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20-6(黒崎視点)
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17時。
打ち合わせが終了した。IKUのスタジオに入り、楽曲の演奏風景を見学している。まずは2回演奏を行った後だ。メンバー同士が細かく確認作業をしている。
早瀬が父にバンド構成の説明をしている。それを興味深そうに頷きつつ、父が夏樹のことを優しい目で見つめていた。末の息子が頑張っている姿を見て、生き生きとしている。ドラム担当の男性と話している悠人の姿は、とても大学生には思えない。落ち着いている。
佐久弥がキーボードを弾き、夏樹のボーカル練習に付き添った。遠藤さんがその光景を見ながら、ため息をついた。いい意味でのことだ。
「……上達が早い。会議室での緊張した様子からはイメージが出来ない。歌っていると別人になるね。圭一君もそう思わないか?」
「僕もそう思います。高校の礼拝堂で歌っていると、別人のように見えました」
「歌うことが心の底から好きなんだろう。いい表情をしている。佐久弥も笑っている……」
真剣な顔をしながらも、微笑んでいる佐久弥がいる。夏樹の方もリラックスした様子だ。あの会議室では視線を落としていた。しかし、あの場では助け舟を出すことは出来なかった。
透明のガラス越しの世界を眺めた。すでに一時間以上が経過して心配になった。家の中で5分間の歌唱を3度やるだけで、夏樹は汗をかいている。今はその時間を越している。夏樹の額からは汗が流れて、タオルで拭いている。見ているだけしか出来ない状況がもどかしい。
(こういう機会が増えるのか。俺が入ることができない世界だ……)
早瀬から肩を叩かれた。これから最後の演奏が始まるという。マイク越しにスタッフとメンバーとが会話をした。そして、メンバーがポジショニングを取った。ドラムとベースはサポートメンバーだ。経験が豊富なミュージシャンであり、佐久弥とも親しいそうだ。
「OKかー?」
「OKです!」
自分達も演奏が聴ける。スピーカーから楽曲が流れ始めた。ドラム音とベースが鳴り響き、ギターフレーズが重なった。それらが絡み合ったタイミングで、夏樹が歌声をあげた。ハイトーンボイスだが、音域が広くて低音も出せるから、周りからため息が漏れた。
「良い声だな」
「すごいなあ……」
室内のスタッフから小声で繰り返される会話を、ぼんやりした頭の中で聞いた。ガラスの向こうにいるのは夏樹のはずだが、別人を見ているようだ。ドアを開ければ近づくことが出来るのに、もっと遠くにいるようだ。ステージに立っている夏樹を見ている観客になった気分だ。
「おおーー、あの子。悠人君か……」
「佐久弥とリズムが合っているぞ、19歳だろ?」
「ボーカルとも……」
悠人のギターフレーズが、佐久弥の音から離れて独立した。19歳の子が奏でているのかと不思議になるほどの空気がある。こういう場でのギター演奏を聴いたのは初めてだ。
打ち合わせが終了した。IKUのスタジオに入り、楽曲の演奏風景を見学している。まずは2回演奏を行った後だ。メンバー同士が細かく確認作業をしている。
早瀬が父にバンド構成の説明をしている。それを興味深そうに頷きつつ、父が夏樹のことを優しい目で見つめていた。末の息子が頑張っている姿を見て、生き生きとしている。ドラム担当の男性と話している悠人の姿は、とても大学生には思えない。落ち着いている。
佐久弥がキーボードを弾き、夏樹のボーカル練習に付き添った。遠藤さんがその光景を見ながら、ため息をついた。いい意味でのことだ。
「……上達が早い。会議室での緊張した様子からはイメージが出来ない。歌っていると別人になるね。圭一君もそう思わないか?」
「僕もそう思います。高校の礼拝堂で歌っていると、別人のように見えました」
「歌うことが心の底から好きなんだろう。いい表情をしている。佐久弥も笑っている……」
真剣な顔をしながらも、微笑んでいる佐久弥がいる。夏樹の方もリラックスした様子だ。あの会議室では視線を落としていた。しかし、あの場では助け舟を出すことは出来なかった。
透明のガラス越しの世界を眺めた。すでに一時間以上が経過して心配になった。家の中で5分間の歌唱を3度やるだけで、夏樹は汗をかいている。今はその時間を越している。夏樹の額からは汗が流れて、タオルで拭いている。見ているだけしか出来ない状況がもどかしい。
(こういう機会が増えるのか。俺が入ることができない世界だ……)
早瀬から肩を叩かれた。これから最後の演奏が始まるという。マイク越しにスタッフとメンバーとが会話をした。そして、メンバーがポジショニングを取った。ドラムとベースはサポートメンバーだ。経験が豊富なミュージシャンであり、佐久弥とも親しいそうだ。
「OKかー?」
「OKです!」
自分達も演奏が聴ける。スピーカーから楽曲が流れ始めた。ドラム音とベースが鳴り響き、ギターフレーズが重なった。それらが絡み合ったタイミングで、夏樹が歌声をあげた。ハイトーンボイスだが、音域が広くて低音も出せるから、周りからため息が漏れた。
「良い声だな」
「すごいなあ……」
室内のスタッフから小声で繰り返される会話を、ぼんやりした頭の中で聞いた。ガラスの向こうにいるのは夏樹のはずだが、別人を見ているようだ。ドアを開ければ近づくことが出来るのに、もっと遠くにいるようだ。ステージに立っている夏樹を見ている観客になった気分だ。
「おおーー、あの子。悠人君か……」
「佐久弥とリズムが合っているぞ、19歳だろ?」
「ボーカルとも……」
悠人のギターフレーズが、佐久弥の音から離れて独立した。19歳の子が奏でているのかと不思議になるほどの空気がある。こういう場でのギター演奏を聴いたのは初めてだ。
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