夏椿の天使~あの日に出会った旋律

夏目奈緖

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21-1 早瀨家にて

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 6月9日、日曜日、午前9時。

 庭に出てストレッチをやっているところだ。休みの日の朝の日課だ。平日は家の中が基本だ。ナツツバキの木の幹に両手を添えて、後ろへ足を伸ばした。今度は黒崎から手を添えられて前屈をした。

「ウーーーン」
「もう一回だ」
「ウーーーン……」
「よし、終わりだ」
「はあーーーっ」

 これで日課が終了した。昨日の雨が残っているため、地面からは湿った土の匂いがする。季節は夏に近づき暑くなってきたが、この庭は涼しい。そんなに汗をかいていない。外を出て駅の周辺を歩くと、すぐに汗をかいている。去年と比べると、代謝が良くなった。

「発声練習も終わった。声が出るようになっただろ?」
「本調子が出た。今日は予定通りに出られる」
「うん。畑づくりをしてから一年経ったね。悠人の楽曲を歌った日だよ」
「あれは記念日になった……」

 一年前の今日、我が家で家庭菜園を始めた。悠人と遠藤さんの出会いの日だ。悠人が作った楽曲をみんなの前で歌った日でもある。その時、これからずっと歌い続けることを決めた。19歳の記念日だ。

 今日は早瀬さん達のマンションに遊びに行く。佐久弥と、恋人の蔵之介さんも来るというから楽しみだ。

 デビューする前に、楽曲のプロモーションビデオの撮影に入る。その前に、お互いのことを知っておこうと、佐久弥から誘われた。どんな話ができるだろう?どきどきしながら、出かける支度を始めた。
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