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12時半。
引き続きカフェにて3人で話している。悠人が結婚生活の愚痴を吐きだした。それに対して森本が相槌を打っている。その報酬がわりが、”スペシャルカツサンド”だ。
大盛りポテトフライと空のグラスは6つ並び、さらに悠人がアイス珈琲をオーダーした。店員さんが空のグラスを回収しているが、さらに増えそうだ。
「裕理さんは頑固なんだ。どっちが世話を焼くのか朝昼晩で決めているのに、どれも自分でやろうとするんだよ。俺がやったほうが早いからって。だから俺が上達しないんだよーー」
「頑固って言ってたねえ~。うちの黒崎さんも同じだよ。石頭でさー、これはダメだ、行くな、走るな、行儀が悪いって。小言が長いんだ。誕生日を迎えるごとに長くなってるよ」
「……もっと聞かせてくれ。このケチャップは美味い」
「農学部が育てた新種のトマトを使っているんだってさ。……でもさ、早瀬さんは世話好きだもん。悠人のことが可愛いからだよ~」
「黒崎さんだって同じだよ。夏樹のことを溺愛しているもん。裕理さんから聞いたんだけど。高校の時は決まった相手としか喋るなって言われてたんだよね?ホントにー?」
「マジだよ。一時のことだったけどさ~」
「げええええっ」
さすがに悠人が引きつった。森本は知っているから反応しない。他にも束縛があったのかと聞かれたから、思い出せる限りのエピソードを語った。その度に悠人が悲鳴をあげた。
「地元にいた時に住んでいたマンションに遊歩道があったんだ。すぐ目の前の場所なんだ。アンを連れて散歩に行きたくても禁止されていたよ~。何回か交渉したら、二度も言わせるなって言い返されたんだよ~っ」
「ひいいいっ。黒崎さんって、実は事故物件ってやつ?」
「そうなんだよ~。あの頃は好きっていう気持ちが強くて我慢したんだ。それが間違いだった。横暴でさ、石頭でさ……」
「そういうことだったのかー、裕理さんの話は大袈裟だと思っていたのに。想像を超えてるよ。今は違うのに」
「そうなんだよ。心配症にシフトしたよ。自分のための束縛から、俺のことが心配だという束縛に変わったわけだよ。今では尻に敷いているから平気だよ~」
「二度も言わせるなって言われている?今も……」
「ううん!それはもうないよ。”俺の方が20回も言ってやる”って言い返してるからさ~」
「強いねーー」
「早瀬さんはどうなんだ?」
「えーっとね……」
これだけ話すと気持ちが落ち着いた。午後の授業に出られそうだ。今度は学部選択の話題に移った。森本は理学部の情報物理学科をエントリーする。悠人は迷っている状況だ。
「これからのことを考えたら法学部がいい。音楽活動は法の知識が大事だから。契約とか自分自身を守るためだよ」
「知らなかったっていうのも困るよね」
ミュージシャンが抱えるトラブルのことを、佐久弥から聞いた。事務所に任せていても、本人が注意するべきでもあるという話もあった。自分の身を守る大切さと、事務所以外の人との付き合い方も教わった。
「法学を続けたい気持ちも大きいよ。あれ?なつきー。電話だよ」
「ホントだ、俺だ。黒崎さんだ……」
この時間は昼休憩だろう。取れなくて折り返しをかけた。これから迎えに行くから待っていろということと、イチョウの木の下で発声練習をしろというものだった。気分転換になるからだ。
さっそく練習を始めると、向こうを歩いていたグループから、“がんばれー”と応援されて嬉しくなった。やっぱりステージに立ちたいと強く思った。
引き続きカフェにて3人で話している。悠人が結婚生活の愚痴を吐きだした。それに対して森本が相槌を打っている。その報酬がわりが、”スペシャルカツサンド”だ。
大盛りポテトフライと空のグラスは6つ並び、さらに悠人がアイス珈琲をオーダーした。店員さんが空のグラスを回収しているが、さらに増えそうだ。
「裕理さんは頑固なんだ。どっちが世話を焼くのか朝昼晩で決めているのに、どれも自分でやろうとするんだよ。俺がやったほうが早いからって。だから俺が上達しないんだよーー」
「頑固って言ってたねえ~。うちの黒崎さんも同じだよ。石頭でさー、これはダメだ、行くな、走るな、行儀が悪いって。小言が長いんだ。誕生日を迎えるごとに長くなってるよ」
「……もっと聞かせてくれ。このケチャップは美味い」
「農学部が育てた新種のトマトを使っているんだってさ。……でもさ、早瀬さんは世話好きだもん。悠人のことが可愛いからだよ~」
「黒崎さんだって同じだよ。夏樹のことを溺愛しているもん。裕理さんから聞いたんだけど。高校の時は決まった相手としか喋るなって言われてたんだよね?ホントにー?」
「マジだよ。一時のことだったけどさ~」
「げええええっ」
さすがに悠人が引きつった。森本は知っているから反応しない。他にも束縛があったのかと聞かれたから、思い出せる限りのエピソードを語った。その度に悠人が悲鳴をあげた。
「地元にいた時に住んでいたマンションに遊歩道があったんだ。すぐ目の前の場所なんだ。アンを連れて散歩に行きたくても禁止されていたよ~。何回か交渉したら、二度も言わせるなって言い返されたんだよ~っ」
「ひいいいっ。黒崎さんって、実は事故物件ってやつ?」
「そうなんだよ~。あの頃は好きっていう気持ちが強くて我慢したんだ。それが間違いだった。横暴でさ、石頭でさ……」
「そういうことだったのかー、裕理さんの話は大袈裟だと思っていたのに。想像を超えてるよ。今は違うのに」
「そうなんだよ。心配症にシフトしたよ。自分のための束縛から、俺のことが心配だという束縛に変わったわけだよ。今では尻に敷いているから平気だよ~」
「二度も言わせるなって言われている?今も……」
「ううん!それはもうないよ。”俺の方が20回も言ってやる”って言い返してるからさ~」
「強いねーー」
「早瀬さんはどうなんだ?」
「えーっとね……」
これだけ話すと気持ちが落ち着いた。午後の授業に出られそうだ。今度は学部選択の話題に移った。森本は理学部の情報物理学科をエントリーする。悠人は迷っている状況だ。
「これからのことを考えたら法学部がいい。音楽活動は法の知識が大事だから。契約とか自分自身を守るためだよ」
「知らなかったっていうのも困るよね」
ミュージシャンが抱えるトラブルのことを、佐久弥から聞いた。事務所に任せていても、本人が注意するべきでもあるという話もあった。自分の身を守る大切さと、事務所以外の人との付き合い方も教わった。
「法学を続けたい気持ちも大きいよ。あれ?なつきー。電話だよ」
「ホントだ、俺だ。黒崎さんだ……」
この時間は昼休憩だろう。取れなくて折り返しをかけた。これから迎えに行くから待っていろということと、イチョウの木の下で発声練習をしろというものだった。気分転換になるからだ。
さっそく練習を始めると、向こうを歩いていたグループから、“がんばれー”と応援されて嬉しくなった。やっぱりステージに立ちたいと強く思った。
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