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これからする話の話題は楽しいものではないのだろう。例えば晩ご飯を食べて落ち着いた後、リビングで向かい合って話をするつもりがあったかも知れない。しかし、今話したいのだろう。黒崎があえて何も言わないのが分かるから、こっちから話を振ろうと思った。
「黒崎さん。喉を潤したよ」
「ああ。もっと着ておけ。ほら……」
「あんたの方が病人だろ。ありがとう。話したいことがあるんだろ?聞きたいよ」
棚からもう一枚のタオルケットを取って、肩から羽織らされた。包まった方が安心できるからだ。よっぽどの事情があり、その答えや結果まで出ている気がする。なるべく寄り添うよりに肩に触れて頷いた。
「……まずは、二葉のことだ。本人から話をするまで待たないことにした。男が怖いのは昔からだ。小さい頃から付け回されて、公園で声を掛けられることが多かった。……家族が事故に遭ったから連れて行ってやる。弟が怪我をしたから見に来てくれ。お姉ちゃんを呼んでいる。そういう類の話だ。親から言い聞かされているから、何も起きていない。声を掛けられて、怖い思いはしている。……ママがウォーキングスクールの他にモデルスクールを開いたのは、二葉が10歳の時だった。企業からの援助を受けて、タイアップ的なものもある。……本人の営業努力の結果だ。モデルの現役時代のツテも大きい。……ただし、関係者の中には、二葉に興味を持つ男がいた。モデルをやらないか?テレビに出ないか?と。……ほとんどが二葉に近づく口実だ。想像できるか?」
「うん。大人びていたからだよね。高校生ぐらいに見えたんだろ?」
「……ああ。全てが裏目に出た。ママの方も取引先から、お嬢さんも一緒に食事をしないかと誘われたら、断る余地がない。可愛がってくれる仕事関係者だからな。……その取引先に街で声を掛けかれたり、近くのカフェでお茶を飲もうと誘われたりしたそうだ。ふいに体を触られても我慢した。偶然とは思えない回数で、ばったり会った時もあったらしい」
「ママに話せなかったのかな?信じてもらえなかったとか……」
黒崎が頷いたから、当てはまっていること分かった。タオルケット越しに抱き寄せられて、そっと目を閉じた。失望する予感と覚悟をするために。
「誤解があるにせよ、その年齢の女の子の話を聞いてやらない状況があったのは事実だ。学校の前で待たれて、家まで送ると声を掛けられた時があった。中学3年生の4月だ。それを断った後、仕事関係者から話が伝わって、ママから叱られたそうだ。どうして断ったのか、失礼だろうと」
「その話、ママには聞いたの?」
「ああ。会って話を聞いてある。最初は会うのを拒まれた。朝陽のバイトの件もあると言ったら、約束が取り付けられた。……拒んできた理由か?その時の話を聞きたいと連絡したからだ」
「……ママだって、なおさら話がしたいよね?誤解があるとかだったら。うん、俺は平気だよ。聞かせて欲しい」
「ママは当時のことを覚えていた。俺には言い訳しなかった。二葉から打ち明けられた時に、こう言ったそうだ。……”やっとスクールが軌道に乗ったのに。今の生活がうまくいっているのに。険悪なムードにしないで”と、当時14歳の子に話したそうだ。……おまけに、あなたが魅力的だからだとまで言ったそうだ。母親に庇ってもらえなかったことになる」
「それはひどいよ」
「心の余裕が無かったのかも知れない。黒崎家に押しつぶされて、好きな相手と出て行った。やっと安定した生活を手に入れて、教室まで開けるようになった」
黒崎の目を見つめているのに、涙以外の理由で焦点が合わなくなった。しかし、それは一瞬のことで済み、悔しい感情が沸き上がった。タオルケットの端を握りしめて、これは現実だと、自分に言い聞かせた。
「黒崎さん。喉を潤したよ」
「ああ。もっと着ておけ。ほら……」
「あんたの方が病人だろ。ありがとう。話したいことがあるんだろ?聞きたいよ」
棚からもう一枚のタオルケットを取って、肩から羽織らされた。包まった方が安心できるからだ。よっぽどの事情があり、その答えや結果まで出ている気がする。なるべく寄り添うよりに肩に触れて頷いた。
「……まずは、二葉のことだ。本人から話をするまで待たないことにした。男が怖いのは昔からだ。小さい頃から付け回されて、公園で声を掛けられることが多かった。……家族が事故に遭ったから連れて行ってやる。弟が怪我をしたから見に来てくれ。お姉ちゃんを呼んでいる。そういう類の話だ。親から言い聞かされているから、何も起きていない。声を掛けられて、怖い思いはしている。……ママがウォーキングスクールの他にモデルスクールを開いたのは、二葉が10歳の時だった。企業からの援助を受けて、タイアップ的なものもある。……本人の営業努力の結果だ。モデルの現役時代のツテも大きい。……ただし、関係者の中には、二葉に興味を持つ男がいた。モデルをやらないか?テレビに出ないか?と。……ほとんどが二葉に近づく口実だ。想像できるか?」
「うん。大人びていたからだよね。高校生ぐらいに見えたんだろ?」
「……ああ。全てが裏目に出た。ママの方も取引先から、お嬢さんも一緒に食事をしないかと誘われたら、断る余地がない。可愛がってくれる仕事関係者だからな。……その取引先に街で声を掛けかれたり、近くのカフェでお茶を飲もうと誘われたりしたそうだ。ふいに体を触られても我慢した。偶然とは思えない回数で、ばったり会った時もあったらしい」
「ママに話せなかったのかな?信じてもらえなかったとか……」
黒崎が頷いたから、当てはまっていること分かった。タオルケット越しに抱き寄せられて、そっと目を閉じた。失望する予感と覚悟をするために。
「誤解があるにせよ、その年齢の女の子の話を聞いてやらない状況があったのは事実だ。学校の前で待たれて、家まで送ると声を掛けられた時があった。中学3年生の4月だ。それを断った後、仕事関係者から話が伝わって、ママから叱られたそうだ。どうして断ったのか、失礼だろうと」
「その話、ママには聞いたの?」
「ああ。会って話を聞いてある。最初は会うのを拒まれた。朝陽のバイトの件もあると言ったら、約束が取り付けられた。……拒んできた理由か?その時の話を聞きたいと連絡したからだ」
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