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何かあるに違いない。普段は近くに座らないからからだ。この2人は入学当初に絡んで来たことがある。悠人から守られたことで、さらに彼と仲良くなれるきっかけにもなった。
(今頃になって絡んでくるのかな。どうしてだろう。絡まれる理由が思い当たらないんだけど……)
ざわついている教室の中にいるのに、北添と山下、俺と悠人の4人が無言で向かい合った。悠人が2人を睨みつけると、山下が目を逸らした。すると、北添が口を開いた。
「中山君。経済のレポート課題、三宮教授が『優』を出したんだったよね?さすがだね。パートナーさんの力添え?黒崎製菓の。他にもあるけど」
「他の用件は何?まとめて聞くよ」
「久田って思わせぶりだよなー」
「なにが?」
「だから、思わせぶりなんだってさー」
奥村さんの関係だろうか。何を言うのだろうか。まともに取り合う気はない。近くにいた宮下が俺たちの間に入ろうとしたから、大丈夫だということを手で合図した。
北添が押し付けてきたスマホ画面には、悠人と早瀬さんが並んで写っていた。仲の良さそうな自撮りだ。悠人の方を見なくても、どんな表情になっているのか分かる。すぐに2人には退場してもらおうと思ったから、北添達にはっきり言った。
「早く用件を言えよ」
「え……」
「奥村さんが、久田の……」
「話がループになって始まらないよ」
「なんだよ!?」
「早く言え」
「……っ」
北添の顔が引きつり、山下が出入り口の方を見た。そこには奥村が立っていた。この授業は受けるはずがなく、この写真の関係で来たのだろう。俺が言い返したからなのか、北添の頬に赤みが差した。そして、山下が奥村の方へ行ったことで、顔をひきつらせた北添が立ち上がり、席を移動する素振りを見せた。
「山下君が居ないと、何も言えないんだ?」
「べつに……っ」
「早く言え。二度言わせるな」
北添が荷物を持って動こうとした進行方向の壁に、右足を叩きつけた。その音が教室内に響き渡り、さすがに周りから注目を浴びた。それに構うことなく、北添のことを睨みつけた。
するとその時だ。山下が戻って来たから北添の表情が明るくなった。さらに追い打ちを掛けようとすると、背後から肩を引かれた。
「……夏樹!」
「……森本?」
そこにいたのは森本だった。彼もこの授業を受けるから、ここにいても不思議ではない。久しぶりに見る焦った様子をしていた。俺が暴力的になろうとした時、こういう顔をしている。すると、はっと我に返った俺の隙を見て、北添と山下が逃げ出そうとした。それを山崎が阻んだ。話があると言いながら。すると、北添達の前に悠人が立った。そして、何かを差し出した。それは、俺が持ってきたマフィンだった。
「んふーー!」
「はい!これもだよ!」
北添達の方へ視線を向けて、ぎょっとした。悠人が彼らの口の中へ、一口サイズのマフィンをいくつも放り込み始めたからだ。彼らの頬が膨れている。
「わぐうう……っ」
「これでも食べて機嫌を直せよ!」
「げほっ」
「はい、俺の飲みかけだけど」
喉に詰まりかけた北添に、悠人がペットボトルの紅茶を差し出した。北添がそれを飲み干して落ち着いた後、悠人が彼らの頭を撫で始めた。
「良い子だね~?よしよし~」
「イヌじゃない!」
そんなやり取りが続いているうちに苛立ちが治まり、笑いが込み上げてきた。俺が笑い出すと、教室内の生徒たちも笑い始めた。教室内の空気も変わってきた。
この授業の後、北添と山下が俺に謝ってきた。これからもよろしくと、お互いに握手をした。その時、悠人と山崎はマフィンを美味しそうに頬張り、森本は冷静な目でテキストを目で追い、何もなかったかのように振舞っていた。それが心地よくて、言葉に言い表せなかった。
(今頃になって絡んでくるのかな。どうしてだろう。絡まれる理由が思い当たらないんだけど……)
ざわついている教室の中にいるのに、北添と山下、俺と悠人の4人が無言で向かい合った。悠人が2人を睨みつけると、山下が目を逸らした。すると、北添が口を開いた。
「中山君。経済のレポート課題、三宮教授が『優』を出したんだったよね?さすがだね。パートナーさんの力添え?黒崎製菓の。他にもあるけど」
「他の用件は何?まとめて聞くよ」
「久田って思わせぶりだよなー」
「なにが?」
「だから、思わせぶりなんだってさー」
奥村さんの関係だろうか。何を言うのだろうか。まともに取り合う気はない。近くにいた宮下が俺たちの間に入ろうとしたから、大丈夫だということを手で合図した。
北添が押し付けてきたスマホ画面には、悠人と早瀬さんが並んで写っていた。仲の良さそうな自撮りだ。悠人の方を見なくても、どんな表情になっているのか分かる。すぐに2人には退場してもらおうと思ったから、北添達にはっきり言った。
「早く用件を言えよ」
「え……」
「奥村さんが、久田の……」
「話がループになって始まらないよ」
「なんだよ!?」
「早く言え」
「……っ」
北添の顔が引きつり、山下が出入り口の方を見た。そこには奥村が立っていた。この授業は受けるはずがなく、この写真の関係で来たのだろう。俺が言い返したからなのか、北添の頬に赤みが差した。そして、山下が奥村の方へ行ったことで、顔をひきつらせた北添が立ち上がり、席を移動する素振りを見せた。
「山下君が居ないと、何も言えないんだ?」
「べつに……っ」
「早く言え。二度言わせるな」
北添が荷物を持って動こうとした進行方向の壁に、右足を叩きつけた。その音が教室内に響き渡り、さすがに周りから注目を浴びた。それに構うことなく、北添のことを睨みつけた。
するとその時だ。山下が戻って来たから北添の表情が明るくなった。さらに追い打ちを掛けようとすると、背後から肩を引かれた。
「……夏樹!」
「……森本?」
そこにいたのは森本だった。彼もこの授業を受けるから、ここにいても不思議ではない。久しぶりに見る焦った様子をしていた。俺が暴力的になろうとした時、こういう顔をしている。すると、はっと我に返った俺の隙を見て、北添と山下が逃げ出そうとした。それを山崎が阻んだ。話があると言いながら。すると、北添達の前に悠人が立った。そして、何かを差し出した。それは、俺が持ってきたマフィンだった。
「んふーー!」
「はい!これもだよ!」
北添達の方へ視線を向けて、ぎょっとした。悠人が彼らの口の中へ、一口サイズのマフィンをいくつも放り込み始めたからだ。彼らの頬が膨れている。
「わぐうう……っ」
「これでも食べて機嫌を直せよ!」
「げほっ」
「はい、俺の飲みかけだけど」
喉に詰まりかけた北添に、悠人がペットボトルの紅茶を差し出した。北添がそれを飲み干して落ち着いた後、悠人が彼らの頭を撫で始めた。
「良い子だね~?よしよし~」
「イヌじゃない!」
そんなやり取りが続いているうちに苛立ちが治まり、笑いが込み上げてきた。俺が笑い出すと、教室内の生徒たちも笑い始めた。教室内の空気も変わってきた。
この授業の後、北添と山下が俺に謝ってきた。これからもよろしくと、お互いに握手をした。その時、悠人と山崎はマフィンを美味しそうに頬張り、森本は冷静な目でテキストを目で追い、何もなかったかのように振舞っていた。それが心地よくて、言葉に言い表せなかった。
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