崎の方は毎晩したいのだけれど、俺の方が体力が続かないからと、キスをして我慢している夜がある。そういう夜は、黒崎は昼間の強引さと素っ気なさが無くなり、マジで優しすぎる人になる。そういう黒崎も大好きだ。

 まだ触れ合っているだけなのに、抱きかかえるようにして顔中にキスをされた。熱い息が頬へかかり、首筋へ滑っていく唇から起きた感覚に、小さな声を上げた。我慢するな。黒崎が笑い声を立てて耳たぶを舐めて、また声が出てしまった。

「夏樹。かまわないか?」
「いいよ……。あ……」
「お許しをもらった。時間をかけさせてくれ」
「何のことだよ。変なことを言うな」
「その言い返しが可愛らしい……」
「そのわりには強引だよ……」

 俺の方から降参した。言葉の代わりに唇へキスをして答えた。黒崎からの深いキスを受け取りながら、いっそう体の奥が熱くなった。愛している。その囁き声によって充足感に包みこまれた。俺もだよ。目の前が霞む感覚に身を任せて、目を閉じた。
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