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3-2(黒崎視点)
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午前7時半。
スーツに着替えて下へ降りていくと、夏樹が洋服ブラシを持って待っていた。埃ひとつない姿で出勤するために。深川副社長から教え込まれた方法だ。出勤前にスーツにブラシを掛ける。これを日課にすれば、自然と清潔感を保てる。20歳の秘書時代から数えると、16年間続いている。夏樹との年齢差と同じだと気づいた。
「黒崎さん。背中を掛けるからね。今日のスーツ、アマトリチャーナだよね?大事な会議があるの?」
「ああ。ワタベ電機の代表取締役と会う。アッタンリーニだぞ」
「そうだっけ?6日後に誕生日だね。37歳か~。33歳だったのにね。あの時は」
「16歳差になる。おじさんは嫌いか?」
「そんなことないよ。昨夜はビールと湿布の匂いがしてたけど。今はいい感じだよ」
ビールの本数を減らされている状況だ。会食で飲む分、やめておけといって。自覚しているから言い返しができない。さらに追加で憎まれ口を叩かれて、唇を塞いでやった。わざと濃厚にしたのはお仕置きだ。
そして、家の前にタクシーが停車した。規則に従って出勤し始めて、2年半以上が経った。前職で社長を務めていた時は、自分の運転で出勤していた。その方が小回りが利くからだ。
高校時代の夏樹の送迎をして、車内で会話をした。その時間が無くなり、当初は寂しかった。夏樹は大学までは電車で通学している。たった一人で。大きなことが起こらずに済んでいるのは、近所の人の協力がある。
門のそばには、その人達が立っている。今朝は4人で見送られている。夏樹が可愛がられて、駅までの道や、通学電車で一緒になることが多い。助かっている。さっそく声を掛けた。
「……宮川さん。和菓子をありがとうございました。父も一緒に頂きました。さっそく買い求めていました」
「こちらこそ。ミルクカボチャ食パンをありがとう」
「……田辺さん。先日は夏樹がお世話になりました」
「いいえ。とんでもない。主人も喜んでいました」
「いってらっしゃーい」
女性達へ微笑みを返した後、夏樹とアンの頭をなでた。行って来る、いってらっしゃい。この短いやり取りに幸せを感じている。
夏樹が着ている粋な柄をした綿入り半纏が、よく似合っている。和柄を好む本人のために、怜がデザインした柄の生地を提供してくれた。さらに、一貴という4番目の兄がミシンを使い、この半纏を作ってくれた。首に巻き付けてあるのは、冷え防止の手ぬぐいだ。いっそう可愛い。
「夏樹君。後でミカンを持ってくるわ。美味しくて、多めに買ったの」
「ありがとうございます。黒崎さんも好きなんです」
「本当に歌手のナツキ君なのかしら?ステージだと激しいのに。こうしている時は、おっとりしているから」
「よく言われるんだ~」
ステージとは別人だという話だ。色気のあるイケメンから、のんびりした男の子になる。近所の人達が、本当に夏樹君かしら?と、人形のような顔立ちの彼を眺めていた。家の中では、色気を醸し出して翻弄されている。とても外では言えない。
タクシーに乗り込んだ後、全員へ微笑みかけた。走り出した後で外を眺めると、夏樹を中心に物々交換が始まっていた。おかげで、安心して出勤することが出来た。
スーツに着替えて下へ降りていくと、夏樹が洋服ブラシを持って待っていた。埃ひとつない姿で出勤するために。深川副社長から教え込まれた方法だ。出勤前にスーツにブラシを掛ける。これを日課にすれば、自然と清潔感を保てる。20歳の秘書時代から数えると、16年間続いている。夏樹との年齢差と同じだと気づいた。
「黒崎さん。背中を掛けるからね。今日のスーツ、アマトリチャーナだよね?大事な会議があるの?」
「ああ。ワタベ電機の代表取締役と会う。アッタンリーニだぞ」
「そうだっけ?6日後に誕生日だね。37歳か~。33歳だったのにね。あの時は」
「16歳差になる。おじさんは嫌いか?」
「そんなことないよ。昨夜はビールと湿布の匂いがしてたけど。今はいい感じだよ」
ビールの本数を減らされている状況だ。会食で飲む分、やめておけといって。自覚しているから言い返しができない。さらに追加で憎まれ口を叩かれて、唇を塞いでやった。わざと濃厚にしたのはお仕置きだ。
そして、家の前にタクシーが停車した。規則に従って出勤し始めて、2年半以上が経った。前職で社長を務めていた時は、自分の運転で出勤していた。その方が小回りが利くからだ。
高校時代の夏樹の送迎をして、車内で会話をした。その時間が無くなり、当初は寂しかった。夏樹は大学までは電車で通学している。たった一人で。大きなことが起こらずに済んでいるのは、近所の人の協力がある。
門のそばには、その人達が立っている。今朝は4人で見送られている。夏樹が可愛がられて、駅までの道や、通学電車で一緒になることが多い。助かっている。さっそく声を掛けた。
「……宮川さん。和菓子をありがとうございました。父も一緒に頂きました。さっそく買い求めていました」
「こちらこそ。ミルクカボチャ食パンをありがとう」
「……田辺さん。先日は夏樹がお世話になりました」
「いいえ。とんでもない。主人も喜んでいました」
「いってらっしゃーい」
女性達へ微笑みを返した後、夏樹とアンの頭をなでた。行って来る、いってらっしゃい。この短いやり取りに幸せを感じている。
夏樹が着ている粋な柄をした綿入り半纏が、よく似合っている。和柄を好む本人のために、怜がデザインした柄の生地を提供してくれた。さらに、一貴という4番目の兄がミシンを使い、この半纏を作ってくれた。首に巻き付けてあるのは、冷え防止の手ぬぐいだ。いっそう可愛い。
「夏樹君。後でミカンを持ってくるわ。美味しくて、多めに買ったの」
「ありがとうございます。黒崎さんも好きなんです」
「本当に歌手のナツキ君なのかしら?ステージだと激しいのに。こうしている時は、おっとりしているから」
「よく言われるんだ~」
ステージとは別人だという話だ。色気のあるイケメンから、のんびりした男の子になる。近所の人達が、本当に夏樹君かしら?と、人形のような顔立ちの彼を眺めていた。家の中では、色気を醸し出して翻弄されている。とても外では言えない。
タクシーに乗り込んだ後、全員へ微笑みかけた。走り出した後で外を眺めると、夏樹を中心に物々交換が始まっていた。おかげで、安心して出勤することが出来た。
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