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近くまで行くと、棒を突きつけられているのは早瀬さんだった。棒はモップだった。それを持っているのは悠人だった。その後ろでは、聡太郎が困惑顔になっている。何があったのだろう。人通りの多い歩道の隅の方で、早瀬さんがため息をついている。悠人は早瀬さんにモップを突きつけたままで、彼のことを真っ直ぐに見つめている。
「桜木君とは同じ職場だ」
「なおさら悪いですよ!セクハラ、パワハラ!」
「違うよ……」
「本人はそう言いますよね」
「はあ……」
「ため息をつきたいのは、こっちだよ!変質者!」
「誤解だよ……」
「本人が決めるもんじゃないから。この目で見たんだよ」
「何もしていない……」
「スマホを勝手に操作していただろ?店の中から見ていたんだよ」
「……悠人君。何でもないから」
「桜木さんはっ。いい人過ぎます!」
悠人がヒートアップしている。近くにいる俺達のことに気づきそうにもない。聡太郎まで焦っているから、よっぽどのことが起きたに違いない。そう思って話を聞いていると、早瀬さんが聡太郎に冗談でじゃれついていたのを、悠人が誤解したようだ。変質者と言ったからだ。早く止めないといけない。それなのに、黒崎が意地悪そうに笑っている。
「ピンチだ。悠人君だろう?元気な子だな」
「笑いごとじゃないだろ。仲裁して来るよ」
「もう少し見たい」
「黒崎さんっ」
「分かった」
黒崎が笑いながら2人の間に入って行った。そしてモップの柄を握ると、グイっと下げた。早瀬さんが驚いた顔をして、悠人がヨロけた。下げた力が強いからだ。黒崎が笑っているから、わざとだと分かった。
「常務。実は……」
「上司の人ですか?」
「そうだよ。話を聞かせてくれ」
悠人が黒崎のことを見つめた。そして、早瀬さんのことを見て言った。
「この人が、桜木さんのことを追いかけているんです。この間はスマホを奪い取られていたし、さっきは嫌がっているのに、しつこくしていたんです。俺は大学の後輩で、久田悠人と申します」
さっきまでの怒気がなくなり、悠人が落ち着いた口調になっていた。黒崎が静かに聞いた後、肩を揺すって笑い出した。悠人が顔をしかめている。
「笑い事じゃないですよ?」
「……すまない。夏樹、こっちへ来い」
「え?なつきー?」
やっと俺のことに気づいた。どういう反応をしていいのか迷いながら、彼らのそばへ歩いて行った。そして、ここでは話しづらいからと、店の裏へ移動した。
「桜木君とは同じ職場だ」
「なおさら悪いですよ!セクハラ、パワハラ!」
「違うよ……」
「本人はそう言いますよね」
「はあ……」
「ため息をつきたいのは、こっちだよ!変質者!」
「誤解だよ……」
「本人が決めるもんじゃないから。この目で見たんだよ」
「何もしていない……」
「スマホを勝手に操作していただろ?店の中から見ていたんだよ」
「……悠人君。何でもないから」
「桜木さんはっ。いい人過ぎます!」
悠人がヒートアップしている。近くにいる俺達のことに気づきそうにもない。聡太郎まで焦っているから、よっぽどのことが起きたに違いない。そう思って話を聞いていると、早瀬さんが聡太郎に冗談でじゃれついていたのを、悠人が誤解したようだ。変質者と言ったからだ。早く止めないといけない。それなのに、黒崎が意地悪そうに笑っている。
「ピンチだ。悠人君だろう?元気な子だな」
「笑いごとじゃないだろ。仲裁して来るよ」
「もう少し見たい」
「黒崎さんっ」
「分かった」
黒崎が笑いながら2人の間に入って行った。そしてモップの柄を握ると、グイっと下げた。早瀬さんが驚いた顔をして、悠人がヨロけた。下げた力が強いからだ。黒崎が笑っているから、わざとだと分かった。
「常務。実は……」
「上司の人ですか?」
「そうだよ。話を聞かせてくれ」
悠人が黒崎のことを見つめた。そして、早瀬さんのことを見て言った。
「この人が、桜木さんのことを追いかけているんです。この間はスマホを奪い取られていたし、さっきは嫌がっているのに、しつこくしていたんです。俺は大学の後輩で、久田悠人と申します」
さっきまでの怒気がなくなり、悠人が落ち着いた口調になっていた。黒崎が静かに聞いた後、肩を揺すって笑い出した。悠人が顔をしかめている。
「笑い事じゃないですよ?」
「……すまない。夏樹、こっちへ来い」
「え?なつきー?」
やっと俺のことに気づいた。どういう反応をしていいのか迷いながら、彼らのそばへ歩いて行った。そして、ここでは話しづらいからと、店の裏へ移動した。
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