上弦の月の天使~結ばれた約束の夜

夏目奈緖

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 どのぐらいの時間が経ったのだろうか。気だるくて動きづらい。隣には黒崎がいなくて、手で探ってもシーツしかない。うっすら目を開けると、着替えを済ませた彼がやって来た。お茶のペットボトルを持っている。冬でも冷たいものが飲みたい気分だなんて。

 体を起こされて、ペットボトルのお茶を差し出された。微睡んだままで飲んだ後、黒崎の胸にもたれ掛かった。さっきよりも、体温が下がっていると思った。

「もう一回どうだ?ディナーへ直行なら時間がある」
「さすがにいいよ。……そういう意味じゃないって。どこに触っているんだよ?」
「さっきまで触っていたぞ?ムードを残しておけ」
「イヤらしい触り方をするからだよ。変態親父」

 足を振り上げて軽く蹴ってやると、足首を掴まれて噛みつかれた。まだ余韻が残っているから、それだけのことで身体が跳ねた。それを面白がり、爪先やくるぶしを舐められた。ますます変態みたいだ。

「変態みたいだって。ううん。その通りなんだよ」
「ここはどうだ?綺麗な太ももだ。もっと足を開いてくれ。ここを……」
「あ……、変態!こら、ああ……」
「期待に応えてやる。やりがいがある」

 色んなことをするわりには、二回目をする気はないのが分かった。ただ遊んでいるだけだ。それがいっそうスケベ親父度を増している。内ももを撫でたり吸いついたりされたおかげで、目が覚めて来た。

「それが狙いなの?そろそろ見て回りたいし」
「さあな。3階のフロアか。人が少なくなる頃合いだ。ゆっくり見られるぞ」
「黒崎さん……」
「もっと飲んでおけ」

 やっぱり俺のことを想っている。ほんの些細なことまで気づくから、その度に胸がきゅんとしている。お互いにまだ身体が熱くて、さっきまでのことを思い出すと恥ずかしい。チラッと見上げると、目元へ唇が押し当てられた。ここへ着いた時からワインを飲んで、ふんぞり返っていた姿とは反対だ。

「優しくなったね……、けほっ」
「最初から優しいつもりだ。喉が痛いのか?」
「平気だよ。加湿器をつけてくれたし。心配するなよ」

 お茶を持ったままで抱きついたから、零れそうになった。慌ててキャッチすると、抱きかかえられて膝の上に座らされた。照れるどころか微笑まれている。

 恥ずかしくないのかと、聞くだけ無駄だった。今度はいやらしさ満載に体を撫でられたからだ。そして、時計を見て顔が熱くなった。一時間も経っていたからだ。

「時間はたっぷりある。動けるようになるまで待つ」
「ありがとう。シャワーを浴びてくるよ。よいしょっと」
「手伝ってやる。まだ腰が重そうだ」
「はっきり言うなよ~っ」
「恥ずかしくない。激しめにした自覚がある。抱き上げてやる」
「近くにあるからいいってば……」

 黒崎からは色気が放たれている。ベッドの中の続きを連想させられた。ドキドキしていると、耳元で囁かれた。やっぱり遊んでいるのか。

「やめろよ。大魔王の魔力は使用禁止だよ」
「お前も色気を抑えておけ」
「ええ?俺にあるのかよ?」
「……何でもない」

 決まり悪そうにして目を逸らされた。ますます恥ずかしくなり、バスルームへ行った。逃げるようにして。
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