上弦の月の天使~結ばれた約束の夜

夏目奈緖

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 ぼんやりしていると、体が重くなって来た。抱き寄せられた後、少し寝ておけと囁かれた。絵本を読んでやるから、聴きながら眠れと。

「まだ眠くないよ。……子ども扱いするなって。ご飯はどうする?お腹空いているよね?」
「カウンターのサンドイッチをつまんでおく。用意周到だな。絵本を読んでやる。お前が書いたものにする。新鮮な気持ちになるだろう?」
「創作のアイデアが浮かぶね……」

 考えつかなかったと笑うと、出版社のサイトに掲載されているページを開いていた。

 これがいいと選んでくれたものは、主人公が大学生で、亡くなった祖母との思い出話だった。悠人から聞いた話から連想した作品だ。夢の中に入ると、小学生時代の主人公と祖母が会話をしていた。それを眺めている話だ。

 クリスマス前のことだ。自分よりも背が高かったモミの木が、だんだん低くなっていくのが不思議だった。祖母にどうしてなの?と聞いたところから始まる。黒崎が静かに語り始めた。

「……それはね。あなたが大きくなったからよ。……僕はクラスで小さい方なんだよ?……早く大きくなる子、ゆっくり大きくなる子。大人になっても同じなの。いろんな人がいるから楽しいのよ。……うん。モミの木も、ゆっくり大きくなっているのかな?……そうよ。追い越されないように、たくさん食べなさい。お野菜もね。……うん。晩御飯の支度のお手伝いをするよ」

 そして場面が変わる。主人公が大学生になった。キッチンで手伝いをしているのは、小学6年生になった主人公だった。急に背が高くなったと、祖母が驚いた。おばあちゃんより背が高いじゃないと。夢の中で眺めているのに、自分に話しかけられたかのようだった。咄嗟に、こう答えた。

「……大学生になったもん。170センチあるんだよ。……そう話しかけましたが、おばあちゃんには聞こえませんでした。少し寂しくなりました。……そっか。俺に気づいたわけないよね。150センチのおばあちゃんより、20センチも大きくなったんだよ。会って言いたかったなあ。……だんだんと2人の姿が遠くなり、おばあちゃんにお礼を伝えました。大きな声で、ありがとうと……」

 だんだん眠気が強くなり、身体が温かくなった。ふんわりと毛布の匂いがした。頭を撫でられているうちに、今度は体が軽くなったり重くなったりした。

 まぶたが暗くなったのは、照明を消されたからだろう。加湿器の音が聞こえて来たなと思った時、すぐに聞こえなくなった。それなのに、黒崎の声は聞こえている。どんなことを言ったのかは分からずに、そのまま眠った。
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