夏椿の天使~あの日に出会った旋律

夏目奈緖

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20-10

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 黒崎から事情を聞いた。渡されたスルメの焼き上がりが遅く感じたそうで、火力が弱すぎるからだと見当をつけて出力を上げた結果、丸焦げになったそうだ。大量の煙が出てしまい、早瀬さんが駆けつけた時には充満しており、慌てて窓を全開にしたということだ。お世話になりっぱなしだ。

「あんたはせっかちなんだよ。焼き上がりぐらい待ってよー」
「……効率を考えてのことだ」
「仕方のない人だねえ。ゆうとー、味見できるよ」

 もう一枚スルメがあったから、さっき焼いたところだ。しかし、さっきまでここにいた悠人の姿がない。カウンター越しにリビングを眺めると、動画を編集中の早瀬さんの隣に座っていた。寄り添っているから邪魔をしたくない。すると、悠人から声をかけられた。

「なつきー。食べてもいい?」
「持って行ってあげるよ~。座っていろよ。まだ痛いだろ?」

 コト……。

 テーブルにスルメを置くと、さっそく悠人が手を伸ばしてきた。モグモグと食べていると、早瀬さんが分けてくれと言い、悠人が皿を差し出そうとすると、彼に顔を近づけた。

「裕理さん。はい、どうぞ」
「いただきます」

 早瀬さんが悠人の口から出ているスルメを噛んだ。半分に分けて食べている。そのアツアツぶりに、俺の方も顔がアツアツになった。

「ゆうとくーん、煙が出ていただろう?」
「うん。目が痛かったよ……」
「可愛いなあ」
「もうーーー」
「モウモウ言うとウシになるぞー?」
「ヤギになってやる!メェェーー」
「モウモウ……」
「メエメエ……」
「悠人、かわいい」
「裕理さん、かっこわるい」

 2人が冗談を言い合い、微笑み合った。俺はますます顔が熱くなった。

「ヒョーーーーーッ」
「夏樹。うるさいぞ」
「なんだよ?これぐらいのことで。怒りん坊の石頭!スルメを焦がしたくせに~」

 黒崎から怒られたことで喧嘩に発展した。悠人から仲裁されて落ち着いたところで、お開きになり、2人を見送った。
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