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10-1 バレンタインイベント(夏樹視点)
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2月14日、木曜日。午前6時。
今朝の我が家は普段より慌ただしい。午前中からテレビ収録があり、黒崎製菓主催のイベントにも参加するからだ。水族館での収録がメインで、イベントは短時間のみの撮影だ。
久しぶりに会う人が多いからと、あれこれ用意するものが増えた。朝ごはんを食べている黒崎の肩越しには、みんなに渡す沢山の紙袋が見えている。現場に向かうだけの状態になり安心したのに、今度は収録のことで緊張してきた。そういうわけで食欲が落ちている。
テーブルには洋食系のメニューが並んでいる。黒崎は普段と変わりなくガッツリ食べて、俺は小さめの器に入った、スープご飯を食べている。ささ身とネギを多めに入れてあるのに、黒崎からツッコミが入った。
「もっと食べておけ。それだけじゃ持たない」
「緊張して入らないんだよ。向こうでも食べるし。一発目からハンバーガーを食べるんだよ?大食い悠人と、羽音さんとのコラボ」
水族館内にある、カフェでの撮影も控えている。だから大丈夫だよと付け加えた後、驚いて言葉につまった。今回の撮影のタイムスケジュールを、黒崎が全て暗記していたからだ。現場到着時刻、水族館周辺、館内、カフェでのランチタイム。衣装提供のプラセルからは、担当者が張り付くことまで。
細かすぎて、自分でも覚えていないのに。お馴染みのテレビ局だから、心配することもないだろう。イベント会場からも近い。
「今日はイベントだけ付き添うんだよね?責任者として現場に張り付くんじゃなかったの?」
「今回からは橋本と枝川が担当する。俺はテレビ局の接待役だ」
「心配症だね、みんないるのに……。お義父さんもいるのに。……え?水族館でも張り付くのかよ?」
「そのとおりだ。途中からだが、俺も水族館の収録から見学する。……早く食事を済ませろ、間に合わないぞ」
何でもない事のように口にされたが、俺としては、恥ずかしさと戸惑いで言葉を無くした。父兄参観の状況になることが確定したからだ。
お義父さんが、今日の全ての収録を見学する。煙たがっていないが、あれこれと構われる恥ずかしさがある。しかし、心の底から楽しんでいるのが分かるから、来ないでくれとは言いたくない。
黒崎製菓を辞めた後、楽しみになるものが欲しいそうだ。最後に遊んだのは大学時代だし、その遊び方すら忘れてしまったと話していた。ウォーミングアップしたいとも言っていたから、できるだけ協力したい。
そんな俺のことを見破り、黒崎が苦笑した。沢山いる息子たちの中では、やっぱり下の方が可愛いだろうと。
「親父からすると、俺のことには構いたくないそうだ。二葉からは煙たがれたくない。行きついたのが末っ子が可愛いという話だ。付き合ってやってくれ」
「うん。5月まであっという間だもんねえ。神仙教授が話していたんだけど、仕事を辞めた後、急にやることが無くなって、落ち込む人が多いそうだよ。特に男性は、趣味を楽しむのが下手な人がいるからって……」
「丸ごと当てはまりそうだ。アンが準備運動に付き合ってくれて良かった。ユリウスもいる。お前のおかげだ」
普段の俺なら照れるか声を上げるはずだが、そう出来なかった。きっと黒崎の思惑が動いているからだ。何だかんだいって、テレビ収録の時は全てに同席している。素直に付き添いたいと言えばいいのにと思いながら、お漬物をパリパリと音を立てて食べた。
今朝の我が家は普段より慌ただしい。午前中からテレビ収録があり、黒崎製菓主催のイベントにも参加するからだ。水族館での収録がメインで、イベントは短時間のみの撮影だ。
久しぶりに会う人が多いからと、あれこれ用意するものが増えた。朝ごはんを食べている黒崎の肩越しには、みんなに渡す沢山の紙袋が見えている。現場に向かうだけの状態になり安心したのに、今度は収録のことで緊張してきた。そういうわけで食欲が落ちている。
テーブルには洋食系のメニューが並んでいる。黒崎は普段と変わりなくガッツリ食べて、俺は小さめの器に入った、スープご飯を食べている。ささ身とネギを多めに入れてあるのに、黒崎からツッコミが入った。
「もっと食べておけ。それだけじゃ持たない」
「緊張して入らないんだよ。向こうでも食べるし。一発目からハンバーガーを食べるんだよ?大食い悠人と、羽音さんとのコラボ」
水族館内にある、カフェでの撮影も控えている。だから大丈夫だよと付け加えた後、驚いて言葉につまった。今回の撮影のタイムスケジュールを、黒崎が全て暗記していたからだ。現場到着時刻、水族館周辺、館内、カフェでのランチタイム。衣装提供のプラセルからは、担当者が張り付くことまで。
細かすぎて、自分でも覚えていないのに。お馴染みのテレビ局だから、心配することもないだろう。イベント会場からも近い。
「今日はイベントだけ付き添うんだよね?責任者として現場に張り付くんじゃなかったの?」
「今回からは橋本と枝川が担当する。俺はテレビ局の接待役だ」
「心配症だね、みんないるのに……。お義父さんもいるのに。……え?水族館でも張り付くのかよ?」
「そのとおりだ。途中からだが、俺も水族館の収録から見学する。……早く食事を済ませろ、間に合わないぞ」
何でもない事のように口にされたが、俺としては、恥ずかしさと戸惑いで言葉を無くした。父兄参観の状況になることが確定したからだ。
お義父さんが、今日の全ての収録を見学する。煙たがっていないが、あれこれと構われる恥ずかしさがある。しかし、心の底から楽しんでいるのが分かるから、来ないでくれとは言いたくない。
黒崎製菓を辞めた後、楽しみになるものが欲しいそうだ。最後に遊んだのは大学時代だし、その遊び方すら忘れてしまったと話していた。ウォーミングアップしたいとも言っていたから、できるだけ協力したい。
そんな俺のことを見破り、黒崎が苦笑した。沢山いる息子たちの中では、やっぱり下の方が可愛いだろうと。
「親父からすると、俺のことには構いたくないそうだ。二葉からは煙たがれたくない。行きついたのが末っ子が可愛いという話だ。付き合ってやってくれ」
「うん。5月まであっという間だもんねえ。神仙教授が話していたんだけど、仕事を辞めた後、急にやることが無くなって、落ち込む人が多いそうだよ。特に男性は、趣味を楽しむのが下手な人がいるからって……」
「丸ごと当てはまりそうだ。アンが準備運動に付き合ってくれて良かった。ユリウスもいる。お前のおかげだ」
普段の俺なら照れるか声を上げるはずだが、そう出来なかった。きっと黒崎の思惑が動いているからだ。何だかんだいって、テレビ収録の時は全てに同席している。素直に付き添いたいと言えばいいのにと思いながら、お漬物をパリパリと音を立てて食べた。
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