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6-4(黒崎視点)
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13時半。
営業企画部内のミーティングを終えた。ここの役員にはドアが存在せずに、常にオープンな状態だ。社員たちは日常的な光景として受け取っており、遠慮する様子がない。これが役員時代の成果だとすると、十分に胸を誇れる。あのままの状況では、船が沈みかけていただろう。
年功序列はある程度は取り払った。全て撤廃しないのは、成果主義だけに偏らせないためだ。この人がいると和む、面白みがある、そういう人材を役職ポストに残してあるのは、深川副社長の考え方だ。元は父の意思だっだそうだ。
課長達がデスクに戻るなか、役員室を見渡した。3分の1の役員が、5月に入れ替わる。顔ぶれを見ただけで分かるほど、俺が副社長を務めやすい人事だ。さらに ”早瀬専務、田所常務” という存在がある。
そして、夏樹という存在がある。今更だと思いながらも、理想を思い描いた。夏樹が家庭菜園を楽しみ、絵本を書く。開発部の仕事は家の中でやる。帰宅すると部屋が温まっており、おかえりと迎えられる。
穏やかな日常の中に、あの子が暮らしている。歌っている姿が生き生きとしており、それを観ていたい。本人も好きな暮らしだと言っている。
しかし、夏樹は地位を欲しがった。激しいステージのような世界をだ。俺はそれをコントロールする。そう言ってあるにも関わらず、あの子は分かっていない。
今朝の話と子供のような反応は、苛立つまでの内容ではない。想定内のものだ。それを修正する方法を探る方が悩ましい。夏樹の機嫌を直す方法だ。それを考えていると、早瀬から声を掛けられた。話している最中だった。
「黒崎常務。俺の話を聞いていますか?」
「……聞いていない。夏樹の機嫌が悪い。あの子が好きな新規店はあるか?」
「またなのか……。喧嘩の内容によるよ」
直球で話すと、早瀬が小さく吹き出して笑い出した。ここがオフィスでなければ、腹を抱えて笑いたいところだと言いながら。社員達まで笑っている。
「お使いをさせてやれとは言わない。夏樹君の走り出しを止める目的だろう?」
「何でも一足飛びをする。そういう面からも気をつけている。閉じ込める発想は減った。……お前はそれがない。最初から」
「晴れた空の下、雨の下。悠人は俺のそばにいる。輝くのは大歓迎だ」
そう言い切った姿は自信に溢れている。早瀨自身は昇進することを、心の底では拒んでいた時期は終わった。早瀬家から求められる姿になることをだ。
この一年間で、周囲の者には変化が起きた。重いものを抱え込んでいた一貴は、気のいい兄貴に変化した。長年の ”憧れの男の子” である早瀬は、等身大の友人になった。早瀬になりたいと思う気持ちが、恋愛感情として表されたのは、過去のことになっただろう。すると、怪訝そうに見つめ返された。
「愛の告白はやめてくれ」
「……するわけがないだろう」
「あんたは島川さんの弟だから……。気分を変えて、畑の世話を手伝ったらどうだ?夏樹君には、そう連絡するのをお勧めするよ」
「……素直に謝る。助かった」
「そんなに嫌なのか?ほのぼのした空間は似合わないけど」
「ああ」
笑われている間に、オフィスを出た。待合スペースでは、取引先の社員の姿があった。会釈のみを返して電話をかけた。周りの者が遠慮がちに去って行くのは、俺の空気からだろう。慌てて見えるだろう。こんな姿を晒すのは、夏樹以外の理由などない。それを分かってもらいたい。
呼び出し音が消えて、落ち着いた声が聞こえて来た。"やっと電話をかけて来たね。やっと休憩?"と。待っていたのか。何か買って帰ると言うと、ケーキだけ受け取ってきてと返って来た。夜は寒いからだと。少しは機嫌が直ったのかと、胸を撫で下ろす気分になった。俺もまた変化したようだ。
