海のそばの音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 23時58分。

 家に帰ってきた。打ち上げの店は早瀬が行ったことのある店だった。バンドマン時代に打ち上げで使ったことがあるらしい。懐かしいと言っていた。植本さんの行きつけの店でもある。俺達はそこで美味しい料理とウーロン茶で乾杯し、楽しい時間を過ごしてきた。今日は俺の誕生日だったから、誕生日のケーキも用意されていた。先月から計画していたのだと植本さんから聞き、こんなに嬉しい誕生日は初めてだと思った。

 店では佐久弥にからまれた。ずっと俺の隣にいた。そして、反対側には植本さんだ。夢のようだ。早瀬は向かいにいて、遠藤さんと話し込んでいた。俺が食べている間、佐久弥の世話を焼いた。なんだか手の掛かる奴だと思うと、可愛いとさえ思い始めた。

「ふうーーー。裕理さーーん。手はどう?」

 今、風呂から出てきたところだ。心配なのは早瀬の手だ。店でも痛がっていた。でも、嬉しい痛みだとも言っていた。しかし、そのまま放置すると良くないから、湿布を貼った方がいいだろう。早瀬はリビングにいた。もう今日は書斎にこもらないと言っていたから良かった。

 早瀬のそばに行くと、自分と同じボディーソープの匂いがいした。帰ったときに一緒に風呂に入ろうと誘われたが、断ってしまった。エロい事をするに決まっているからだ。今日はもう体を休めた方がいい。

 冷蔵庫から水を取り出して、グラスに注ぎ入れた。早瀬も分も入れた。それをリビングのソファーに持って行き、早瀬に渡した。両手が痛いと言っているが、持てるだろうか。

「裕理さん。持てる?」
「持てるよ。ありがとう」

 お互いに水を飲み干した。喉が渇いていたようだ。早瀬から空のグラスを受け取り、テーブルに置いた。そして、俺も隣に座った。

「湿布を貼ろうか?」
「寝る前でいいよ。悠人君。こっちにおいで」
「うん」

 早瀬から抱き寄せられた。そして、頬にキスをされた。さらに押し倒されて抵抗した。明日は平日だ。お互いに仕事と学校がある。それに、今朝も抱かれた。もう今日はいいだろう。しかし、早瀬の体が熱い。

「ちょっと、どこに触っているんだよ」
「こことか、ここ」
「だめだって」
「いいじゃないか。誕生日だろう。今朝は君が寝てしまったから、満足できなかった」
「だって、眠かったんだもん」
「俺は今、腹ぺこだ」
「ん……」
 
 胸の上や首筋を優しく撫でられた。そして、指先で刺激された。手が痛いのではないだろうか。肌をつまんだり押したりして遊んでいる。俺の方はくすぐったい。

「んん。くすぐったいよ」
「まだその気にならないか?」
「ならないよ。もう寝ようよ」
「俺は眠れない」

 早瀬が本格的に覆い被さってきた。そして、Tシャツをはぐられて、胸の上を唇が滑っていった。何度か音の立つキスを受け取り、首筋まで来た時に、優しく噛みつかれた。早瀬の息が熱い。彼の左手は、俺の太ももの内側にある。指先が肌の上を辿っていった。そして、刺激された。

「やだよ」
「ここは嫌がっていないみたいだ。熱くなってきたね」
「もう寝ようってば」
「今日はどうだった?」
「最高だったよ!イベントは楽しかったし、ライブでは共演できたし。打ち上げの店では祝ってもらえたし……」
「俺は佐久弥に妬いた。すっかり仲良しじゃないか」
「気を遣っていたんじゃないの?佐久弥、俺に嫌みを言ったことがあるから」
「君のことが好みなのは本音だろう。ずっと隣だったね」
「裕理さんは遠藤さんの隣にいたじゃん。ずっと話していたから、話す間がなかったよ。でも、同じ家に帰ってくるんだから、いいじゃん」
「慰めてくれ。目の前でイチャつかれた」

 早瀬が笑っている。まるでフラれたとでも言いたいようだ。
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