163 / 164
16-4
しおりを挟む
午前0時。
繁華街にある丸池広場公園へ着いた。さっきまで話していたのは、俺が告白した時のことだった。夏樹からからかわれて、彼の頬をつねってやった。夏樹が笑い出し、もっと引っ張ってやると、もっとからかわれた。こういう会話が幸せだ。そして、気恥ずかしさも生まれた。夏樹も同じらしい。照れくさくなったと言い出した時、アンがあくびをした。普段は寝ている時間だ。早く帰らないといけないが、今日だけは堪えてもらいたい。夏樹も同じ事を考えていたようで、お互いに微笑み合った。
「黒崎さんが出張から帰ってくる日、連絡が来なかったから不安だったんだ。パンケーキを食べた帰りに痴漢にあったんだ。覚えている?」
「ああ。覚えている」
「その時、黒崎さんが現われたんだ。本当なら会社へ戻っていたんだよね?近くに用があったって言っても、あの時間に会うなんて不思議だね?」
「用を済ませた後、タクシーに乗り込む前に、お前に連絡を取ろうとした。その時に広場が気になって、立ち寄った」
「不思議な力が働いたね。これからは、どこへ行くのも一緒だよ」
「当たり前だ」
「都内の家をさがしてくれているじゃん。俺の居心地の良い場所を探してくれているんだよね?あんたが居心地の良い場所が良い」
「なかなか見つからない。だが、間に合わす」
「見つからないなら、作り出せばいいと思うんだ。そうマデリンおばあさんからアドバイスされたんだよ。幸せは近くにあるんだ。高い塔から眺めてもいいんだ。灯台下暗しでもいいん。エデンを見つけて、大事していこうね!」
夏樹から手を握られた。ふと、父の家に引っ越すのはどうかと思いついた。彼はどう返事をするだろうか。まだ早い気がする。しかし、一緒に庭を眺めたいと思った。
「夏樹。お前と一緒に庭の夏椿を眺めたい」
「うん。夏椿は一日花だよね。咲いた花は、その日のうちに落ちてしまう。それでもめげずに、来年も花を咲かせる。派手じゃないけど、綺麗な白い花だよ。喧嘩も強いレスキュー天使が、一緒に観に行くよ」
「……幸せにする。誓う」
「……俺も誓うよ!」
自然と身体が近づいていった。お互いの唇から伝わる体温が心地よく感じ、触れ合ううちに溶け合った。そして、外灯からの光で出来た影も、ひとつになった。
俺は心のドアを閉めていたが、夏樹から引き出されてしまった。彼が戦士になり、俺のことを守ってくれた。そして、人に寄り添いながら、夜空に浮かぶ星を眺める優しい子という顔も彼自身だ。いくつも表情を変える。
頭に浮かんだのは、光に包まれた遊園地だ。
メリーゴーランドを背景に、天使が微笑んでいる。
ーー夏樹。
俺のことを好きになってくれてありがとう。
いつまでも愛している。
now and for ever. <END>
繁華街にある丸池広場公園へ着いた。さっきまで話していたのは、俺が告白した時のことだった。夏樹からからかわれて、彼の頬をつねってやった。夏樹が笑い出し、もっと引っ張ってやると、もっとからかわれた。こういう会話が幸せだ。そして、気恥ずかしさも生まれた。夏樹も同じらしい。照れくさくなったと言い出した時、アンがあくびをした。普段は寝ている時間だ。早く帰らないといけないが、今日だけは堪えてもらいたい。夏樹も同じ事を考えていたようで、お互いに微笑み合った。
「黒崎さんが出張から帰ってくる日、連絡が来なかったから不安だったんだ。パンケーキを食べた帰りに痴漢にあったんだ。覚えている?」
「ああ。覚えている」
「その時、黒崎さんが現われたんだ。本当なら会社へ戻っていたんだよね?近くに用があったって言っても、あの時間に会うなんて不思議だね?」
「用を済ませた後、タクシーに乗り込む前に、お前に連絡を取ろうとした。その時に広場が気になって、立ち寄った」
「不思議な力が働いたね。これからは、どこへ行くのも一緒だよ」
「当たり前だ」
「都内の家をさがしてくれているじゃん。俺の居心地の良い場所を探してくれているんだよね?あんたが居心地の良い場所が良い」
「なかなか見つからない。だが、間に合わす」
「見つからないなら、作り出せばいいと思うんだ。そうマデリンおばあさんからアドバイスされたんだよ。幸せは近くにあるんだ。高い塔から眺めてもいいんだ。灯台下暗しでもいいん。エデンを見つけて、大事していこうね!」
夏樹から手を握られた。ふと、父の家に引っ越すのはどうかと思いついた。彼はどう返事をするだろうか。まだ早い気がする。しかし、一緒に庭を眺めたいと思った。
「夏樹。お前と一緒に庭の夏椿を眺めたい」
「うん。夏椿は一日花だよね。咲いた花は、その日のうちに落ちてしまう。それでもめげずに、来年も花を咲かせる。派手じゃないけど、綺麗な白い花だよ。喧嘩も強いレスキュー天使が、一緒に観に行くよ」
「……幸せにする。誓う」
「……俺も誓うよ!」
自然と身体が近づいていった。お互いの唇から伝わる体温が心地よく感じ、触れ合ううちに溶け合った。そして、外灯からの光で出来た影も、ひとつになった。
俺は心のドアを閉めていたが、夏樹から引き出されてしまった。彼が戦士になり、俺のことを守ってくれた。そして、人に寄り添いながら、夜空に浮かぶ星を眺める優しい子という顔も彼自身だ。いくつも表情を変える。
頭に浮かんだのは、光に包まれた遊園地だ。
メリーゴーランドを背景に、天使が微笑んでいる。
ーー夏樹。
俺のことを好きになってくれてありがとう。
いつまでも愛している。
now and for ever. <END>
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる
衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。
男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。
すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。
選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。
二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。
元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる