恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編

夏目奈緖

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 13時。

 これから黒崎のお母さん達との待ち合わせの店に出発する。もうすぐで会うのかと思い、胸をドキドキさせながら車に乗り込んだ。今日行く店はリブレという店で、ペット入店可能の店だ。だからアンも連れて来た。妹の方から会いたいと言ってもらえたからだ。
 
 でも、本当は犬が苦手らしい。俺達に気遣ってくれたのだろう。アンは留守番をさせるか実家で預かってもらう話を黒崎がお母さんに話していると、犬が嫌いなのではなく、飼ったことがないから戸惑っているだけだと、妹本人が話していたそうだ。これを機会に触れるようになりたいとも言っていた。
  
 車が交差点を過ぎた。いよいよ目的地が近づいてきた。アンには、運転中で危ないから、キャリーケースの中に居てもらっている。俺が助手席で抱くと、上手に俺の腕をすり抜けて、運転席に行ってしまうからだ。

 黒崎とアンの話をした。今、彼女がどう思っているのか、想像しながら会話した。
 
「パパと片時も別れたくないの。アンはそう言っているようだな」 
「きっとこう思っているよ。夜遅くに帰って来ると、酒臭いから嫌なのーー」 
「パパは夏樹に嫌みを言われているの」
「パパだって、意地悪なのーー」
「夫婦ケンカは犬でも食わぬ。だから、ケンカをしないでね」 
「ケンカのタネを食べてあげているのよー」 
「それなのに、ケンカが減らないの」 
「いつも、お腹がいっぱいになるの。デザートがいいのに」 
「デザートは夏樹から止められているから悲しいの」
「今度、犬用のデザートを探してみるよ」

 俺も黒崎も緊張している。お互いに思いやる会話もした。軽く交わす冗談、言い合いが面白い。こうしてゆっくりと話せることに感謝している。そして、話せなくても通じる気持ちがあることにあると思う。今日はどんな一日になるだろう。妹と弟は黒崎のことを好きになってもらえるだろうか。

 交差点を右折した後、車が店の駐車場に入った。その時、黒崎が言った。お母さん達が居るのが見えたそうだ。俺は胸の鼓動を高鳴らせながら、窓から外を眺めた。
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