営業企画部内のミーティングを終えた。ここの役員にはドアが存在せずに、常にオープンな状態だ。社員たちは日常的な光景として受け取っており、遠慮する様子がない。これが役員時代の成果だとすると、十分に胸を誇れる。あのままの状況では、船が沈みかけていただろう。
年功序列はある程度は取り払った。全て撤廃しないのは、成果主義だけに偏らせないためだ。この人がいると和む、面白みがある、そういう人材を役職ポストに残してあるのは、深川副社長の考え方だ。元は父の意思だっだそうだ。
課長達がデスクに戻るなか、役員室を見渡した。3分の1の役員が、5月に入れ替わる。顔ぶれを見ただけで分かるほど、俺が副社長を務めやすい人事だ。さらに ”早瀬専務、田所常務” という存在がある。
そして、夏樹という存在がある。今更だと思いながらも、理想を思い描いた。夏樹が家庭菜園を楽しみ、絵本を書く。開発部の仕事は家の中でやる。帰宅すると部屋が温まっており、おかえりと迎えられる。
穏やかな日常の中に、あの子が暮らしている。歌っている姿が生き生きとしており、それを観ていたい。本人も好きな暮らしだと言っている。
しかし、夏樹は地位を欲しがった。激しいステージのような世界をだ。俺はそれをコントロールする。そう言ってあるにも関わらず、あの子は分かっていない。
今朝の話と子供のような反応は、苛立つまでの内容ではない。想定内のものだ。それを修正する方法を探る方が悩ましい。夏樹の機嫌を直す方法だ。それを考えていると、早瀬から声を掛けられた。話している最中だった。
「黒崎常務。俺の話を聞いていますか?」
「……聞いていない。夏樹の機嫌が悪い。あの子が好きな新規店はあるか?」
「またなのか……。喧嘩の内容によるよ」
直球で話すと、早瀬が小さく吹き出して笑い出した。ここがオフィスでなければ、腹を抱えて笑いたいところだと言いながら。社員達まで笑っている。
「お使いをさせてやれとは言わない。夏樹君の走り出しを止める目的だろう?」
「何でも一足飛びをする。そういう面からも気をつけている。閉じ込める発想は減った。……お前はそれがない。最初から」
「晴れた空の下、雨の下。悠人は俺のそばにいる。輝くのは大歓迎だ」
そう言い切った姿は自信に溢れている。早瀨自身は昇進することを、心の底では拒んでいた時期は終わった。早瀬家から求められる姿になることをだ。
この一年間で、周囲の者には変化が起きた。重いものを抱え込んでいた一貴は、気のいい兄貴に変化した。長年の ”憧れの男の子” である早瀬は、等身大の友人になった。早瀬になりたいと思う気持ちが、恋愛感情として表されたのは、過去のことになっただろう。すると、怪訝そうに見つめ返された。
「愛の告白はやめてくれ」
「……するわけがないだろう」
「あんたは島川さんの弟だから……。気分を変えて、畑の世話を手伝ったらどうだ?夏樹君には、そう連絡するのをお勧めするよ」
「……素直に謝る。助かった」
「そんなに嫌なのか?ほのぼのした空間は似合わないけど」
「ああ」
笑われている間に、オフィスを出た。待合スペースでは、取引先の社員の姿があった。会釈のみを返して電話をかけた。周りの者が遠慮がちに去って行くのは、俺の空気からだろう。慌てて見えるだろう。こんな姿を晒すのは、夏樹以外の理由などない。それを分かってもらいたい。
呼び出し音が消えて、落ち着いた声が聞こえて来た。"やっと電話をかけて来たね。やっと休憩?"と。待っていたのか。何か買って帰ると言うと、ケーキだけ受け取ってきてと返って来た。夜は寒いからだと。少しは機嫌が直ったのかと、胸を撫で下ろす気分になった。俺もまた変化したようだ。
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